雨の日曜の朝に 〜 ファビアーノ・ド・ナシメント
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Fabiano do Nascimento / Lendas
ロス・アンジェルス在住のブラジル人ギターリスト、ファビアーノ・ド・ナシメントの最新作『Lendas』(2023)は一月に出ていたもの。ジャケットもきれいだし、すぐになんどか聴いたんですが、そのままほうったらかしで。
ところがこないだ二月中旬の雨で湿度の高い日曜日の朝に気が向いて聴きなおしてみたら、その美しさがとっても身に沁みて感動しちゃいました。空気みたいなふわっとしたおだやかで静かな音楽なので、一聴でピンとくるものではなかっただけかも、ぼくには。
ジャズでもクラシックでもショーロでもないブラジリアン・インストルメンタル・ミュージックで、でもちょっとジャズ寄りかな、ギターがどうこうっていうよりコンポジションがきわだってすばらしいと思います。八曲すべてファビアーノの自作。
ギター・トリオを軸とし、くわえて色彩を添えるヴィトール・サントス・アレンジのフル・オーケストラ・サウンドがあまりにもたおやかでやわらかい。ファビアーノよりむしろそっちのほうが本作の主役にほとんど聴こえ、ストリングスと木管の美しさに息を呑みます。アルトゥール・ヴェロカイの弦楽四重奏も5曲目後半で参加。
すみずみまで徹底的に練り込まれたウェル・アレンジド・ミュージックであることもぼくの嗜好にピッタリ。ひょっとしてファビアーノの弾くナイロン弦ギターのラインだってインプロヴィゼイションではないかも。
生き生きとした、っていうかナマナマしい、なまめかしさすらたたえていながらも、みずみずしいさわやかさがあって、熱帯を思わせると同時にかなりひんやりしたクールネスをも感じさせる音楽。ふくよかでありながら、同時に筋肉質な痩身の美を放っています。
最初はピンときませんでしたが、一度感動体験があるとその後はいつなんど聴いても、あぁなんて美しいんだと惚れ惚れとため息をもらしてしまう、ヤミツキになって、くりかえし再生ボタンを押すのをやめられないっていう、そんな麻薬のような魅惑も持つ音楽、それがこれです。
(written 2023.2.22)