「名言との対話」 9月14日。杉田信夫「歴史を動かしてきた優れた個性を生き生きとよみがえらせる」
杉田信夫( 1921年9月8日〜2010年9月14日)は、出版人。ミネルヴァ書房の創業者。
ミネルヴァ書房の創業は1948年、設立1952年、資本金1800万円。創業者は杉田信夫(雑誌『宝石』の岩谷書店の創業者である岩谷満の親戚で、元・岩谷書店社員)。人文社会科学の出版社。人文・社会科学の学術専門書、教科書、一般書の出版を主要業務としている。
社名は、ヘーゲルの『法哲学』の序文にある「せまりくる黄昏れをまって、はじめて飛び立つミネルヴァのふくろう」という言葉からとった。
ミネルヴァ(ラテン語: Minerva)は、詩・医学・知恵・商業・製織・工芸・魔術を司るローマ神話の知恵の女神。フクロウはその使者である。知恵を司る女神としての側面から、ミネルウァは教育機関などで紋章に取り入れられたりしている。カリフォルニア大学バークレー校 - 中央図書館の正面入り口に、銅製の胸像が飾られている。米陸軍士官学校 の図書館に像が飾られている。カリフォルニア州 の州章にミネルウァが描かれている。
古い知恵の黄昏の中から、新しい知恵の到来を告げつつ、知恵の女神の使者が飛び立ってゆく。そのようにして、人類は歴史の中を前へ前へと進んでゆく、という解釈もあるが、実はそうではないらしい。哲学は現実の成熟のあとに遅れてやってくるものであり、現実が完成されてのちに、はじめて知の王国、哲学の王国が建設されるということをいおうとしているという。杉田信夫をも前者と思っていたが、後で実は後者であったとわかったという。このあたりは『わたしの旅路、杉田信夫(ミネルヴァ書店創業者の回想)』で確かめたい。
さて、この出版社では、創業55周年特別企画である、2003年に刊行が始まった日本史上の人物の評伝叢書である『ミネルヴァ日本評伝選』が知られている。刊行のことばは「歴史を動かすのは人間であり、… 人間の動きを通じて、世の移り変わりを考える」ことを主眼に「歴史を動かしてきた優れた個性を生き生きとよみがえらせる」ことを願って「ミネルヴァ日本評伝選」を企画したと述べている。古代から近現代に至るまでの幅広い分野の日本史上の人物を採り上げ、2010年9月現在の最新作の212冊目は「正岡子規」である。
私もこのシリーズは何冊か読んでいるが、こういう志の高いシリーズは、杉田信夫の創業の精神から出てくるものであろう。それが連綿と生き続けているのを感じる。出版という事業は確かに知恵の女神ミネルヴァの使者であるフクロウの役割を果たしている。ミネルヴァ書房という命名に込められた杉田信夫の意図がよくわかった。
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