インドネシアZ世代のレトロ・ポップス 〜 アルディート・プラモノ
(3 min read)
Ardhito Pramono / a letter to my 17 years old
三年前の記事ですけどMúsica Terraでこうしたレトロ・ジャズ・ポップスを知るのはめずらしいですね。
五曲たった16分ほどのEPで、しかも2019年の作品ですけども、インドネシアはジャカルタのシンガー・ソングライター、アルディート・プラモノの『a letter to my 17 years old』(2019)は今年知ったぼく好みの音楽。1995年生まれですから完璧新世代です。
これがすばらしくレトロっていうか、1930年代的スウィング・ジャズのマナーでやったのが二曲あります。ジャカルタではそういった音楽が戦後もしばらく流行していたし、国際的大都市ならではの洗練もあって、2020年代の若手新世代ミュージシャンまでその流れが来ているのかもしれませんね。
しかもインディ・リリースとかじゃなくて、最大手のひとつソニーから出ているんですもん。アルディートは14歳から音楽活動を開始し、その後オーストラリアで学びながらYouTubeで自作曲を発表し、2017年にソニーと契約しているみたいで、『a letter to my 17 years old』はそのファースト・アルバムです。
1曲目からいきなり2/4拍子のスウィング・ジャズ全開。なんなんですかね、この30年代マナーは。ホーンズやギターの使いかた、さらにコージー・コール(おぼえてる?)みたいなスネア・ドラムのブラシ・プレイなど、どこからどう聴いてもタイム・スリップしたような感覚におそわれます。
もう一個は4曲目。やはり2/4拍子で、これなんかスウィングを飛び越えてディキシーランド・ジャズのスタイルに近づいているもんなあ。アルディートのちょっとしゃべっているみたいなヴォーカルも曲想によく似合っていますよね。なんかもうひとり別の男声が聴こえるような。
これら以外だって、たとえば2曲目は60年代ブラジリアン・ポップスふう、をアメリカ合衆国人がやっているみたいなフィーリングで、懐かしさハジケます。3曲目はおだやかなピアノを中心に据えたやはり50年代っぽいジャジー・ポップス。5曲目はアクースティック・ギター弾き語りのいはゆるシンガー・ソングライター然としていて。
どれもこれも、すでに死に絶えたということになっている過去の(日本でいえば昭和な)音楽スタイルばかりで、新世代はたぶんむかしを懐かしむというより21世紀になってはじめて出会ったような新鮮さをこの手のポップスに感じて取り組んでいるんでしょうね。ぼくらの世代には懐古的と聴こえるけれど、いまのZ世代にはコンテンポラリーなリアリティがあるのかも。
(written 2022.7.29)