元IT・業務改革コンサルタントが感じた、コンサルタント職とカスタマーサクセス職 ~十全な職業はない~
こんにちは、朝でも夜でもヒルマ(@hiruma_poker)です。
この記事は【CS HACK Advent Calendar 2022】の最終日の記事となります。CS HACKさんはカスタマーサクセス(以降CS)のお仕事だけでなく、キャリアについてのプラットフォームでもあるとのことですので、キャリアに関して残したいと思います。
なお、今年のアドベントカレンダー2日目のカラクリ社鈴木さんは、NewsPicksの超初期2014年頃のユーザー会でご一緒しており(ご無沙汰してしまっていますが)おなじアドベントカレンダーに名前を連ねられて光栄です。
このnoteを通じて、現在コンサルタントである方は、ファームに残ったほうがいいのか、CSのキャリアに自身の未来があるのか、現在CSの方はCSとしてそのままキャリアを歩んだ方がいいのか、コンサルタントにチャレンジしてみるのもよさそうなのか、少しでも解像度が上がれば幸いです。
自己紹介
CS界隈では新参者ですので、自己紹介をさせてください。
株式会社ログラスで3人目のカスタマーサクセスとして入社し、主にCSOps・Adoptionの役割を担っています。前職は独立系のコンサルティング・ファームでIT・業務改革コンサルタントとして働いていました。
ポーカーが好きで、Asian Poker Tourというポーカー大会で優勝したことがあります。
「ポーカープロなんですか?」とたまに訊かれることもありますが、新卒からずっとフルタイムで社会のために働かせていただいています。ポーカープロはなろうと思えばいつでもなれますが、ログラスという未来に輝くスタートアップで働くことは今しかできないのでログラスで働いています。私のキャリアやログラス入社の経緯については、以下の記事をご覧ください。
公開されているnote記事
ご紹介させてください。
入社2か月での所感
以下のインタビューで語っている点をサマリして記します。
コミュニケーション
コンサル:説得的
CS:内発動機促進的(モチベート)
お客様との直接接点
コンサル:多い(お客様オフィスへの常駐もある)
CS:少ない(週1定例~まったく会わない)
インタビューであったこともありますが、2か月での所感は浅いですね。この意見は今も変わりませんが、今回のnoteでは、さらに厚く両者の違いや共通点について書いていければと思います。
入社10か月での所感
いくつかの項目に分けて、所感をお伝えしていきます。私がB2B SaaSのCSであることによる、偏り、バイアスもあるかと思いますが、その点ご留意ください。
①スタート
まず、コンサルタントはシニアマネージャーがお客様から受注し、あるプロジェクトに対して支援人員としてアサインされます。CSは、セールスがお客様から受注し、オンボーディングプロジェクトの担当となると業務がはじまります。(ハイタッチ支援が前提)
将来に期待する成果を、人の単位で買うか、SaaSの利用度の単位で買うかの違いであり、スタート地点に大きな違いはありません。
プロジェクトで成したいことの要件定義があいまいなこともあれば、SaaSを活用して得たい効果、やりたいことの定義があいまいなこともあります。そこをコンサルタントやCSというサービス職が支援することもまったく同じなので、ここに大きな差は感じませんでした。
②プロセス
プロセスに関しては、コンサルタントとCSでやや感覚が異なります。コンサル会社とお客様の関係や、プロジェクト自体が多種多様であるため、一般化が難しいですが、こうしたプロジェクトの最小単位はコンサルタント2,3名とプロジェクトマネージャー1名であることが多いです。
コンサルタント1名を単独でアサインする際は、そのお客様を支援している他ベンダにマネジメントや育成を任せられるようなケースであることあ、支援スコープが狭く付加価値も高くない人材派遣のような関わり方になることが多いです。
また、こうしたプロジェクトチームが複数あり、それぞれが並行に走って、お客様を支援していることが多いです。
一方で、CSはエンタープライズであってもオンボーディング担当CSと、必要に応じてサポートメンバー(ジュニアなCSやカスタマーエンジニア)など、少人数で入ることがほとんどです。
もちろんSAPのクラウド製品やSalesforceのようなプロダクトであれば、この限りではなくコンサル会社・SIerなどとタッグを組んだプロジェクトチームが発足されることはあります。しかし、一般的なSaaSベンダにいる場合、CS1人とお客様カウンターパート数人が関係者、というケースが多いと思われます。
