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遅い夏のはじまりと、リアルな夏のおわり

陸前高田の夏は、お盆を過ぎると暑さがおさまってだんだん涼しくなり、朝はとても澄んだ空気になる。それがとてもいい。
今日の朝はなんだか秋のような涼しさで、そろそろ夏が終わるんだなと実感した。

季節的にはそろそろ夏が終わりそうだけど、今日から*「温湯駆除」(このへんの言葉で*「しうりころし」)と呼ばれる作業が始まった。

私はこれがはじまると、「夏がきた!」って思う。今年の夏遅すぎか。

(こんな感じの作業です)

いつもより、1ヶ月くらい遅いスタート。毎年汗がどうにも止まらない暑さの頃に始まるから、夏の風物詩的だなあと感じていた。そして過酷だなあとも感じる。

1年を通して、私の中で「体がキツイ」と感じる時期が4ヶ月くらいあって(書いてから思ったけど、1年の1/3は体がキツイってやばい)、そのうちの2ヶ月はこの夏の時期。
基本的に海の上でやる作業だからずっと外にいるので、外気温の暑さ+飛んでくるお湯と湯気の暑さ、そして暑さからくる疲労。
暑い中、早朝から夕方までやってると完全に体がやられる。

涼しくなる頃にスタートするのははじめてだけど、今日は動きやすくて、めちゃくちゃよかった。

お湯が飛んできたり、クレーンで牡蠣のロープを吊り上げたときにばらけた牡蠣が頭上から落下してきたりする割と危なげな作業だから、避けるのに割と動きまわることが多いんだけど。
涼しいと全然体力消耗しない。すばらしい。
(牡蠣の殻は固いし刃物並みに切れるので、クレーンで牡蠣が移動するときは離れてないとめちゃくちゃ危ない。)

ものすごい地道で時間のかかる作業だから本当は早いスタートのほうがいいんだけど、体力的にはいまの時期がいいなって感じました。(こんなこと思ってるけど、作業工程を考えると来年は絶対にもっと早くスタートすると思う。)

これから少しだけ朝早い出勤になるし、いかだの台数が多いから結構時間かかるんだけど、少しずつがんばろ〜。


ここから下は、当たり前のように作業内容を書いても、知らない人が読んだって全然意味がわからないと思うので、できる限り説明しようの時間です。


温湯駆除

一言でいうと、牡蠣をお風呂に入れて綺麗にする作業です。

(こんな感じでお風呂に入れます)

流れとしては、おおざっぱに言うと3ステップ

⑴ 船に釜を積んでお湯を沸かす(お湯の温度は約65℃)

⑵ 牡蠣がくっついている垂下ロープをクレーンで吊り上げて10〜15秒程度お湯に浸ける

⑶お湯に浸けた牡蠣をまたいかだに戻して、吊るし直す(海水で牡蠣を冷やす)


これを朝から夕方まで、ひたすら繰り返す。牡蠣の産卵期にあたる夏場に毎年絶対行う作業。
(これをやっている地域は限られているので、一般的な養殖作業じゃなくて、あくまでも陸前高田での作業話です。)

これを行うことで起こる3つの良いこと

①牡蠣の周りに付着したムール貝などの他の生物を取り除き、牡蠣に海の栄養を吸収させやすくする(牡蠣さんが餌を食べやすくなる)

②産卵を促進させて、身入りの時期を早める

③お湯に浸けることで牡蠣にショックを与え、牡蠣の「身」のほうに力を蓄えるようにさせる。
(産卵後は力が抜けて牡蠣の身が透明な状態になるのだけど、適度なショックを与えることで身の危険を感じ、内側に力を溜め込もうとする。)

この作業をやることで、元の白い身に早く戻るように促すことができる。
→ おいしい牡蠣の出来上がり(めちゃくちゃざっくり)

牡蠣は強い生き物だからお湯に入るときに口がしっかり閉じるので、あんまり長くお湯に入らない限りは死なないのです。強い。

ちなみに、この作業ができるのは波の影響をあんまり受けない穏やかな海であることらしいです。
何回も牡蠣のロープを吊ったり下ろしたりを繰り返すから、波が荒い地域では難しい作業なんだよね。

しうり貝

ムール貝のこと。このあたりではムール貝のことを「しうり貝」「すうり貝」「しゅうり貝」と呼ぶ。(んだけど、人によって発音が違うので、私は未だにどれが本当の呼び名なのかわからない。)
温湯駆除は牡蠣についた「しうり」を殺す作業だから「しうりころし」と呼んでいるそう。


みたいな感じです。
暑さに負けない体。大事。



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三浦 尚子 / Hisako Miura / ura
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