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財務省が「反コロナ・反ワクチン政策」のノロシをあげた3つの理由。(後編)
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こんにちは。医師・医療経済ジャーナリストの森田です。
今回は前回の続き。
財務省が「反コロナ・反ワクチン政策」のノロシをあげた3つの理由、の後編です。
前回の内容は大体、
・コロナはもうインフル以下の重症化率・死亡率
・なのに医療機関には未だに巨額の補助金が流れている
・ワクチンも半端なく余っている
・厚労省よ、いままで黙ってたけどもうこれ以上の出費は許さないぞ!
と財務省がカンカンに怒っている、というものでした。(以下参照)
今回は、ではなぜ今財務省がこのような資料を出してきたのか、その3つの理由を考察したいと思います。
1, そもそも金額が異常すぎる
そうなのです。
コロナ予算はそもそも金額が巨大で異常すぎるのです。
なんとコロナ予算は令和2年度だけで77兆円。
億円とか兆円とか言うと生活感から遠すぎて実感がわかないかもしれませんが…
ちなみに日本のい年間の税収は大体50兆円。
各分野の予算としては
・教育に4兆円
・防衛に5兆円
・公共事業に7兆円
です。
限り有る国家予算の中で、毎年必死に切り詰めながら予算を使っている中、突如として77兆円を「コロナ対策のみ」で使ってしまったのですね。
同じように突如発生する災害レベルの案件では「東日本大震災の復興予算」があります。こちらは10年間の総計で32兆円でした。
今回のコロナが1年で77兆円ということですので、その異次元の巨額さがよくわかります。
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ただ、この巨額予算の財源は「国債」で、それを買っているのはほぼ日本の企業や個人です。ですので、
「国の赤字は国民の黒字」
とも言われ、国の借金はそれ自体が問題ではないという理論(MMT理論といいます)もあります。
私はその理論も一理あると思っているのですが、それでも
「集めたお金の配分が医療業界に大きく偏っている」
という点は指摘せざるを得ません。
コロナ予算は、中小企業対策・生活雇用対策をはじめ、地方自治体・農林水産・教育学校分野など多くの分野・業界に振り分けられていますが、その中でも医療業界という一つの業界だけに対して17兆円という巨額が配分されました。
ちなみに、17兆円というと、国民全員から集める1年間の所得税の総額に相当します。
つまり、
・医療業界に17兆円配分すること、ことも
・国民の所得税を1年間ゼロにする、ことも
政府の負担増という意味では同じなのです。
でも、後者のほうが圧倒的に国民全体に広く利益が渡ります。
前者で利益を得るのは医療業界だけなのに。
配分が医療業界に大きく偏っている
というのはそういうことです。
どれだけ医療業界がコロナバブルで利益を得たか、は前編で詳述しています。
これだけの巨大な国家予算が使われ、しかも一部の業界に偏って配分されていれば、財務省がカンカンに怒るのも無理はないでしょう。
2, 財務省 vs 厚労省
財務省というところは、国のお財布を握っている省庁です。
国家1種試験で最も点数のいい学生たち(ほとんど東大生)が行く、日本のエリートの中のエリート
という風潮で語られることが多い、日本を代表するエリート官庁です。
コロナ前までは、財務省こそが日本を仕切っている。とまで言われていました。
そんな財務省が、このコロナ禍で一気にその存在感に翳りが生じます。
新型コロナ感染症という世界を覆った一大パンデミックの担当は専門家である医師や厚生労働省だからです。世間の注目は一気に彼らに集まりました。
それはお金の面でも同じです。
世界中が恐怖で包まれたコロナ禍当初、
「もうお金に糸目はつけないから、どんどんコロナ対策やってくれ!」
と多くの国民が望んでいました。
みんなで外出自粛や休校措置などの痛みにも耐えたのですから、財政赤字なんて殆どの国民が「今は仕方ない」と思っていたでしょう。
その国民意識を背景に、政府も厚労省も予算を湯水のように使いました。
普段、国家の財布の紐を握っていた財務省としては、「今は緊急事態だから仕方ない‥」と言わざるを得ないながら、忸怩たる思いがあったことは間違いないでしょう。
また、厚労省という部署は、平素から医療・福祉・年金という巨大予算を握っている部署です。
財源についても、厚労省だけは「健康保険」・「介護保険」・「年金」という、財務省管轄の国家予算とは別のお財布を持っています。(これらをすべて足すと国家予算レベルの金額になります)
そういう意味では、厚労省と財務省は常にライバル関係にあったと言ってもいいでしょう。
その厚労省が、財務省管轄の国の予算を湯水のように使い始めたわけですから、財務省から見たら、忸怩たる思いどころか「苦虫を噛み潰す」ような思いがあったことは想像に難くありません。
3, 世間の空気が変わった
そんな中、財務省に追い風となる変化が発生しました。それが、
「新型コロナの弱毒化」
です。
