【台湾の面白い建物】八角居所
台湾の友人に、建築師の張至偉がいます。丹下事務所に勤めていた頃、アメリカの大学のインターンとしてやってきた台湾人学生でしたので、台湾で仕事の経験をしたことのある僕が、色々面倒をみていました。
彼は、大学卒業後アメリカの建築設計事務所で中国の商業案件を担当した後、僕が台湾でのコンサルタント業務を始める頃には、台湾で自らのディベロッパー会社を設立し、建築の企画、設計、施工を一貫して行うという事業を始めていました。彼の会社を"生活製所"と言います。
その張至偉が、自らの父親の購入した苗栗の民泊施設を改修したというので、2019年の秋に見学がてら泊まりに行ってきました。
この時は家内も一緒でした。東京にいた時分も台湾に戻ってからも張至偉とはよく2人で会っていたので、家内も彼の家族のことをよく知っていました。1人で泊まるのは贅沢にすぎるので、夫婦で出かけることにしました。
生活製作のホームページ
八角居所
名前を"八角居所"というこの宿泊施設は、中国語では"民宿"と言っていますが、とても豪華な建物です。元々は別のオーナーが別荘として建てたものを、張さんのお父さんが買取り、自らの引退後の棲家兼宿泊施設にと改装を試み、その業務を息子の張至偉が担当しています。
場所は台湾鉄道の苗栗駅からローカルバスに乗って汶水の停留所まで行き、そこに宿から迎えが来てくれました。運転していたのはオーナーの奥さんでした。宿に僕らが張至偉の友人であるとは伝えていなかったのですが、この様な対応をしてくれました。
この宿は、苗栗の山の麓、周辺を緑に囲まれたとても環境の良いところにあります。恐らく経営の方針も、規模を大きくして利益を追求をするというよりも、心地よい宿泊環境とサービスを提供し、この環境での短い滞在を楽しんでもらうということなのだと思います。
この日は客人が多くなかったということで、オーナーが円卓のダイニングでの夕食に招待してくれました。オーナーと奥さん、複数の友人家族、そして僕ら夫婦と合計10人ほどでの晩餐会でした。
このオーナーは地元の名士らしく、彼を慕った友人知人が訪ねてきて、夕飯を共にし政治談義をすると言った風情で、日本人には難しい話ばかりでした。ですが、こういったサロンのような場に参加したのは初めてだったので、とても興味深かったです。
翌朝、ゆっくりと建物の周りを散歩しました。まるでイギリス庭園のような、ゆったりとした空間です。そこここにある小さな人形や飾りは、奥さんの趣味でしょうか、庭園の雰囲気を優しいものにしていました。
苗栗の山の麓の、まるで桃源郷かといった印象の宿です。台北の忙しない都市生活から離れて、ゆったりとした時間を過ごせます。
八角居所 Around the Treeのホームページ
【外観】
台湾で好まれている、ヨーロッパ風のヴィラといった佇まいです。しかしコンクリート造なので開口部がとても大きくとってあり、外部の庭の景色を見ることができ、とても開放感があります。
本館の方は既存建物の改築、別館が張至偉の設計によるものです。
何というか、民宿という名前にはそぐわない、豪勢な別荘といった雰囲気です。食事をする本館、ダイニングをする離れ、宿泊棟などがそれぞれ別になっており、プライバシーも確保されるようになっています。
【インテリア】
客室は、部屋全体がとても開放的な作りになっていました。シャワーエリアのみガラスで仕切ってありますが、洗面とトイレはカーテンがあるのみで、このカーテンを開くと部屋をとても大きく見せることができます。僕は仕事でもこのような開放的な客室の設計をみていますが、トイレは扉で隠しているのでこれほどのオープンなプランにはしていません。とても大胆だなと驚きました。
ラウンジやダイニングは、開放的な開講が設けられ、庭園の緑を鑑賞できるように設えてあります。このインテリアの心地の良さは素晴らしいですね。まるでヨーロッパの貴族の邸宅かといった居心地でした。
【ランドスケープ】
この宿は、緑の中の別荘といった設えになっています。ですので、庭園そのものと、庭園と建物の関係もよく考えられています。庭師を入れて丁寧に手入れをしているのでしょう。この庭を見るだけで、2時間ほども楽しめます。
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