2020年の振り返りと大切なお知らせ
東京・谷中の本屋ひるねこBOOKSです。
当店は本日、2021年の1月11日に5周年を迎えました。
まさかこのような、「非常事態」の中でその日を迎えることになるとは思いもよりませんでしたが、無事に5年間営業を続けることができました。この間にお世話になった皆様に心から感謝を申し上げます。
こうして周年の機会に文章を書くのは実は久しぶりだと気付き、2020年という特別な年の事を少し振り返っておこうと思いました。
ちなみに、以前ブログに書いたものはこちらです。
どれも長いのでご興味のある方だけお読みいただければ。
・1周年
http://hirunekodou.seesaa.net/article/445711999.html
・2周年
http://hirunekodou.seesaa.net/article/456227078.html
・2.5周年
http://hirunekodou.seesaa.net/article/460485378.html
2020年は希望に溢れた1年になるはずでした。
1月に開催した4周年記念展の大成功から始まり、2月のグループ展、そして2/22のひるねこBOOKSレーベル新刊発売と、実に華やかな5年目のスタートとなりました。
ところが2月も終わりに近付くにつれ、どうやらこれは大変な事になりそうだという空気が広がり始めました。その後はもうご存知のような状況で、最初の緊急事態宣言が発出され、私たちの生活は一変しました。しばらくは通常通りの営業を心掛けていた当店も、GWにはついに一週間の休業を余儀なくされました。その時の迷いや思いは、当時の記録としてそのまま残してあります。
営業再開後から現在に至るまで、時短や臨時休業などはあるものの、出来る限りこれまでと同じように営業を続けてきましたが、本当に「政治」に翻弄された一年だったなと思います。もはやここに書くまでもありませんが、国や都から発せられる空虚なメッセージ、ただでさえ擦り減った心身をさらに痛めつけるような愚策・失策。日本の“リーダー”たちはこれほどまでに冷酷且つ無慈悲で無能だったのかと、まざまざと見せつけられました。
そのような中でも営業を続けて来られたのは、一にも二にも利用してくださったお客様の存在があったからです。不安や怒り、無力感に苛まれる日々において、お越し下さる皆さまとの会話、そのたった一言二言にどれだけ救われたことでしょう。また、全国からの通販のご利用、励ましの声もありました。そしてBookstoreAIDにも大きな力をいただきました。
#CatsParade や #検察庁法改正案に抗議します 作家フェア、7月の都知事選におけるキャンペーンなどで各種メディアにも取り上げられ、当店の存在を知ってくださった方々もいました。場を開くこと、そこから発信していくことの力を感じた日々でした。
一方で、それとは矛盾するようですが「場を持つ意味」が揺らいだ1年でもありました。この場所で人と接するということ、本とのタッチポイントとして在ること、小規模なスペースでありながら、だからこそ時には濃いつながりを作っていけること。それこそが店主である私が大切にしてきたことであり、ひるねこBOOKSが存在する意味でした。そういった“接触”を出来る限り避けねばならない状況において、場を持つことはリスクなのではないだろうか、そう思わずにはいられませんでした。現在、同時入店は原則3名までに制限していますが、様々な意味において、そのこと自体が胸を締め付けます。
また、前年に比べて激増した通販のご注文に一人で対応していく中で「もうこれ以上は無理かもしれない」とパンクしかけた瞬間があったのも事実です。もちろん絶対的な来客数が減る中で通販のご注文にはとても助けられましたし、それが無ければ昨年を乗り切ることは出来なかったでしょう。大変感謝していますし、それはこれからも同じです。とは言え、やはり店頭での販売ならば一瞬で終わるものがどんどんと積み上がり、時間的な制約の中で発送ミスをしないようにというプレッシャーも重なって、どこかで心理的な負担になっていたのは否定出来ません。これは多かれ少なかれ、ほとんどのお店が同じなのだろうと思います。
それならばいっそ、高い家賃を払わずにネット専門でやった方が良いのではないか、と考えたのも正直なところです。ひたすら本を登録し、紹介して、在庫はほどほどで確実に売り切る。毎月の固定費を考えればよほど効率が良く、恐らくそのスタイルで成り立つだろうとも思いました。店頭という場が実際にあるからこそ多様な品揃えが出来、信頼も得られるのだと充分わかっているのですが、一方でこの時代にリアルな場を持ち続けることが果たして正解なのかどうか、ずっと考え続けてきました。
とにかく、もう疲れた。出来るなら身体も心も休めたい。
売り上げを減らしてもいいから、細々とやって行こう。
無理なくやって生きていければそれでいいんだ。
自然とそう考えるようになっていました。
ところが。
12月も下旬に差し掛かり、時空が歪んだように感じられた2020年が、間も無く終わろうとしていたある日曜日の午後。
思いがけない出来事が起こりました。
「うちが1月いっぱいで閉めて他に移るので、ひるねこさん、その後に入りませんか?」
それはすぐ近くの、とあるお店の店主さんからの一言でした。
まさに、青天の霹靂。
当店のことを継続して見てくださっている方ならご存知の通り、3年目の頃からずっと「移転」について考え続けていました。もっと広いスペースが欲しい、もっと使い勝手の良いところがあるはず。そう考えてはネットで物件情報をチェックし、不動産屋の貼り紙を眺めていました。
現店舗の次の更新は2021年の夏。移転するならこの春〜夏のタイミングしかないと考え、ここ数カ月は特に力を入れて探していましたが、条件に合うところは全く見つかりませんでした。
普段ならびっしり埋まっているはずの展示スケジュールも、春の2ヶ月間だけ空けてありました。もうそろそろ、という焦りが出てきていました。
それが、まさに運命とも言えるタイミング、そして場所で、もたらされたのです。
まるで弛んだ頬を引っ叩かれたかのようでした。
目を覚ますには充分でした。
まだまだやれる事がある、やらなければいけない、そう言われたような気がしました。
突然の事態ではありましたが、きっとそうなるように決まっていたのでしょう。
「風の時代」の到来とともにやって来たこの流れに、乗ることにしました。
まだ正式契約の前なので詳細を明かすことは出来ませんが、ひるねこBOOKSは、この春に移転します。
このまま順調に進めば、現店舗での営業は3月末まで、4月の下旬から新店舗をスタートする予定です。
広さも家賃もおよそ1.6倍。
店としての格が上がり、可能性が広がる分、求められる結果も責任も大きくなります。
今よりももっと多くの本を、作品を、届けていかなければなりません。
売り上げを減らそうなどと、甘えた事はもう言えませんし、言いません。
「移転しなければそのまま一生続けられたのに」と言われたくありませんし、自分でも思いたくありません。
まずは次の3年間でもう一度経営を安定させ、今までの気流を止めないこと。守りに入りそうになった気持ちを再び「攻め」に転じさせて、新たな空間を作り上げること。
幸いにして0からのスタートではなく、これまで築き上げてきたあらゆる関係や培ってきた経験があります。それらをさらに広く強く、そして深くして、困難な時代にあってもリアルな「場」だからこそ持てる魅力を高めていきたいと思います。
6年目の始まり、これまでにも増してますます多くの方の力が必要となりました。どうかこれからも一緒に歩んでください。
2021年も引き続き、何卒よろしくお願いいたします。
ひるねこBOOKS
小張隆
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