弱毒化すると感染力が強まるのはウイルスの一般的な特性なので、この夏の第7波でコロナ感染は大きく拡大しましたが重症化率・死亡率は通常のインフルエンザ以下に下がったのです。
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そもそも日本や東アジアはコロナに強く、実は第1波さえ来なかったのでは?とも考えられますが、それは今回とは別の論点なので割愛します。
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この第7波で世間の空気は一変しました。
多くの国民が、自分もしくは家族や親しい人たちの感染を経験し、
「なんだ、普通の風邪かそれに毛が生えた程度じゃん」
と実感したからです。
もちろん一部で重症化する方、お亡くなりになられる方もおられるでしょう。しかし、そうした方の多くはご高齢の方。残念ながらそれはこれまでの感染症でも普通にあったこと…。新型コロナを特別視する理由がなくなったしまったのです。
こうした流れの変化は、ヤフーニュースのコメント欄に色濃く反映にされます。
最近のヤフーニュースのコロナ関連報道に対するコメント欄では、
「これ以上国民にああだこうだと指示をしないでいただきたい。」
「専門家の言うことは必ずしも正解とは限らない。」
「風邪で重症化するのは、今も昔も同じ。」
などの意見がズラッと並び、それらに「いいね」が数千件ついています。
↓↓
財務省はこうした世間の空気の変化を敏感に感じ取ったのでしょう(待ちわびていたのかも)、11月7日に満を持して「社会保障」という資料を発表、その中でこれまでの国や厚労省のコロナ対策、ワクチン対策、巨額すぎる予算の全貌を明らかにし、彼らに対する批判のノロシをあげたのです。
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以上が、財務省が今回のレポートを出した流れと、その理由です(筆者の想像も入っていますが)。
しかし、「厚労省と財務省の争い」って…
そんなものは国民の生活には全く関係ないものです。
ですから本当のところはどうでもいいのです。
ただ、そうは言っても今回のコロナ禍は国の財政面にも国民の生活面にも甚大な影響を与える最重要案件。
未来の子どもたちのために、どんな社会を残せるのか…。
世界がコロナから卒業してゆく中、弱毒化したコロナに対して我々はどう変化してゆくべきなのか…
省益や利害の枠を超えて、オールジャパンで乗り切っていきたいところです。
前編はこちら↓↓
注)この記事は投げ銭形式です。
医療は誰にでも公平に提供されるべき「社会的共通資本」、
という信念なので医療情報は基本的に無償で提供いたします。
でも投げ銭は大歓迎!\(^o^)/
いつも一人で寂しく原稿を書いているので、
皆様の投げ銭から大いなる勇気を頂いております!
ありがとうございますm(_ _)m
■新刊
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■内容(はじめにより抜粋)■
2019年に始まった新型コロナウイルス騒動。
医療業界をはじめ行政やメディアに先導されたこの騒動は、残念ながら「経済を壊し」「人々の絆を断ち切り」「自殺数を増加」させてしまった。
私は経済学部出身の医師という立場から、このような過剰な感染対策によるデメリットを憂いていた。そしてそれを問題視する発信を続けてきた。だが、この「過剰にコロナを恐れてしまう風潮」は2022年になっても依然として継続している。
2022年1月の全国高校サッカー選手権の準決勝では、選手2人に新型コロナ陽性反応が出たとのことで関東第一高校が出場を辞退した。
まるで「コロナに感染したら社会の迷惑・厄介者」と言わんばかりの対応だ。感染してしまった当該生徒の気持ちを察するに余りある。
コロナ騒動が始まってもう2年も経っているのに…コロナウイルスが日本社会に与えている健康被害は非常に小さいことが統計的に判明しているのに…
社会の過剰反応は当初と何も変わっていないように感じる。
今後もこのような風潮が続くのであれば、それこそ「新しい生活様式」となって社会に定着し文化になってしまうのだろう。
私はそんな「家畜」のような生活を、感染を恐れて人との絆や接触を断ち切るような社会を、絶対に子どもたちに残したくない。
そんなやりきれない思いが日々高まってゆき、我慢できなくなったのが、本書を書こうと思ったきっかけだ。
■タイトル・内容の過激さから数々の出版社から書籍化を断られクラウドファンディングによる自費出版となった本書。
一夜にして目標額を達成し、その注目度は医療にとどまらず人文・社会科学にも広がっている。
(自費出版の悲しさよ。街の本屋さんでは扱ってもらえずAmazonのみでの販売です。)
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夕張に育ててもらった医師・医療経済ジャーナリスト。元夕張市立診療所院長として財政破綻・病院閉鎖の前後の夕張を研究。医局所属経験無し。医療は貧富の差なく誰にでも公平に提供されるべき「社会的共通資本」である!が信念なので基本的に情報は無償提供します。(サポートは大歓迎!^^)