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仏教とがん治療の意外な関係!仏教の教えがもたらす3つの力
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はじめに:仏教とがん治療の意外な関係
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がん治療は、身体的にも精神的にも挑戦の連続です。治療が進むにつれて、予期せぬ困難や不安に直面することも多々あります。そのような時に大切なのは、心の支えを持つことです。仏教の教えは、そのような支えを得るためのヒントを与えてくれます。
前回と重複しますが、たとえば、「無常」の教えを理解することで、状況が永遠に続くわけではないという希望を見出せるかもしれません。また、「慈悲」の教えを取り入れることで、自分自身に優しくすることの大切さを実感できるでしょう。そして、瞑想や深呼吸の実践は、治療や副作用に伴うストレスを軽減し、心を落ち着ける手助けとなります。
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仏教は怖い?!
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しかし、「仏教」は「宗教」で、オ○ムなどに端を発するのか、「宗教」と聞くと、それだけで拒絶反応を示す人がたくさんいます。
そこまでではなくても「宗教」に対して漠然とした抵抗感を感じる方も少なくありません。
「どこかの宗派に入信しなければならないのでは?」
「宗教的な戒律を守る必要があるのでは?」
「お布施と称して、後でたくさんのお金を払わされるのではないか?」
といった疑問や不安を抱くこともあるでしょう。
仏教の特徴のひとつは、その柔軟性にあると思っています。
仏教は、信仰を強制するものでは無いようです。むしろ、私たちの日常生活の中に自然に溶け込むような考え方や実践を提供してくれるものです。例えば、「無常」の教えは、「変化を受け入れる力」を私たちに与えてくれますが、これは特別な信仰がなくても理解し、実践できる考え方です。また、「慈悲」の教えは、自分や他人に優しくすることの大切さを説いており、これも普遍的な価値観と言えるでしょう。
仏教には「善知識」や「仏法」という考え方があります。これは、あなたにとって有益な知識や方法を指します。仏教では、「善知識・仏法」は押し付けられるものではなく、自分自身が必要と感じたときに取り入れるものとされています。どこかの宗派に所属していなくても、あなたが役立つと感じた部分だけを自由に取り入れ、試してみることができるということです。
たとえば、日々の生活の中で深呼吸をする習慣をつける、気持ちが落ち込んだ時に「今、この瞬間」に意識を向けてみるなど、小さな実践から始めてみていただくといいかもしれません。
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仏教の教えがもたらす3つの力
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仏教の教えは、がん治療という大きな挑戦に直面している方にとって、心の支えとなる強力なツールを提供してくれます。特に注目すべきは、「不安を和らげる『無常』の教え」、「自分をいたわる『慈悲の心』」、「心を落ち着ける『瞑想』」の3つの力です。それぞれの教えがどのように力を発揮するのか、具体的に見ていきましょう。
(1) 不安を和らげる「無常」の教え
仏教で語られる「無常」は、すべての物事が変化し続けるという真理を指します。この考え方は、がん治療中の方にとって特に重要です。不安やつらさに押しつぶされそうなとき、「この苦しみも永遠に続くわけではない」と理解することで、心に希望の光を見いだせるのです。
例えば、治療の副作用や痛みがあっても、「無常」の教えを思い出すことで、「いつかこの状態も変わる」と信じることができます。また、がん治療に伴う生活の変化にも、「無常」を受け入れる心構えが役立ちます。変化を恐れるのではなく、「新しい日常もいずれ慣れていくものだ」と考えれば、前向きに歩む力が湧いてくるでしょう。
“無常”に関連してこんな話を聞いたことがあります。
がん治療を受けている夫が、「抗がん剤点滴すると2-3日は怠かったり、食欲落ちたりでつらいけど、その後はピタッと治まって、普段通りの生活に戻るから、今日の副作用もそのうち良くなると思うと耐えられるんだよ。」
すると奥様の方は、冗談交じりに、「そうね。だからこそ、私が作ったご飯がいつもおいしいわけじゃないってことも、明日は美味しいかもしれないから許してね。」とのこと
担当医である僕は「奥さんの料理はいつ美味しいんだと思いますが、多分抗がん剤の影響で味覚がおかしくなり、美味しく感じなくなるのでしょうかね」と補足。
「昨日は辛いなぁって思ったカレーライスが、一日おいて食べると美味しく感じるのも、そのせいですかね?」と患者さん。
「一日おいたカレーが美味しくなるのは、がん患者さんに限ったことではないですよね(笑)」
こういうのも“無常”といっていいのかな?
(2) 自分をいたわる「慈悲の心」
がん治療中は、自分自身を責めてしまうことがあります。「自分がもっと健康に気を使っていれば」「周りに迷惑をかけている」といった思いが、心に重くのしかかることもあるでしょう。しかし、仏教の教えにおいて「慈悲の心」は、他者だけでなく、自分にも向けられるべきものです。
仏教では、「自分を愛し、いたわる」ことを恥じる必要はないとされています。治療中のつらい時間を乗り越えるためには、自分に優しくすることが不可欠です。
たとえば、抗がん剤治療で病院に来たが、体調が今ひとつ。血液検査でも白血球が少しだけ少ない。担当医も「やれそうだけど、無理せず休むのもいいかもね」と曖昧。
そんな時、「今回はまだ副作用が抜けきってないから、きちんと休み回復させるのも治療の一部だ」と自分に言い聞かせることで、心のバランスを取り戻すことができます。
「慈悲の心」は、家族や医療スタッフにも影響を与えます。自分をいたわる姿勢は、周囲にも優しい空気を広げ、より良い人間関係を築くことに繋がります。
(3) 心を落ち着ける「瞑想」
仏教の実践の中で特に効果的な方法の一つが瞑想です。がん治療中のストレスや不安は、時に心の平穏を奪いますが、シンプルな呼吸法や短い瞑想を取り入れることで、心を落ち着けることができます。
例えば、以下のような簡単な瞑想を試してみてください。
静かな場所で座り、目を閉じます。
ゆっくりと鼻から息を吸い、口からゆっくり吐き出します。
呼吸のリズムに集中しながら、心に浮かんでくる思いや感情を観察します。
1回わずか3分でも、定期的に続けることで、治療中のストレスを軽減する効果が期待できます。瞑想には、心拍数を安定させたり、不安を軽減させたりする科学的な効果も報告されています。
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まとめ:3つの力を治療に活かす
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仏教の教えは、「無常」「慈悲」「瞑想」という3つの力を通じて、がん治療中の方々に大きな支えを提供してくれます。これらの教えを日常生活に取り入れることで、心の安定や希望を見いだす助けになると思います。
難しい修行や複雑な準備は必要ありません。
小さな一歩から始めて、自分に合った方法を見つけてみてください。
仏教の教えは、がん治療のつらい旅路を、一歩ずつ安心して歩むための頼もしいパートナーとなるはずです。ぜひ、日々の生活に取り入れてみてください。