【詩】月夜の街
冷たい北風に吹かれて
街の灯りが震えている
真っ白な月が夜景の上を
横へ横へと滑って行く
暗い足元で踊る木の葉
車が通る度に鳴るシャッターのシンバル
この夜空が黒板だったなら
「まだここにいるよ」と書き記したい
チョークの粉が雪のようだ
三日月に伝言板を引っ掛けられたなら
「君はどうしてる?」と尋ねたい
チェーンの玉が雨粒のようだ
遠くの信号が青から黄色に
そして黄色からほどなく赤へ
鮮やかな機械仕掛けの紅葉
都市のあちこちで点滅する四季
マンションの窓がまばたきをして
塀の隙間には猫の夜目
ヘッドホンのイコライザーを
いじったのは君かい?
懐かしさだけが強烈に響いてくる
闇の中でも休まず秒針を
動かしているのは誰?
懐かしい日々が刻々と遠ざかっていく
出会い頭にぶつかった二人
星は砕け散ったフロントガラス
一片一片に想い出が映る
まだあの日々は夜空で輝いている
澄み切った冷気が
光と熱の在り処を知らせる
フクロウが雲に腰掛けて
「寝たらどうだ」と首を振る
でもそれは無茶というもの
それは無茶というものだ
夜は口に人差し指をあてながら
心に饒舌を命ずるのだから
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