【医師直伝】インフルエンザを上手に怖がる。『ウイルス⇔免疫⇔薬:早わかり図解!』【2020年・最新版】
登場人物
森田先生:とりあえず何でも診る総合診療(プライマリ・ケア)の医師。40代。
Yさん:2人の子を持つ30代専業主婦。元病院看護師。
森田「今回はインフルエンザの治療編ですね。」
Yさん「そうそう、インフルエンザなのに薬のまなくてもいい、って先生が言うから。…それって本当?どういうことなの?」
元気な人ならインフルエンザは免疫で駆除される
森田「これもケースバイケースです。もちろん、私だって薬を出すことも多いですよ。でも全例じゃない、ということ。」
Yさん「どいういうこと?」
森田「そもそもインフルエンザの薬と言うものは、インフルエンザウイルスを殺してくれる、というよりも体の中で増えるのを防いでくれる、という働きが期待される薬なんですね。新薬『ゾフルーザ』についても同じ、作用機序は少し違うのですが、『増殖を抑制する』という大きな意味ではこれまでの薬と同じです。」
Yさん「え〜、意味わかんない。」
森田「ですよね(^_^;)。では、図で説明しましょう。インフルエンザのウイルスは、感染してから体の中で、万〜億単位まで増殖するといわれています。これのピークに達するのが大体症状が出てから2日、つまり48時間くらい。」
Yさん「億単位!すごい増殖力ね!」
森田「そうですね。でもご安心ください。体内の免疫機能がしっかり働く人、つまり普通に日常生活をおくっている人であれば、そのあと体の中の免疫細胞さんたちが一気にウイルスをやっつけに行きます。で、急速にウイルス量は減っていく。」
Yさん「へ〜、そうなんだ〜。…ん?これ、お薬は使わなくても、って話?」
森田「そうです。薬を使わなくても、病気とかでなく一般的な生活している元気な人なら、体に自然に備わっている免疫機能がきっちり働いてくれる。ウイルスをやっつけるのは薬ではなく、あくまでも自分自身の免疫力なんです。あらかじめワクチンを打っておけば、免疫はより強力に働いてくれるでしょうね。」
Yさん「へ〜、じゃ、薬いらないじゃない。」
森田「まあね、でも薬も使いようです。タミフルとかリレンザとか、新薬のゾフルーザなどのお薬は、ウイルスを殺してくれるわけではなく、増えるのを抑えるんだ、と言いましたよね。つまり、殺すのではなく、増えなくする。…ですので、薬が活躍できるのは、ウイルスが増えてる時、発症時から大体2日=48時間までの間、この時期なら有効ですよと言うことなんです。」
Yさん「へ〜、図で見るとわかりやすいわね〜。つまり、最初の症状が出て大体48時間以内に薬を始めれば効果がある、って覚えておけばいいわね。」
森田「そうそう。逆に言えば、その2日を過ぎていれば、薬の効果はあまり期待できないんですね。」
Yさん「なるほど、こういうことなのね。」
森田「そうなんです。なので、受診時にすでに2日以上経っていて、症状も回復傾向、という患者さんの場合、場合によっては『薬も飲まない』という選択肢だって、『あり』なんです。だって、薬飲んでも結果はあまり変わらないと予想されるわけですから。あとはゆっくり休んで、自分の体内の免疫がウイルスをやっつけてくれるのを待てばいい。ということなんですね。」
Yさん「ふーん。でも、せっかく病院まで行ったのに薬が出ないとチョットね〜。」
森田「まぁ、そう言われる方も多いですよね。医師としっかり話し合って決めればいいと思いますよ。」
Yさん「なるほどね。だんだん分かってきた。で、その2日の間に薬を飲み始めたら、どのくらいの効果があるの?」
薬は発熱期間を半日〜1日短縮してくれる。
森田「そうですね。これも一概には言いにくいんですが、平均的には、『熱で辛い期間を半日〜1日短縮してくれる』という感じで表現されることが多いです。これは新薬ゾフルーザでもだいたい同じのようです。」
Yさん「へ〜。『半日〜1日短くしてくれる』か〜、……う〜ん、しかも普通に元気な人なら薬のまなくても治るんでしょ?…それ、ビミョーって言えばビミョーよね。だったら…私なら病院行かないかもな〜。」
森田「そこは自己判断でいいと思いますよ。でも、まあ確かに得られるメリットとしては、ビミョーかも…。薬を飲むとウイルスが薬に対して『耐性』を得てしまい、薬の効きが悪くなっていくというデメリットもありますし。新薬のゾフルーザは、この「耐性」ウイルスが比較的多く出来てしまうと言われていますね。…ですけど、薬で症状が短縮されるその1日が、その人にとっては貴重な1日、ということだってありますからね〜。」
