涼風のようなグスタヴォ・ボンボナートの洗練にノックアウトされちゃった
(3 min read)
Gustavo Bombonato / Um Respiro
bunboni さんに教えてもらいました。
ブラジルのピアニスト&コンポーザー、グスタヴォ・ボンボナートの2018年作『Um Respiro』がさわやかな涼風のようで、本当に気持ちいいです。1曲目「Finda à Dor」にマジックが働いているとしか思えないんですけど、グスタヴォのピアノ音四つでのイントロだけで「あぁ、これは好きだ、とてもいい」と感心してしびれちゃいました。タチアーナ・パーラが奇妙に上下するメロディ・ラインを歌いはじめたらもう降参ですね。こんなに心地のいいジャジー MPB ソング、いままでありましたっけ。
そんな1曲目「Finda à Dor」だけでアルバムの印象がいいほうに決まってしまうなと思うほどすばらしいと思うんですけど、3曲目「Sapateiro Benevolente」のスキャットなんかも粋で気持ちいし、ボサ・ノーヴァ・リズムがいいし、グスタヴォのエレピ・ヴォイシングといい、佳演ですね。5「Salutar」も清涼感たっぷり。6曲目「Samba Contenção」のリズムも最高です。
伴奏は基本アクースティックなピアノ・トリオかな、曲によってグスタヴォはエレピを弾いたり、またちょっぴり木管が入ったり、ハーモニカが参加している曲もあったりします。ヴォーカル・アルバムなんですが、歌手はタチアーナ・パーラ(1)、マヌ・カヴァラーロ(2、5)、フィロー・マシャード(3、7)、アドリアーナ・カヴァルカンチ(4、6)の四人が一曲ごとに入れ替わっています。
それらヴォーカリストはいずれもジャズ資質の歌手たちで、グスタヴォの書く洗練された抽象的に上下するジャジー ・ポップをみごとに歌いこなしています。そのメロディ・ラインそのものがさわやかでとてもチャーミングだなと思うんです。だからコンポーザーとしてのグスタヴォの才能を感じますが、歌手たちもストレートにすっとつづっているのが好印象。
バンドのサウンドもまるで湿度の低い過ごしやすい春風に吹かれているかのようなジャジーさで、ヴォーカリストの歌うメロディ・ラインの聴きやすさと歌の印象のよさもあいまって、こんなにも気持ちい音楽ってなかなかないよねえと、なんど聴いてもトリコになっちゃいます。しかもあと口がとてもさっぱりしていていいんですね。洗練の極みのような音楽です。涼感、冷感があって、いまの真夏に聴くのにもピッタリ。
なお、ハーモニカのガブリエル・グロッシは6、7と二曲で参加しているように思います。
(written 2020.6.15)