【詩】酒神
包囲を受ける 軍人も
政敵前に 貴婦人も
酒をあおれば 仰がれる
獅子と見まごう 英雄に
マッチ擦れば 引火して
燃えるたてがみ 酒の神
アルコール度数 表記には
「6」の数字が あるものの
こちら逆立ち やめたなら
不思議と瓶に 「9」の文字
太陽頭 下にして
逆立ち中の 午前2時
重低音は 鳴り響き
虚ろな心 震わせる
星は二つか? いや一つ
バスに揺すられ 夜空舞う
席に身を投げ 咳一つ
バスに揺られて 君は酔う
乾ききりたる 土の色
砂埃上げ 視界なし
ワイングラスは 倒されて
ひび割れた地を 赤く染む
その様まるで 荒れた手を
血で潤わす あかぎれか
言われるがまま NOはなし
右にならいて 能はなし
同調の圧 屈すれば
さらに危険な 副反応
バドワイザーの 割れる音
◯◯イザー打ちし 夜のこと
暴徒はパブに 押し寄せて
酒を寄越せと 窓を割り
テキーラ干して 外に出る
カローラ燃して 旗を振る
2階から見る 少年の
澄んだ瞳に 映る赤
風をはらんだ コートには
痩せた孤独が 身を包む
視界の端に 朱の鳥居
突如歴史が 彼を呼ぶ
手で杯の 型作り
御神酒をかざし 加護を乞う
並ぶ空き瓶 眺めれば
カーテンのように 波打ちて
歩けば足が 沈み込む
鍵盤の上 行くように
家へ帰れと 管制室
宇宙飛行士 タクシーで
昨夜は何が 起こったか
思い出そうと 努めても
酒池の瀑布の 向こう側
滲み歪んで わからない
まるでプジョーの エンブレム
おぼろで細部 描けない
包囲を受ける 軍人も
政敵前に 貴婦人も
酒をあおれば 仰がれる
獅子と見まごう 英雄に
マッチ擦れば 引火して
燃えるたてがみ 酒の神
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