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コロナ禍でのアメリカ生活㉘「無駄な時こそが最も必要な時間」

私の毎日の夢物語

私は毎晩夢を見て、毎朝どんな夢を見たかを殆ど記憶している。夢の中の色や匂いも克明に覚えており、また夜中に夢の途中で目が覚めてもう一度続きが見たくて戻るという離れ業も、何回か成功している。

夫は毎朝豆を挽いてコーヒーを淹れてくれるが、私はそのコーヒーを飲みながら、夫にそんな夢の話をする。勿論、夫と全く関係のない夢のことは話さないが、クライアントとのオンラインミーティングの結果とか、セミナーで作成したPPTをなくし落語家のように身振り手振りのみでセミナーを終えたとか、家の前が何故か海でうちのセールボートのKaiyo(海洋)が接岸してあり、大嵐となってボートに乗って逃げだしたとか、色んな話を毎日する。

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彼は、25年間も毎朝私の夢物語に付き合っているので、通常はふんふんと聞いているだけ。ただ、仕事関連の話が多いせいか「君は昼も夜も24時間働きづめで休みなし。まあ君はそれが好きだからいいけど、君の脳はいつ休暇を取っているの?」と言われた時に、流石に「はっ」とした。

不眠不休の脳にとって睡眠時は己を最適化するための清掃時間

今日読んだ記事のタイトルは、「Why Neuroscientists Say, ‘Boredom Is Good For Your Brain’s Health.’(神経科学者が「退屈は脳の健康に良い」と言う理由)」だった。私は、思わず「おっと、私が最も苦手なことだ(私は退屈な時間を持つことがまずできない)」と思ったが、読んでみた。

脳は24時間365日休暇や休憩を取ることなし「常にOn状態の器官」として、我々が生きるために不眠不休で働いている。脳科学者のJill Bolte Taylorは、脳と睡眠の関係を以下のように説明している

「私たちが持つ全ての能力において、脳細胞は情報をやり取りしている。歩いている時、脳細胞は筋肉に動くよう伝えている。脳細胞は常に働いている。脳細胞は食事をして老廃物を出す。そのため、細胞の間の老廃物をきれいにする最適な時間が睡眠中であり、そうすることで細胞がきちんと機能できるようになる。私はこれを、ごみ収集業者がストライキを行うことに例えている。そうなれば、道がどれほど混雑するかを私たちは知っている。これこそ、脳細胞に起きていることとまさに同じ。体が起きる準備ができる前にアラームで目を覚ませば、脳が求める睡眠サイクルの一部をカットしたことになる。睡眠は脳を活性化させるものである」

Iowa State University の医学誌『Sleep』による調査では、睡眠を制限することで怒りが増幅するという。不眠不休の脳にとって、睡眠時は己を最適化するための清掃時間で、その重要性を指摘する。

何もしないでただ時間を過ごすこと

多くの人達は「何もしないでボーっとしていること」に罪悪感を感じる。これは、社会全体が「仕事(労働)の生産性を重視する」ように作られた現在ならではの、悲しき宿命である。この何もしないで時間を過ごすことを考える上で、面白いのは言葉の語源である。

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フランス語の「Vacances(ヴァカンス)」の原義は「空っぽ」という意味で、英語でいうと「Vacant」となる。これは元々「有閑階級(働く必要のない金持ち)」がすることもなくボーッとしていることの形容だった。それに反して「Travail(トラヴァーユ)」は「仕事」を意味し、語源は「足かせ(ローマ人がガリア征服の際に捕虜につけた内側にトゲがある拷問具を兼ねた足環)」である。

「仕事(労働)の生産性」を考える上で、この語源は、社会が内包する本質的な階級制度を象徴していて、非常に興味深い。私自身は、マグロのように「泳ぐことを止めた瞬間に死んでしまう」性分のために、「何もしないでボーっとしていること」が最も苦手である。自分がどの階級に属するかは、このことからもよく分かる。自分は生涯「有閑階級」には到達できず、1人の労働者で終わると痛感している。

上述の記事によると、「退屈さにより、実は、創造性や業務に取り組むやる気、仕事での生産性が向上する可能性がある」という。

何かをすることをガソリンとすると、何もしないことは生産性のブレーキ。ブレーキがない車はエンジンが燃え尽きてしまうが、キャリアの成功を収める上でエンジンを燃やす必要はない。神経科学者によると、退屈さはこれまで不当に非難されてきた。退屈さにより、実は、創造性や業務に取り組むやる気、仕事での生産性が向上する可能性がある。脳の健康のためには時々自分を退屈させることが重要だ。

無駄な時こそが創造的なアイディアの大切な場

また脳には、私たちが何かをすることから解放された状態でオンになる既定のネットワークモードがあることを、社会神経学者らは発見している。退屈さは創造的なアイデアを育てることができ、低下しているエネルギーや仕事におけるあなたの魅力を回復させるとともに、まだ初期段階にある仕事のアイデアを発展させるためのインキュベーション(ふ化)期間を与えてくれる。

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脳は、酷使し過ぎない時に、本当に必要な休憩を得ることができるらしい。何かをしなければならない時には、脳は休めないが、何も考えずにただ海辺を歩いたり、草花を愛でたり、遠くの夕陽が沈むのを眺めるといった、To do listに入っていない不必要な時に休みが取れる。

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コロナ禍で多く人達の気持ちがささくれ立ち、大なり小なり様々な不安が常にどこかに入り込んで、みんな「こうしなければならない状態」なっている。これでは、脳は最適化のための休暇が取れない。

足かせを外してぼーっと時間が過ぎるのを眺めようよ

「足かせ(ローマ人がガリア征服の際に捕虜につけた内側にトゲがある拷問具を兼ねた足環)」を語源とする「Travail(トラヴァーユ=仕事)」から、自分を解放するのは、並大抵のことではない。但し、人間としてよりはっぴいに生きるためには、大切な脳を休ませる必要がある。

私自身に関しては毎日見る自分の夢をエンジョイしており、睡眠不足だと思うことは殆どない。夕食後にカウチで「Pre-sleep」を1-2時間取るのが習慣化しており、ベッドでの眠りは浅いのと深いのが交互に来ているようで、夜明け前に自然と目が覚める。このスタイルは一定しており、私は、自分の脳が睡眠時に夢を見つつも、しっかりお掃除をして、最適化の休暇をとっていると信じている。

ぼーっと時間が過ぎるのを眺めようよ

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Hisami Ohshiba
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