音色メイクが好きなロック・ギターリスト二名 〜 デレク・トラックス、フランク・ザッパ
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八月だったか(九月だっけ?)にテデスキ・トラックス・バンドの最新アルバム『アイ・アム・ザ・ムーン』四部作が完結しました。話題になっていませんよね。ともあれぶらぶら流していて気がついたことがあります。それはデレク・トラックスのギター音色メイクがぼくは好きなんだってこと。
デレクのエレキ・ギター・サウンドが大好きだっていうのがこのバンドを聴く最大の理由かもしれないくらい。ギター、エフェクター、アンプなどなにを使い、つまみをどの位置でどう調整しているかっていうたぐいの話はぼくにわかりません。ちょっと聴いた感じピッキング(デレクは指弾き)もこの音色に影響していそう。
音色をことばでしっかり形容するのってむずかしいですね。テデスキ・トラックス・バンドをとにかくなにか一つ聴いてみてほしいです。デレクの弾き出す丸くてファットでまろやかに装飾されたギター・サウンドは、ぼくのレトロ趣味にこれ以上なくピッタリ。
アクースティック・ピアノほかと違い、エレキ・ギターはメイク次第でどんなふうにも音色を変えられるので、ギターリストそれぞれ個性があって、ファンにより好みも大きく分かれるだろうと思うんですよね。デレクのばあいはバンドの音楽性がクラシカルなのにあわせ、ギターの音色も同傾向にアジャストしているのがよくわかります。
エレキ・ギターこそがイコン楽器である(ほかのどんな音楽よりも)ロック・ミュージックの歴史で、こうした個人的嗜好にドンピシャっていう音色を持つギターリストが過去にもう一名いて、それはフランク・ザッパ。やはりギター・ヴァーチュオーゾでした。
ザッパのばあいは曲想の変化にあわせギターの音色も自在にチェンジしていたという印象があります。ときにノー・メイクなストレート・サウンドに近いこともあれば、たまにキーボード・シンセサイザーだろうかと聴まがうんじゃないかとすら感じるときもあって、そのへんの変幻自在なカメレオンもザッパの巨匠たるゆえん。
つねにバンドで演奏するクラシック・ロック志向を大切にしているデレクと違い、ザッパにはギター・マスターという自認もあったでしょうしファンのリクエストゆえだったのか、もっぱら自身のギターばかりフィーチャーしたアルバムといったものも複数リリースしていました。
ロック界には名ギターリストが多いのに、自身の過去作からギター・ソロ・パートだけ抜き出して並べて一つのアルバムにしてしまうなんてことを堂々とやっていたのは、ぼくの知るかぎりザッパだけ。やっぱりちょっと変わっていたのかもしれませんが、個人的にはそんな変態ぶりも愛好対象です。
(written 2022.10.4)
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