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ジャニーズ性被害者たちは、これで本当に救われるのだろうか? 私たちは償えるのだろうか?
note でも盛り上がっているジャニーズ事務所の創業者、ジャニー喜多川による性加害問題ですが、私も途中から関心高く経緯を追っていました。X(旧 Twitter)アカウントの方でいろいろ呟やいていたので、それらを中心にまとめてみます。この記事は 10月2日の記者会見の後に書いています。
ビール好きな一個人として、国内大手ビールメーカー4社(アサヒビール、キリンビール、サッポロビール、サントリー)がジャニーズタレント(ジャニタレ)の CM起用の打ち切りを発表したため、個人的に関心の高い問題となりました。
私はビール以外だとエンタメ、その中でも国内ドラマが好きなのでジャニタレもチェックしていますし、日本人として生まれてこの方、テレビでジャニタレを見なかった日はありません。よく知っているタレント達が大勢、この性被害事件に関わっているとなれば、今後の雲行きと合わせてチェックせずにはいられなくなりました。
ジャニー喜多川による性加害事件の経緯
まず、私の認識をベースにしてザックリとこの問題の経緯をまとめます。( )内は私の推測等です。より詳しくは wikipedia 等でまとめられているので、そちらもご覧ください。
1988年頃(約 35年前) ジャニー喜多川による性加害がジャニーズ事務所内で蔓延しているという噂を都市伝説的に私、ひるべえも聞く。多くの人が、この噂を知ってはいるが信じていない状況が始まっていた。
1999年 週刊文春がジャニー喜多川によるセクハラ告発記事を公開するが、特に騒がれずスルーされる。
(2003年頃 民事訴訟内で性加害の存在を裁判所により認定されたが、ジャニーズ事務所の圧力に屈したマスコミが報道しなかったため広く知られることはなかった)
2019年7月9日 くも膜下出血によりジャニー喜多川が死去(同時期に週刊文春が性加害記事を公開するが、これもスルーされる)。
2023年3月 イギリス BCCが「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」というドキュメンタリーを放送して世界的な批判が起こり始める。
2023年4月 カウアン・オカモト氏が記者会見を行い、性被害を公表する。
2023年5月 ジャニーズ事務所により、ジャニー喜多川による性加害を認めて被害者への賠償や再発防止策の検討等が公開される(この前後から本格的な調査が開始されたと思われる)。
2023年9月7日 ジャニーズ事務所による記者会見1回目。内容が不十分であるとマスコミや大企業が反応した結果、所属タレントの CM打ち切りが次々と発表される。
2023年10月2日 ジャニーズ事務所による記者会見2回目。ジャニーズ事務所の社名変更および将来的な廃業等が発表される。
直接の発端となった BBC「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」は、Youtube で字幕付きで公開されているので、ぜひご覧ください。PREDATOR(エイリアン映画で有名なあの「プレデター」。捕食者の意味)という英語のタイトルが、上手くこの事件をとらえています。ジャニー喜多川が姿を見せない点もまさにピッタリです。この報道が日本に蔓延る特有の常識を、世界に強烈な違和感をもって与えました。BBCの記者が再三、「(日本人の誰もが)狂ってる」と言うのが象徴的です。
多くの日本人には共感してもらえると思うのですが、私たちはこの話を昔から知っていました。だけど本当に、酷い性加害事件が起こっていたとは信じていなくて「本当かよ?」と笑い話にしていました。ジャニー喜多川は偉大な人物であると、誰もがそう思っていました。それが根底から覆っただけでなく、多くの日本人が黙認し、見逃したという形で関わった、他に類を見ない非常に特殊な事件です。
近所で遊んでいる児童が、どこかの大人に性的な悪戯をされているのを見つけたら、あなたはどうしますか? 普通であれば、その児童を保護して犯人にやめるように告げ、警察に連絡して逮捕してもらうだろうと思います。これが普通です。それなのにジャニー喜多川の場合は、完全に見逃されました。これは異常です。そして異常だと思わない私たちは、完全に狂っています。警察や検察も捜査しませんでした。唯一、裁判所だけがジャニー喜多川が起こした名誉棄損の民事訴訟を 2003年に性被害を認定して退けたのでセーフです。
先の犯人と一体、何が違うのでしょうか? よーく考えてみてください。
