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Photo by
gemini6rabbit
【詩】真夜中のてんとう虫
フクロウの声 真夜中のサンデッキ
夜景を成す街の灯の一つ一つは
打算的人生を燃料にしている
抜け目ない処世術の煌めき
片や僕は向こう見ずで
月光を奪い黄金色に輝く
ピアノ線のような君の触角に
触れられたならなんて考えていた
物置の棚の上はダンスフロア
若者たちの熱気が満ちる
刹那的享楽を煽るのは
No.1ヒット『カマドウマ・ウーマン』
やかましい重低音に合わせて
僕らはひどくゆっくりと踊ったね
まるで古典的な舞のように
脚が絡んで蝶結びにならないように
勘違いしている人間たち
葉に乗っているのはカビじゃない
あれはバラの上に寝そべりながら吸った
君のピアニシモの灰
幸福だった一時の燃えかす
ひらりと落ちた黄金時代の残骸
黒光りする艶やかな肌は
僕の脳裏に焼き付いているよ
君とファックスの上に飛び乗って
ダイヤルを滅茶苦茶に踏みつけた
お望みの「あの頃」に連れて行ってくれる
タイムマシンじゃないか?なんてふざけながら
「青春の時よ、何度でも!」
「見終わらぬうちに巻き戻せ!」
僕らの笑い声にかき消されつつも
秒針の音は闇夜に響いていた
君の思い出はカフェイン入りで
僕はいつまでも眠れない
僕がじっと動かず佇んでいるのは
君が去り時が止まってしまったから
ねえ、くもりガラス越しでぼやけていても
触角のかき上げ方で「君だ」ってわかるよ
今夜もカーテンのひだにもたれて
ピアノ線が光るのを待っている