第26回 中勘助「銀の匙」
第26回目の読書会の課題図書は、中勘助の「銀の匙」でした。
恩師、夏目漱石に絶賛され、その推挙により、東京朝日新聞に連載された自伝的小説。
その後、岩波書店から単行本が出版された。
茶箪笥の抽匣(ひきだし)から見つかった「銀の匙」から主人公の幼かった日々の思い出が語られてゆく。
「懐かしさ」と「やさしさ」に同じような体験をした昔の思い出が私の心に入り込んで来た。
銀の匙は、虚弱な主人公に薬を与えるために使ったものだった。
生まれつき、ひ弱な主人公は神経過敏で頭痛、吹出物などで悩まされており、
母親の産後の日だちが良くないため、伯母の手で育てられた。
伯母さんや、家族にも気遣ってもらって愛情に包まれて育った幼少期。
感受性豊かで繊細で詩的センスを持ち合わせている主人公。
とりわけ特別な展開はないけれど、小さい頃の日常が、細かに語られていて、昔のゆったりとした時の流れの中で美しく温かい言葉できれいに表現されていて、とても好感が持てる作品。
戦後、灘中学校において、国語教育に教科書を使わずに、本書を用いて3年間かけて読み込む授業を行っていたという。正しい日本語で綴られた良書です。
次回の課題図書はルイス・キャロル「不思議の国のアリス」(ちくま文庫、柳瀬尚紀訳)です。
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