朔太郎の与謝蕪村
たまたま聴いていたラジオで、ある先生が萩原朔太郎の『郷愁の詩人 与謝蕪村』を紹介されていました。〈この本から古文に入った〉とも話されていて、がぜん興味を持って、岩波文庫にはいっている同書をget。
君あしたに去りぬ
ゆうべの心千々に何ぞ遥かなる
君を思うて岡の辺に行きつ遊ぶ
岡の辺なんぞかく悲しき
朔太郎が冒頭に指摘する通り、「この詩の作者の名をかくして、明治年代の若い新体詩人の作だと言っても、人は決して怪しまないだろう」。
懐かしき? 岩波古語辞典なぞを開けばさらに興趣尽きず、たとえば「あした」とは、「夜を中心とした時間の区分のユウベ→ヨヒ→ヨナカ→アカツキ→アシタの最後の部分の名」、昼の区分の最初「アサ」と同じ時間を指すが、「ただ『夜が明けて』という気持ちが常についている点でアサと相違する」。
……となると、「君あしたに去りぬ」もいちだんと情感が深くなりますよねぇ。ただ日付が変わるんじゃなく、「夜が明けて朝になると」、あなたは去ってしまうわけだから。濃密であり、浪漫的ですね。
今さらお粗末ですが、良い本に出会ったと喜んでいます。(2006.04.11)