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モダンデザインのカフェ

台湾にはリノベーションの心地よいカフェがたくさんあって人気があり、そういうお店がたくさん紹介されています。しかし、とてもモダンなスタイルのカフェも少なからずあります。
今回は、そんなモダンデザインのカフェを紹介します。

【ACME】

ACMEは、劍潭のMRT駅の前に完成した台北表演藝術中心の7階にあるカフェ・レストランです。

台北表演藝術中心は、レム・コールハースの設計したとても斬新なホール施設として有名ですが、この建物の中にカフェ・レストランがあるのです。最近の台湾の公共施設には飲食店舗が入っていることが普通なので、この建物にもプログラム時点からこの規模のカフェを入れることが決まっていたのでしょう。
ただし、通常接地性を重視して1階から直接アクセスできる様になっているこの様な店舗が、この建物の場合7階に配置されています。これは、建築家がコンセプトとして1階を市民に開放するオープンスペースとしたからで、そのためにこのカフェ・レストランが上階に押しやられたのでしょう。
しかし、そのためにこの場所は建物の奥深くにある秘密のスペースになっています。そして、一階の喧騒からは隔絶した、知る人ぞ知るというカフェ・レストランです。

藝術中心のメカニカルでモダンなデザインとは異なり、ACMEは木の温かみを感じさせる、穏やかなスペースになっています。大きなガラス面で、ルーフテラスに面した、とても開放的な設えになっていますね。おおらかな斜めの天井も、気持ちが良いです。

住所:台北市士林區劍潭路一號7樓

FBのホームページ

傾斜した天井面が良い感じです。
奥のパントリーと客席の関係。
このカフェは、ルーフテラスに面してあります。
ガラスは、S字に加工された特殊な製品です。
1人で来ても、大テーブルがあります。

王大閎建築劇場 DH Cafe

台北市立美術館のすぐ近くに、"王大閎建築劇場"という施設があります。これは台湾の著名な建築家"王大閎"の自邸をこの公園の敷地内に移設したものです。
僕の主観的なイメージとしては、台湾の土着的な建築材料"赤煉瓦"を用いて、近代的なミニマリスティックな住宅を作ったという風に見えます。煉瓦造でもこんなにモダンな空間が作れるんだと感心します。江戸東京たてもの園にある、前川國男邸といった印象です。

そして、そのすぐ向かいに、ガラスによるミニマリズム建築の"DH Cafe"があります。この建物は王大閎の作品に対するオマージュなのでしょうね。彼が現代に生きていて、モダニズムのコンセプトでカフェを設計したらどうなるか。そんなイメージで作られているのではないかと感じられます。

店内にはアートや建築関係の書籍が置いてあり、その空間でカフェも運営しています。周りは公園で緑にあふれ、建物はガラス張りなので、非常に開放感のある心地よい空間になっています。

台北市美術館に出かける際には、この小さなカフェにも寄ってみてください。とてもモダンな雰囲気のおしゃれなカフェです。

住所:台北市中山區中山北路三段153號

紹介ホームページ

ガラスの箱に薄い屋根がかかっています。
室内は本も置いてあります。建築の本が多いですね。
ここで本を買うと飲物がサービスされます。
ガラス窓の開け方も大胆です。

台灣大學新月台 找到咖啡

台湾大学には、日本統治時代から現代にまたがるさまざまな時代の建物が建設されています。伊東豊雄さんの設計した図書館も有名です。
基本的にここのキャンパスには自由に入れるので、中の建物を見学することも自由なのですが、ここでは新生南路沿いにあるカフェの建物を紹介します。

"新月台"と名付けられたこの建物は、キャンバスから新生南路に出てくる出入口に位置していて、外部からも自由にアクセスできます。建物は外観を赤煉瓦のタイルに仕上げていて、それ以外の開口部はスラブにガラスという、とてもシンプルな構成になっています。これは、道路側に閉じて、キャンパスの内側に開くというコンセプトの設計なのでしょう。