ここでなにが示唆かというと、こうした環境要因から、コンサルタントは、プロジェクトマネジメントとサービスデリバリが分業されることが多く、CSはプロジェクトマネジメントとサービスデリバリを兼任することが多い、ということになります。
コンサルティング・ファームのサービスラインにPMO(Project Management Office)があるのは一般的で、複数かつ複雑に走るプロジェクトをまとめ上げることに専門性が生まれます。CSの場合、そうしたことは少ないでしょう。
私が働いているログラスは経営管理の領域のご支援をしており、財務会計システムのリプレイスプロジェクトの影響を受けることもしばしばあります。しかし、ログラスのCSにそうした他プロジェクトのマネジメントの依頼が来ることはありません。(私自身、お客様の成功のために他プロジェクトに乗り込むことはやぶさかではないが、会社・事業としてはスケールしないので難しい。)
これは、個々人のキャリアにおいてどう在りたいか、何を得たいかによるため、良し悪しはないがこの傾向はハッキリあると思います。
③ゴール
コンサルタントは、プロジェクトが完了したら基本的にお客様企業を去ります。近年は、BPO(Business Process Outsourcing)として業務プロセスを請け負いながら、DX・デジタル改革を進めるといったサービスをするファームも増えている。そのため、前記の限りではなくなっているが、いずれにせよ、コンサルティング・ファームはコンサルタントのスキルセット・ドメイン知識の滋養(育成)を考えなくてはならず、ローテーションは発生するため、お客様企業から離れる日は来ます。
一方で、カスタマーサクセスは、業務プロセスを支えるプロダクトがお客様に残り続けるため、接点は残り続ける。もちろん、ハイタッチでオンボーディングする時期のような、接点の頻度・濃さは続かない。しかし、契約が続く限り、ユーザーコミュニティでの接点、ヘルプセンターなど情報コンテンツでの接点は残ります。
これはビジネスモデル上の差異であり、LTVの最大化をミッションのひとつとするCSの特徴であると言えます。もちろんここにも良し悪しはなく、いずれを選ぶかは個々人の自由であると思います。
④再スタートの難しさ
意外と語られない点なのかなと個人的に思うのがこの点です。
再スタート、というのは1度プロジェクトが完了したあと、また新たにリソースをかけて何かを変えて成果を出しに行こうという取り組みを指します。
コンサルティング・ファームであれば、お客様の上位役職者とのリレーションはシニアマネージャー以上が担っていることが多く、あるプロジェクトが完了しても、完全に離れる訳ではなく、次は何をしましょう、という話が行われていることが多いです。
また、プロジェクトマネージャーも継続支援の提案ができないか探っており、コンサルタントの稼働を余らせないように動きます。
しかし、SaaSはその導入、運用定着までの期待値が強く、一度運用定着してから、何か新しく業務上のアクションを起こすことが難しいです。
これは、コンサルティング・ファームはサービスとリソースが価値の源泉であり、SaaSベンダはプロダクトが価値の源泉であることに起因します。
CSとしてお客様に接していると、お客様の問題、課題に触れる機会は非常に多いです。「一定リソースをかけて、こういう取り組みをすれば、よくなるのにな。」と、具体的にイメージできることもしばしばあります。
しかし、お客様の中でその取り組みに対する温度感を上げに行き、受注まで至るまでの取り組みに、CSとしてのリソースをかけるのは少し難しいです。私がCSという立場に歯がゆさを感じる点はこの点です。
CSが悪いわけではなく、コンサルタントの立場でも同様の歯がゆさはあります。例えば、長大な業務プロセスを支援していると、どうしてもシステムとシステムの繋ぎ目が出てきます。そこをお客様に業務でカバーしてもらうこともあれば、RPAなどでカバーすることもあります。
もし自分たちが、高速かつ高品質なシステム開発のケイパビリティを持っていれば、もっと最高なオペレーションが組めるのにと思うことがあります。
CSは、なかなかお客様の腰は重いが、機能さえできてしまえば、パッとそれを利用してもらうことができます。ここに絞ればCSの介在価値は低いですが、お客様の声(VoC)を回収し、社内にフィードバックするという役割は重要なものです。
結論付けるとすると、コンサルタント(コンサルティング・ファーム)のほうが、お客様と再スタートの取り組みははじめやすく、CSははじめづらいです。ただし、CSは機能開発が進めば、プロジェクト支援というサービスデリバリなしに、お客様に価値を届けることができます。
