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ブラームス ドイツレクイエム アメリカ・オーケストラ漫遊(22), Cincinnati, OH
シンシナティは先月行ったピッツバーグから始まるオハイオ川の下流に位置するオハイオ州の南端にある都市だ。川マニアの私としては是非とも訪問したい都市のひとつだった。
川沿いには各種スポーツの本拠地のスタジアムやイベント会場などが密集するとともに、公園が整備されて市民の憩いの場となっていた。オハイオ川はピッツバーグから数百キロ下流なので相当に大河になっているのかと思ったら意外とピッツバーグで見たときと川幅は変わらないような印象を受けた。ダウンタウンはあまり人がおらずデトロイトと似た空気感という印象だった。
今回のコンサート会場であるシンシナティ音楽堂はダウンタウンから2kmほどの場所にあり、とても格調のある赤レンガの建物だ。歩いて行けるところに有名なビールSamuel Adamsのブリュワリーがあり楽しむことができた。川の水を利用してのビール醸造も盛んなのだろう。
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2024年2月10日 シンシナティ交響楽団
2/10/2024, Sat, 7:30 pm, @ Music Hall, Cincinnati, OH
Cincinnati Symphony Orchestra
Louis Langrée, conductor
Joélle Harvey, soprano
Will Liverman, baritone
May Festival Chorus, Robert Porco, director
Ein Deutsches Requiem ("A German Requiem"), Op. 45 / Johannes BRAHMS
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ドイツレクイエムはこの演奏会に向けていろいろな音源を聴いて勉強したが、他の交響曲などとは趣を異にする特別な曲だ。こんなに美しい曲は聴いたことがない。オーケストラとコーラスが入った70分の名曲。これをつい最近まで知らなかったのが勿体無い。この曲の演奏頻度は日本では高くないのだろうと思うし、これができるコーラスとオーケストラはなかなか探すのは大変だろう。この曲の名演奏に出会うために世界中を飛び回る価値があるとさえ思う。
この曲はレクイエムと言いながらも、教会の葬儀ミサで使われるようなミサ曲の組み合わせではなく、聖書からピックアップされた詩の組み合わせで各楽章が構成されている。死者を送る残された人に向けての聖書の言葉のメッセージがとても良い。曲想は暗いだけではなく聴く人を励ますように感じさせるところも多く、いつ聴いても勇気をもらえる楽曲だと思う。特に第2楽章「人は皆草のごとく その栄華はみな 草の花に似ている。草は枯れ、花は散る。」は悲しみに寄り添ってくれるような旋律が胸を打つし、第6楽章「死は勝利に呑まれてしまった。死よ、お前の勝利はどこにあるのか」、この詩はヘンデルの「メサイア」でもトランペットとともに印象的に奏でられるが、こちらでは力強い合唱で迫ってくる。これらの楽章は特に美しいと思う。
今回は久しぶりにホールに入った瞬間からワクワクするという感覚だった。楽曲解説で話していてたまに音源がかかるのだが、それだけでホールの音響の良さを感じたし、2階下手側最前列は本当にいい席だった。
コーラスはおよそ120人くらい、オーケストラも大編成で圧巻の演奏だった。最初に音楽監督が出てきただけで歓声が上がるなど、とても愛されているし、当然のようにオーケストラは優しい、繊細な音色でとても上手かった。ドイツレクイエムは金管が前面に出てくることは少ないが、コーラスを支えるような役割で、丸い音色がとてもよかった。それでももう少しオーケストラとして聴かせるところがグッと来れば素晴らしいのかなと感じた場面はあった。コーラスの迫力はもちろん十分で、聴かせどころはとても胸に迫ってくるものがあり、とても満足の演奏だった。
個人的に少しマインドセットを間違えたと思うのは、いくらか「メサイア」のときの印象に引きずられていたので、70分はあっという間に終わってしまったこと、歌詞との付き合い方などを思った。幸い今シーズンはまた近くでドイツレクイエムを聴くチャンスがあると思うので、こちら側の反省点はまた次回に取っておきたい。
シンシナティ交響楽団もすごく上手いと感じたので、オーケストラだけでもう一度聴いてみたいと思った。
参考音源
ヘルベルト・ブロムシュテット指揮
サンフランシスコ交響楽団
サンフランシスコ交響楽団合唱団