室内は広々としていて、視界にはキャンバスの緑が入りとても居心地の良いカフェになっています。

住所:台北市大安區第四段羅斯福路1號

Wikipediaの紹介

2階はカフェ・レストラン、1階は学生会館になっています。
この様な外観の処理は、前川國男の建物を彷彿とさせます。
インテリアはキャンパスに向かって開かれています。

【空氣圖書館】

嘉義の圓潭自然生態園區に蛍狩に行った際、宿を太平老街に取りました。とても田舎だったので、街歩きをしても何もないだろうと散歩していたら、この白いガラス張りの建物を見つけました。名前を見ると"空氣圖書館"とあります。このたたずまいで図書館はないだろうと思い、様子を見てみるとカフェだったので入ってみました。

建物は軽量鉄骨の細い柱を使って、とても開放的に作ってあります。その上にトップライトもたくさん設けられており、室内に太陽光が燦々と降り注いでいます。海に近い平地だと、この様なトップライトを設けると暑くてたまらないのですが、ここは標高1,000mを超える山の中なので、この様な設計にしても暑さは感じません。とても心地よい空間になっています。

台湾の友人の説明によると、これは農業用の屋内農園を建てるシステムを用いたのだろうとのこと。そのように既成の建築システムを用いることで、ローコストの建物を実現するわけです。
ローコストとは言え、非常に開放的で明るい清潔感にあふれるカフェに仕上がっています。これはアイデアが優れているのと合わせ、ディテールへの配慮が行き届いているのだろうなと感心します。

住所:嘉義縣梅山鄉太平村下坑仔2號

FBのホームページ

通りから見た外観。家形の連なりは、
台湾ではあまり見ないファサードです。
エントランスのカウンターの部分。
とても天井の高い空間です。
正面のセットバックしたオープンスペース。
図書館の名のとおり、たくさんの本を置いてありました。
コーヒーとフルーツの載ったバゲット。
美味しかったです。

花蓮星巴克

花蓮の街で話題になっている、スターバックスの建物です。台湾であちらこちらに作られているコンテナハウスの一つですね。

とは言え、このコンテナの組み合わせは、なかなか素晴らしいです。コンテナ自体は単純な直方体なのですが、コンテナとコンテナの間にできた空間がとても変化に富んでいます。客席は2階に設けられているのですが、コンテナの組み合わせなのに、上手い具合に回遊動線を実現しています。

この花蓮のスターバックスは隈研吾の設計によるものだそうです。

住所:花蓮市吉安鄉南濱路一段505號

スターバックスのホームページ

XY方向に順番に積んだ、
とてもシンプルなコンテナハウスです。
コンテナが、様々な寸法で張り出しています。
このキャティレバーは、
コンテナだからこそ実現できた様に思います。
インテリア空間はこの様に巧みに処理されています。
コンテナの先端の席。

【基隆崆書屋】

基隆に新しく"基隆塔"がオープンしました。海に近い高さの街から、丘の上の中正公園までを観光用のエレベーターを計画したタワーです。"崆書屋"はこの基隆塔の一角に設けられています。

エントランスのアプローチは、台湾の建物には珍しくとても長くカーブを描いていて、動線計画としてはとても面白くできていました。
そして、その長いトンネルを抜けると、そこはやはりコンクリート打ち放しですが、光に満ち溢れた空間になっていました。店名の通りに本も置いてありましたが、このスペースは基本的にはカフェ・レストランになっていました。

このスペースの内装は、全面的にコンクリート打ち放し。天井もそうなので、空調の室内機も剥き出しになったまま置かれています。照明器具は、放射状に設けられたライティングレールに設けられています。ここまでコンクリート打ち放しにこだわった内装を台湾で見たのは初めてです。
これは基隆塔と同じ邱文傑建築師の設計なのでしょう。タワーも素晴らしいですが、このカフェ・レストランもとてもユニークな空間になっています。

住所:基隆市中正區信二路284-1號

参考ホームページ

エントランスのたたずまい。
赤サビ鉄板でかろうじて中に何かありそうだと分かります。
アプローチの設え。
店舗内の様子。
右奥の緑の処理が秀逸だと思いました。

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