⑤リソース
④とも関連しますが、コンサルティング・ファームはサービスデリバリができるヒューマンリソースを大量に抱えているので、柔軟に提案することができます。ビジネスモデル上、人に対して値付けするため、原価割れするような値付けをしなければ、粗利が出なくなることはありません。
一方でCSは、ビジネスモデル上、プロダクトの利用料に対して値付けするため、CSを大量に抱えると粗利が残らないということが起こりえます。CSは1人あたりARRなど、生産性の指標が重要視されますが、それはこのためです。(なおコンサルタントも、給与は定期的に出ていくので、高い稼働率である必要はある)
ゆえに、CS(SaaSベンダ)はリソースの柔軟性が低いです。
⑥クライアント/お客様との関係性
これは正直、一人ひとりの個性にもよるので千差万別ですが、相対化するとコンサルタントは「狭く・深く」、CSは「広く・浅く」となるのが傾向だと思います。
プロジェクトデリバリを行うコンサルタントも、ひと昔前は、1人で5つも6つもプロジェクトをかけ持ちしたそうですが、そうしたコンサルティング・ファームは減ってきているそうです。1社に100%稼働を割いているか、多くても3社+社内プロジェクトといった辺りが相場ではないでしょうか。
CSは、そのプロダクトの単価にも大きく依存しますが、1人で10社以上を担当したり、そもそも担当企業がなく、ユーザー企業全体を担当しているということもあります。
この点は、比較的明確だと言えるでしょう。クライアント/お客様とどういった関係性になるかというのは、個人の仕事のモチベーションにも影響を大きく与えますから、ひとつの軸として考えてもよいかと思います。
⑦キャリアの広げ方
もっとも一般化が難しい項目を挙げてしまいました。正直、いずれの場所でもパフォーマンスを出して、上司に恵まれれば、いくらでもキャリアは開けます。(前者は必須要素、後者は加点要素)
マルチインダストリー(業界)、マルチサービスのファームにいて、コンサルタントでもマネージャーでも、お客様からの信頼を得る仕事を続けていれば、自身が希望するインダストリー・サービスのプロジェクトに1,2年の間には移れるでしょう。
パフォーマンスが出ていないと、あなたの希望は優先されづらいので、自身のキャリアを自身で開いていくのは難しいでしょう。
CSは少し不思議な職種で、直接のお客様対応が苦手でも、別のやり方でパフォーマンスが出せる可能性があります。システム開発に強ければ、VoCやユースケース管理(要求・要件定義)などCSとPdM補佐を兼任して仕事をはじめられるでしょうし、ドキュメンテーションに強ければ、CSOpsやイネーブルメントの役割で活躍することができるでしょう。
コンサルタントのように、システム開発プロジェクトからCRMプロジェクトにいきなり移るようなドラスティックさはありませんが、周辺領域に染み出しながら、自身の強みややりたいことを探すことができるのではないでしょうか。
ログラスのCSマネージャーの浅見さんがいくつか例を出してくれているので、こちらのnoteもぜひどうぞ。
十全な職業はない
ここまで見てくると、差異がいくつか明らかになりました。ただし確実に言えることは、IT・業務改革コンサルタントが身に付けるスキルセットと、CSが身に付けるスキルセットは非常に親和性があります。
より重要なことは「お客様の課題解決に直接的に貢献しようとしている」というマインドセットは共通ということです。SaaSベンダにおいて、マーケティングもセールスも、お客様を課題解決のラストワンマイルまで持ってくることが仕事です。
(個人の主観ですが)1番難しくておもしろいラストワンマイルのところを、コンサルタントやカスタマーサクセスというサービス職が担います。
コンサルタントとカスタマーサクセスは上位職でも下位職でもない類似職であり、互いに良い点も限界点もあります。
自分の好きな事業を営んでいる経営者も、従業員と完全に同じ立場になれませんから、孤独と言われます。どんな職業も十全ではなく、個々人の意志によって、何かを捨て、何かを選んでいます。
このnoteを読んだ方が、そうしたことを考える一助になれば幸いです。
最後に
キャリア相談やカジュアル面談のご依頼は、私のTwitter DMより日程調整させてください。
株式会社ログラスの求人はこちらに掲載しております。
最後までお読みいただきありがとうございました。
比留間
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