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1970年代ポップスの香り 〜 ルーマー

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Rumer / Boys Don't Cry

2020年に知って、もうすっかりトリコの歌手ルーマー(イギリス/アメリカ)。近作二つのことは去年書きましたが、その前のものもホントどれもこれも好きで、いい歌手ですよねえ。おだやかで美しい声。まるで往時のカレン・カーペンターを思い出します。

そのルーマーの二作目にあたる2012年作『ボーイズ・ドント・クライ』もほんとうに好きなんですが、これは1970年代の、しかも男性ソングライターの書いた曲ばかりをとりあげたアルバムです。これはまだイギリス在住時代に製作されたものですね。

1曲目のジミー・ウェブ・ナンバーからしてすでにそうとういいですが、その後もアクースティック楽器を中心とするナチュラルでオーガニックな音像に乗って、ルーマーがしっとりとつづります。その歌には、これらの曲がルーマーの自作なんじゃないかと錯覚させる説得力があるんですよね。

つまり「1970年代女性シンガー・ソングライター」というジャンルみたいなものがもしあるとするならば、あたかもルーマーもその一人であるかのような、そんな幻覚を抱かせるにじゅうぶんな声と歌いかただなあって思うんです。そう、ぼくがルーマーに強く惹かれるのはそれも一因かもって気がします。かつての(イギリス人だけど)アメリカン・ミュージックのあの独特の香りを放つのがうまいなあって。

アルバムでぼくが特に好きなのは、やっぱりちょっぴりブラック・ミュージックっぽい感じの曲。だから5曲目「ソウルズヴィル」(アイザック・ヘイズ)とか7「サラ・スマイル」(ホール&オーツ)とかですね。ことに「サラ・スマイル」はいいですね。ちょっと哀愁を帯びたこの曲の持ち味をルーマーはフルに表現できています。なおかつ、ちょっぴりソウルフル。いやあ、たまりません。

去年記事にした2016年のバート・バカラック集(宝石だった)にしろ、最新作2020年の『ナッシュヴィル・ティアーズ』にしろ、ルーマーはああいった1970年代のポップ・ソングを、時代の空気感を完璧に再現しながら、なおかつ21世紀的なニュー・オーガニック・ポップの色彩感も表現しつつ、なめらかでおだやかにそっとやさしく歌いこなす才に長けた、たぐいまれな歌手だなとの感を強くしますね。

(written 2020.12.14)

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