あえて太字にしたのですが、多くの日本人がこの事件に関わっている、無関係ではないと私は考えます。他の傷害や窃盗、殺人事件などは、私たちと無関係な限られた人間関係の中で起こりますが、この性加害事件のごく一部分を、私たちも傍観者として「体験」しています。ジャニーズ事務所の活躍はすさまじいので、広告仕事でより近くで関係した人もたくさんいるでしょう。ジャニー喜多川を批判して干された同僚を横目で眺めていた、なんていう形の元記者の証言もありましたし。この事件は、私たちの身近に存在することもあったのです。
誰も真に受けなかったし、被害者であってもジャニー喜多川を未だに尊敬しているので、まったく大事になりませんでした。この空気感がまた誰かの黙認を生み…という形で、国全体で60年以上に及ぶ大規模なセクハラ事件を見逃し続けたのが、この事件の構造だと考えています。一種の劇場型犯罪だと思います。
BBCの報道により、日本社会は性犯罪に寛容であるとの誤解が広まってしまったでしょうが、そう思われてしまっても仕方がありません。ただし日本人でなければ、この事件の特殊さを正しく理解できません。
この特殊さと似た事例は他にもあります。例えばサブプライムローン問題で発生した 2008年のリーマンショックです。あの当時、(日本人以外の)世界中の人々はアメリカの不動産バブルがはじけるなどとは信じずに、とんでもない投資生活を送っていました。それがギャンブル同然であったと理解したのは、バブルが崩壊した後でした。
この話で言うなら、私たち日本人は今、バブルがはじけた後にいます。そのきっかけをくれた BBCの公平で根気強い取材には感謝を。告発した被害者には受けた性犯罪に対する遺憾の意を、この場で伝えます。
特に被害者には軽々しく慰める言葉など出せません。テレビを観て呑気に笑っていた自分を恥ずかしく思う気持ちはありますが、これから被害者の皆さんが納得いく賠償を受けられるよう心から祈っています。
この事件でめっちゃムカついたこと
私がこの事件に強く関心を持つようになったのは、9月7日の記者会見の後でした。発端はこんなつぶやきから始まっています。この時は、理不尽でかわいそうな話だなと考えていた程度でした(被害者の方には、こんな人間で本当に申し訳ないです)。
被害者の会は、追い詰め過ぎないようにしないとドロンされるよな、とちょっと心配してます。
— ひるべえ (@bKffjKqj7jc47ky) September 6, 2023
主犯がいなくなってる点で、かなり無理筋なんですよね。ジャニーズだから話題になってるけど、普通なら会社潰して終わりなのでは?
元創業者の犯罪の責任を、会社が取らないといけない根拠は無いと思う。
この直後、ビール好きな私の怒りが沸点にまで上がったのは、1回目の記者会見の内容に納得できないと、国内大手ビールメーカー4社(アサヒビール、キリンビール、サッポロビール、サントリー)が他の大企業に混じって我先にと CM打ち切りをアピールしたからでした。
この4社が連携したかのように「明確な人権方針が示されるまで」などと実に曖昧模糊な理由を付けて、罪のないジャニタレの仕事を減らしたことに、どうしても納得いきませんでした。正義を語る綺麗な顔をして、やっていることは大企業らしい理不尽の押し付けだと、私の目には映りました。敬愛するビール会社が性犯罪を見逃し続けただけでなく、さらに悪行を重ねるのかと。そんな絶望感に襲われました。
突然、めっちゃムカつく気持ちをさらけ出して失礼しました。ここからは、この性被害問題に対する懸念点を3つ、続けます。
懸念1 被害者たちは本当に救われるのだろうか?
10月2日の記者会見で、ジャニーズ事務所は被害者たちへ法を超えた賠償に尽くしつつ、直ちに社名変更を行うなどジャニー喜多川の実績の消去を進めながら、将来的に廃業する方針が公表されました。この賠償方針は、社会的にも概ね認められ、追加の改善要求は起こっていないので、この路線で具体的な賠償内容が決められていくでしょう。
ですが、この賠償方針を決めた、または決めさせる圧力をかけたのは、ゴシップ誌中心のマスコミ(主に出版社)と CM打ち切りを公表した大企業群であり、彼らの要望を満たす面での配慮が強く反映されています。ジャニー喜多川の痕跡を消せと要求したのは企業側です。
主役であるべき肝心の被害者たちは、この決定には蚊帳の外にあり、大企業群に配慮された賠償方針に納得できるのかは、かなり疑問です。
私が被害者だったら、これらの企業に対して怒ります。「俺たちの話に、企業が乗っかってくるんじゃねぇ。お前らはジャニー喜多川にビビッて、何も指摘せず、俺たちを見殺しにしてきたじゃねぇか!」と。被害者の中には、大人は誰も助けてくれないと絶望感に打ちひしがれたそうですが、この気持ちを逆撫でするような要求には呆れるしかありません。
このように大企業は、被害者に配慮していません。
被害者が賠償を受ける中で、精神的な傷に対しては長い時間が必要になると思われますが、廃業までという時間制限が設けられてしまいました。このタイムリミットは、おそらく金銭面での交渉についても影響が出てくることでしょう。被害者にとって不利に働くことはあっても、有利に働くとは思えません。
