【詩】関越道
風呂でぼんやりしていたら
シャンプーを二回してしまった
湯気越しの鏡に
過ぎし日の思い出を見ていたせいで
シャワーの雨の中
君の瞳はたしかに輝いていた
鏡面の水垢なんて
全然ものともせずに
月を眺めていたつもりが
ふと気付くと街灯だった
程よくかかっていた雲は
自分のタバコの煙だった
どうやら胸だけでなく頭にも
ぽっかりと穴が空いているらしい
間抜けな顔出しパネルのような
もしくは首吊りロープのような
マッチ売りの少女かと思ったら
本町の客引きだった
お嬢さんたちが “マッチを擦って” いる
店内はとても暖かかった
街を彷徨っていた時のこと
君の元へと続く
白線の上を歩いているつもりが
実は薄氷の上だったみたいだ
租税回避を非難されている男
彼もぼんやりしていたに過ぎない
ケイマン諸島に資産を移し
日本で納税しなかったのも
すべてぼんやりとうっかり
故意なんかじゃない
彼も誰かに恋をして
心ここにあらずだったのだろう
僕がまだ幸福だった頃
君を乗せて関越道を走った
家に着いてしまうのが嫌で
知らぬ間にアクセルを離していた
すると後ろから猛烈に煽られた上
したたかにぶん殴られた
しかしそれも仕方のないことだったんだと思うあれだけゆっくり走っていたんだから