Yさん「そうよね、受験生とか、仕事を休めない人とか、そういう人だっているもんね。」
森田「そうです。あと、重症化リスクの高い、ご高齢で体力が衰えてる方とか、免疫抑制剤を飲んでる方、元気だけど肺に病気がある方、あと超高齢者とか妊婦さんとかね、こういう方々には薬を積極的に飲んでもらう方がいいでしょう。でも、そうでない普通に元気な人たちはインフルエンザの薬を処方しないこともある、そういうことですね。」
Yさん「結局インフルエンザもケースバイケースなのね〜。お医者さんもその場その場で正解を探してるってことか。」
森田「そうですね。基本的なことですが、大事なのはこういうことかな、と思います。」
インフルエンザについて大事なこと
■ あらかじめワクチンを打っておく
■ 免疫力がしっかり働く環境を保つ(適切な睡眠・食事・運動など)
■ なってしまったら安静・休養・栄養をしっかりとって自分の免疫力にしっかり働いてもらう
■ 発症48時間以内なら「薬」の応援を頼むことも出来る。
Yさん「なるほどね〜。結局、大事なのは自分の体力、免疫力ってことなのか〜。ま、当たり前なことよね!」
森田「そう、結局は当たり前のことなんです。ということで今日はおしまいです。」
【おまけ】
インフルエンザのときの解熱剤はボルタレン・ロキソニンなどのNSAIDsと呼ばれる薬は(特にお子さんに対しては)使いにくく、『アセトアミノフェン』という薬がよく使われます。
実はこれ、病院でわざわざ処方箋をもらわなくても薬局で買えます。
以下の3つの薬は、他の薬効成分は入っていない「アセトアミノフェン」単剤の市販薬です。薬剤師さんと相談しながら使うといいですね。(我が家でもよく使っています。)
病院で処方される場合、大体アセトアミノフェン300~500mg前後が一般的な大人の一回分です。
◎ノーシンAC
(1錠中アセトアミノフェン150mg、成人は1回で2錠)
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◎バファリンルナJ
(1錠中アセトアミノフェン100mg、成人は1回で3錠)
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◎小児用バファリン
Amazonで見る↓(バファリンCII:フルーツ味、1錠中アセトアミノフェン33mg)
楽天で見る↓(バファリンチュアブル:口の中で溶けるタイプ、1錠中アセトアミノフェン50mg)
ちなみに熱は高いほうがウイルスは早く死ぬので下げないほうがいい、というのもまた事実らしいのですが…でも、ご飯も食べられないとか、うなされるほど辛いとか、そういう場合はこうした解熱剤でつらい発熱を抑えながら、自分の中の免疫力の活躍を待つ。というのもまた一つの方法だと思います。
ぼくの本
財政破綻・病院閉鎖・高齢化率日本一...様々な苦難に遭遇した夕張市民の軌跡の物語、夕張市立診療所の院長時代のエピソード、様々な奇跡的データ、などを一冊の本にしております。
日本の明るい未来を考える上で多くの皆さんに知っておいてほしいことを凝縮しておりますので、是非お読みいただけますと幸いです。
著者:森田洋之のプロフィール↓↓
https://note.mu/hiroyukimorita/n/n2a799122a9d3
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(この記事は全3回シリーズの3回目です。)
参照:前回(2回目)
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前々回(1回目)
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新薬『ゾフルーザ』についての3分超解説!
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夕張に育ててもらった医師・医療経済ジャーナリスト。元夕張市立診療所院長として財政破綻・病院閉鎖の前後の夕張を研究。医局所属経験無し。医療は貧富の差なく誰にでも公平に提供されるべき「社会的共通資本」である!が信念なので基本的に情報は無償提供します。(サポートは大歓迎!^^)