ひるぜんアクションツーリズム’23体験レポート!「自然環境と生活、文化はつながっている」蒜山の魅力に出会えた2日間。
2023年10月と11月にかけて、「ひるぜんアクションツーリズム’23」が開催されました。
ひるぜんアクションツーリズムとは、真庭市とシェアードワークプレイス「co-ba」が連携し、全国のクリエイターやビジネスパーソンを対象にした「チャレンジする人の活動そのものを応援する」初の取り組みです。
(ひるぜんアクションツーリズムの詳細はこちら)
岡山県真庭市の蒜山(ひるぜん)地方の自然や文化、人と出会い、新しい事業やプロジェクトのタネを生み出すことを目的として実施。合計3回のひるぜんツアーで、22名の参加者とともに、蒜山の魅力を探ってきました。
今回のツアーレポートでは、参加者とともにツアーを体験してきた運営メンバーが、蒜山の魅力ポイントを写真とともにお伝えしていきます!!
”草原”は暮らしの必需品だった。蒜山の草原・自然環境フィールドワーク。
蒜山ならではの景色をつくっている草原。その草原には見えている以上の奥行きがありました。
なぜ蒜山に草原があるのか、どうして草原が必要だったのかーー
家屋の屋根に茅が必要であったこと、田植えや農業に牛の力が必要で、牛のエサとして草原が必要だったこと、蒜山で暮らしていくために草原が密接に関わっていたことを学びます。
その草原を維持するために、1年に1度「山焼き」が行われます。蒜山地域では、800年ほど前から続く活動で、草原に火を入れ焼くことで、森にはならず、草原のある風景が生まれます。
そしてその風景は、「蒜山ならでは」の景観を生み出し、草原にしかいない生き物の住処をつくっていました。今回のツアーでは、実際に草原を歩きながら、草原について学んでいきます。
自然との繋がりを考えさせられる場所「GREENable HIRUZEN」
気候変動や環境問題がますます深刻になり、自然との関係性や繋がりについて考える機会は、以前より増えてきました。ここ「GREENable HIRUZEN」は、一見するとおしゃれなショッピング施設。しかし、そこに並んでいる商品たちには、様々な自然との繋がりと、作り手と売り手の自然に対するこだわりを感じることができる場所です。
GREENable HIRUZENの近くには「風の葉」というパビリオンがそびえたっています。中に入ると、自分も風と一体になったように感じられます。
この建物は、2019年11月東京・晴海に建設された隈研吾氏設計監修のCLT*1建築物ですが、東京での魅力と木材の文化・情報発信の役目を終えこの真庭に帰ってきました。
里帰りしてきた「風の葉」は今では、蒜山を象徴するランドマークになっています。
*1 CLTは「Cross Laminated Timber(クロス・ラミネーテッド・ティンバー)」の略で、ひき板を並べた層を、板の方向が層ごとに直交するように重ねて接着した大判のパネルのことです。
それでは、風の葉を横目に、早速GREENable HIRUZENに入っていきましょう。
ここの商品は全て、「GREENable(グリーナブル)な基準」という独自の基準でセレクトされたものを厳選しています。全てのものに背景があり、そのことを知るとより愛着がわいてきました。隣接するサイクリングセンターにも行ってきました。
蒜山郷土博物館で蒜山の歴史と文化を知る
自然とのちょうどいい距離を昔から紡いできた、蒜山。ここに住んできた人々はどんな暮らしをしてきたのでしょうか?
これまでの蒜山の人たちの歴史と暮らしを知るため、「蒜山郷土博物館」へ行きました。
蒜山は夏は草原、冬は雪に覆われる場所です。そのため、蒜山の人にとって、雪の中での生活は避けて通れません。 昔の人たちは、蒜山にある藁やガマを使って、靴を作っていたようです。しかし、残念なことにこの雪靴の作り方は正確には継承されず、今や作ることのできる人がいないそうです。
また、積雪地域ならではの人気スポーツ「スキー」ですが、蒜山では冬に「歩くことより速く移動できる手段として、スキーが使われていた」ようです。今でも学校の授業という形でその名残があり、毎年冬になると、子ども達の格好の遊び道具だそうです。
蒜山の様々なところを巡っていて、気になった、あるキャラクター、地元の人はその名を「スイトン」と呼んでいました。その謎が、郷土博物館で明らかに!