大企業が非常に強い圧力をかけた結果、被害者優先とは言い切れない賠償方針になり、同時にジャニタレから仕事を奪いました。被害者たちは、憧れたであろうジャニーズ事務所を跡形もなく潰す原因にさせられました。彼らは本当に、ジャニーズ事務所を潰すことを望んだのでしょうか? BBCの取材では、ジャニー喜多川への敬意を隠さない姿も見られました。
大人たちが焦って臭いものに蓋をするために、被害者たちが理由として使われた。私には、そんな不穏な状況に見えます。被害者優先とは思えない現状に、とても不快にさせられます。
懸念2 ゴシップ誌にまた見えた、害悪さと再発懸念
マスコミの一部に存在するゴシップ誌は、これまで何人もの芸能人や有名人を根拠のないスキャンダルで追放することで雑誌の売上を得てきました。今回は被害者たちを利用して、同じことをしているように見えます。
10月2日の記者会見は事前に時間制限が設けられていて、その中で質問できなかった記者らが騒動を起こし、翌日以降には自分たちの発信力を使って、この騒動の原因はジャニーズ事務所にあると不満やうっぷんを正当化しながら、批判的な情報を世間に流し始めました。
10月5日には、その記者会見で指名しない記者を集めた NGリストが存在していたとテレビ各社がジャニーズ事務所側を責めるような報道を一斉に開始しました。普段から NGにされるような醜悪な言動や取材を繰り返しているのだから当然です。そんな記者に発言をさせたとしたら、憶測で事態を悪い方に決めつけた誹謗中傷や捏造同然の質問が確実に生じたでしょう。
その場合、また一歩、被害者救済が遠のきかねません。
事務所廃業という時間的な制約も出てきてしまったというのに。
10月3日以降の報道は、2回目の記者会見に対する記者側の不満にすぎないです。公平な記者会見をすれば、被害者たちが救われるのでしょうか? この事件において出版社やゴシップ誌が稼ごうが稼げまいが、公平に扱われようが扱われまいが、そんな事はどうでもいいのです。
まず第一に考えなくてはならないのは、被害者が可能な限り救済されることです。さらに言うなら、ジャニー喜多川の性犯罪の近くにいながら見逃してきた出版社やゴシップ誌は、ジャニーズ事務所に全面的に協力せねばならない社会的、道義的な責任があります。
なのにまた、法を超えた賠償を目指すジャニーズ事務所を貶め、被害者をネタにして、いかに稼ぐかを競い合っているように見えます。出版社やゴシップ誌は結局、この問題において自分たちがジャニー喜多川の性犯罪を黙認してしまったとは考えていません。
ジャニーズ事務所にビビッて BBCの取材にも一切協力しなかった、こんなにも自己中心的で劣悪醜悪なメディアを、私たち日本人は、いつまで生きながらえさせていくのか、真剣に考える時期に来ていると思います。
まったく反省せず何食わぬ顔で責任転嫁する出版社やゴシップ誌を放置すれば、日本で同じ悲劇が起こるリスクが格段に高まります。
懸念3 今後の芸能界、エージェント契約や視聴者にも影響がありそう
新会社(名称公募予定)はタレントとエージェント契約を結び、これまでのノウハウを活用してサポートするなどと言っていますが、このエージェント契約は日本の芸能事務所が行ってきたマネジメント業務とは、まったく性質が異なるようで、新会社やタレントが置かれる立場から大きく変わります。
当然、新会社にそんなノウハウは無いので、まともなサービス提供ができるようになるには、相当な時間がかかるでしょう。そして芸能界やマスコミは、この影響をまともに喰らいます。
いつの日か、新会社がエージェント契約で実績を積み重ねれば、それが未来のスタンダードになることでしょう。ジャニーズ事務所の影響力は、名前が無くなったとしても、形を変えてこれからも続きます。
ジャニー喜多川の痕跡を消し去るため、いくつかのグループ名や番組名に「ジャニー」等が付いているものは、該当するタレントの意志とは関係なく、削除や変更を余儀なくされています。性被害を受けていないタレントなら長年に渡る敬愛の情が残っていてもおかしくないですが、それを無視して強要されています。これは彼らのパフォーマンスに影響するでしょう。
様々な面で芸能界やマスコミ、事務所やジャニタレが変わっていくにつれ、視聴者である私たちにも何らかの影響が出てきます。推し活はこれまで以上にやりにくくなるかもしれません。それと、この事件は私たちも関係している以上、再発防止への協力は、私たちにも求められてくるはずです。
まだこれらの姿は、何も見えていませんが。
以上が私の3つの懸念点です。
ジャニー喜多川をモンスターにしてしまったのは、日本人全員だと思いますし、この PREDATOR は死んだ後も大きな影響を与え続けています。映画のように姿は見えなくなったのに、その残像が残っているみたいです。
他人事だと思わずに、今後の経緯を見つめていきたいと思います。
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