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シモン・ムリエ最新作『Inception』がほぼ名作

(3 min read)

Simon Moullier Trio / Inception

フランス出身在USAのジャズ・ヴァイブラフォン&バラフォン奏者、シモン・ムリエ最新作『Inception』(2023)がめちゃめちゃいい。ほとんど名作といっていいできばえです。バラフォンも弾いているのはグッドですが、さらに本作は基本カヴァー集なんですよね。

ラストの「RC」がシモンの自作なのを除けばすべてカヴァーで、なぜかの「デザフィナード」なんかもあったりしますが、それ以外はジャズ・ソング、それもモダン・ジャズ系のもの。ホレス・シルヴァー、マッコイ・タイナー、チャールズ・ミンガス、マイルズ・デイヴィス、ウェイン・ショーター、ビル・エヴァンズ。

ビリー・ストレイホーンの「ラッシュ・ライフ」なんかはみんながやっている有名曲ですが、知名度の低い曲を中心に選んでいるように思えます。マイルズのブルーズ「フランシング」とか、カヴァーされているの初めてみましたよ。

その「フランシング」は先行リリースされていて前から聴けたんですが、テンポを上げ速めの調子にアレンジ。と同時にいはゆるブルーズくささを完璧に抹消し、情緒感のない現代ジャズに仕立てあげているのが特徴です。

そういえばどのカヴァー・ソングも古いジャズ・オリジナルをとりあげてコンテンポラリーにやってみせるという意図があったんじゃないかと思える内容で、以前もいいましたがシモンはバップ以来の伝統を尊重しつつそれを現代ジャズへと変換するというタイプの音楽家であろうと思います。

個人的に本作でことさら気に入っているのは激速テンポで演奏されている2「Inception」、9「RC」の二曲。疾走感が実にすばらしく、まるで陸上競技の100m走を見ているかのような極上のスリルと快感です。

どちらでも、あるいはほかの曲でもそうですが、シモンはフレーズをやや大きな声でうなりながら弾いていて、それがなくたって完璧なる肉体派とわかるマレットさばき。聴いていて気持ちいいったらありゃしません。

ここのところ毎日これしか聴いていないといってもいいくらい惚れちゃいました。年末のベスト10入り確実。

(written 2023.10.27)

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