蒜山の妖怪スイトンは、「スィーとやってきて、トンと止まり、悪人を食べてしまう」らしいのです!そのため、蒜山には悪人はいないのです。
確かに、蒜山では会う人は皆さんいい方々ばかりだったのですが、スイトンが悪い人を食べていたとは…(笑)。
スイトンのオブジェはひるぜんひとときの近くや、蒜山の色々なところにあります。食べられないように皆さんも気をつけてくださいね。
無形民俗文化財である蒜山の盆踊り・大宮踊は、横長灯籠を中心に輪になって踊ります。灯籠の下に紙垂とともに、飾りとして吊り下げる切り抜き絵が「シリゲ」です。細かい切り抜きがされていて、とても綺麗です。
歴史や暮らしを知ることで、よりその地域の自然や、大切にしているものについて深く考えることができました。
こだわりの蜂蜜をつくる蒜山高原328農園で、本当の「蜂蜜」を体感する。
ニホンミツバチの養蜂を行っている蒜山高原328農園の遠藤さんにお話しを伺ってきました。ニホンミツバチ特有の習性、天敵の話、遠藤さんの話からは、ひしひしとニホンミツバチへの想いを感じます。
ニホンミツバチの巣箱も見学させて頂き、いかにして蜂蜜ができあがるのか、その一端を垣間見ることができました。
今回のツアーでは、実際に、328農園でつくってきた蜂蜜の試食体験も行い、採密方法の違いによる味の違いや、年代ごとの味の変化を堪能。今まで何気なく食べていた蜂蜜ですが、体験を通じて、蜂蜜の面白さに出会える機会となりました。
自分の手で編む蒜山がま細工
600年近い歴史を誇る蒜山の伝統工芸、がま細工。
南北朝時代、食糧を運ぶためのかごを作ったのが始まりといわれているそうです。
伝統の技法を受け継ぐのは蒜山蒲細工生産振興会のみなさんです。蒜山がま細工とは「ヒメガマ」という植物と、シナノキの樹皮から取り出した繊維を手でよった紐で編んだものです。一つ一つ時間をかけ丁寧に編まれた「蒜山がま細工」。机に並んだカゴや草履を手に取り、皆さんの口から感嘆の声が上がります。
今回は、蒜山蒲細工生産振興会の方に、「シェアオフィス蒜山ひととき」へお越し頂き、がまをつかった「ほたるかご」をつくるワークショップを開催いただきました。
600年の歴史がある蒜山がま細工。製造工程は想像以上に時間と手間隙がかかります。例えば、がま細工に使用する紐は、シナノキを切って、水に4ヶ月間もつけ、その後、繊維を取り出し紐をつくっていきます。紐の材料をつくるのに、1年近くかけてつくっていくことに驚きを受けました。
茅刈り体験:美しいススキの風景を維持するために
茅葺をつくる資材となる茅。出荷前の茅をまとめる体験と、その茅がどのように自然の中で生育していくのか見学をしてきました。
茅はススキ・ヨシ・チガヤなどイネ科の多年草の総称で、蒜山の草原には美しいススキの風景が広がっています。その美しい風景をつくるためにも知恵と工夫がありました。前の年のススキが残っていると曲がってしまい質が悪くなってしまうため、山焼きをしてリセットするのだそうです。人の手もいれながら、ススキの風景を維持しているんです。
実際に「出荷」する際は、刈り取った茅を束ねて紐でしばるそうで、
茅を束ねる作業も体験してきました。木製の器具を使い、量が均一になるように測って3箇所を紐で結んで倉庫に保管しておきます。この木製の器具も手作りです。
ススキのある風景を守るために、暮らしの一部としてできること。
自分たちの手で山焼きと茅の活用を続けていく大切さを学びました。
何度でも会いたくなるお坊さんがいる寺〜福王寺〜
蒜山の中心地、導かれるように山を切り開いた場所にある「福王寺」。ハスキーかつ渋い声で話をしてくれたのは、住職の小谷さん。
今回は、宗教についての話から、小谷さんの新たな挑戦であるH1法話グランプリについての話、そして修行体験をしてきました。
「あなたは何教ですか?」と言われたとき、日本人の私たちはなんと答えますか?また、宗教はいったいなんのためにあるのでしょうか?
実は私たちは無意識のうちに宗教を信仰・実践しています。例えば、クリスマスや年始にお参りにいくことなど…。かつて日本人は自然のあらゆるものを神に当てはめて崇拝してきました。
小谷さんが説明してくださった、日本人の宗教観について、「古来から宗教に壁はなく、みんなが幸せになるための手段として用いられてきた」という言葉は印象的でした。
皆さんはH1法話グランプリをご存知ですか?
8名の若手僧侶がとっておきの法話を話し、“もう一度、あいたい!僧侶を決める大会です。
H1法話グランプリ web:https://www.houwagrandprix.com/
H1グランプリの説明をする小谷さん。テーマは「発心」についてで、実際に当日発表予定の法話を披露してくださいました。
(そして、なんと、小谷さん、H1法話グランプリ2023で優勝されました!)
法話を聞き終えたら、みんなで写経をしました。
蒜山で活動する「先輩たち」との交流会
1泊2日のアクションツーリズムですが、毎回初日の夜は交流会を開催。交流会では、実際に蒜山で活動する方をゲストにお呼びして、生の声、リアルなお話を聞ける機会となりました。
今回のゲストには、蒜山高原328農園の遠藤さん、福王寺の小谷さん、蒜山耕藝の高谷さんご夫妻、津黒いきものふれあいの里の雪江さん、GREENable HIRUZENの佐藤さんにお越し頂きました。
蒜山の食材を使った料理を堪能しながら、和気藹々とコミュニケーションを楽しみます。
co-ba ebisu(東京・恵比寿)で、「ツアー報告会」を開催します!
以上、蒜山の現地ツアーレポートになります。
いかがでしたでしょうか?
蒜山の雰囲気を感じ取っていただけたら嬉しいです。
自然と文化、蒜山の暮らし、またそこに暮らす魅力的な人たちに出会えたツアーとなり、参加された皆さんそれぞれの「蒜山」の捉え方があったのではないかと思います。
普段いつもの生活をしていたら気がつかないことも、アクションツーリズムを通じて「何かに気付かされた体験」になったのではないかと、参加者の皆さんの感想を聞いていて思いました。
今回の体験や気づきを伝える場として参加者も交えたツアー報告会(2月9日金、19時〜予定)をco-ba ebisuにて開催します。報告会では、今回のアクションツーリズムを通じて、発見したタネと自分の活動を繋げたアクションについて発表する機会となっています。
さらに、これから蒜山に関心を持った方も関わっていけるようなコミュニティもつくっていく予定です。
アクションツーリズムでどんな活動のタネがあり、アクションが生まれようとしているのか、少しでも蒜山に興味をもった方は、ぜひお気軽にご参加ください〜!
「蒜山アクションツーリズム」
<日時>
10月の部:10月30日(月)〜10月31日(火)
土日の部:11月18日(土)〜11月19日(日)
平日の部:11月20日(月)〜11月21日(火)