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ポーチュガルの匂い

伊坂幸太郎の「オーデュボンの祈り」のようなタイトルになったな。

小学校、中学校と近所にある床屋さんにずっと通っていた。
そこは同い年の母親が営んでいる床屋さんで、そこに9年間通い続けた。僕は良い顧客だった。
髪を切り終わると、帰る時にいつもガムを貰えた。オレンジとグレープのガムをいつも選んで、店を出ると同時に食べ始め、髪を切ると爽やかな気分になるなと思いながらすぐに家に帰る。
これが毎月のルーティンだった。

そしてふと、子供の頃の匂いを思い出した。
ずっとその食べているガムの匂いだと思っていたものは、どうやらヘアーリキッドの匂いだったと30年以上を超えて知った。

先日、奥日光に一人旅をしていた時に、たまたま大浴場にあったヘアーリキッドを試してみたらなんだか髪のまとまりがよく、別に固まるというものでもなく、すごくセットがしやすかった。
という話を今行っている床屋さんの主人に話したら、もしかしたらポーチュガルのヘアーリキッドではないですか?と言われて、試しに Amazon で買ってみた。
結果、その奥日光の時とは違う匂いだったのだが、この匂いを知っているとなった。
あの小学生の時の床屋さんから帰る時の匂いだ。この匂いがすごく好きだったんだなと思った。
ずっとオレンジのガムの匂いだと思っていたが、僕の髪につけてくれていたヘアーリキッド「ポーチュガルの匂い」だった。

人間は匂いに関しての記憶を鮮明に覚えていると思う。あの時の情景が一気に押し寄せてきて、癒されてしまった。
たかだか一つの匂いだが、それを随分と時が経った時に知り、そこからのフラッシュバックは、それはそれはすごかった。

僕はもともと匂いというものが好きで。家でもお香を毎日焚く。香水もつけるし、部屋に使うスプレーも使うし、キャンドルも点ける。それぐらいに匂いというものを大切にしてるんだと思う。
いい匂いが漂っていると、それだけで幸せというわけだ。

そんな僕を形成したのは、もしかしたらあの時の床屋さんのオレンジのガムだと思っていたあの匂いが原点なのではないかと思ったので、それを忘れないように今メモしておいた。

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