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中国語の母音は7つある

中国語の発音は難しいと言われています。そのうち今日は母音について書きます。

“去”の発音

 日本人が中国語を学ぶ際の一つの基本的で難しい単語が“去”です。これは羅馬拼音では“qu”と書かれます。この子音の部分は有気音の“チ”なので問題ないのですが、難しいのは母音の“u”です。中国語の“u”は日本語で“ウ”と発音される場合と“ユィ”に近く発音される場合があります。この母音の違いは厳密には“u” と“ü”と別の表記が与えられています。しかし一般に勉強する際に、この“ü”が簡略化されてしまい、発音記号として“u”と書かれてしまっており、学習者には“u” と“ü”の区別が視覚的にできなくなってしまっています。

そうした複合的な要因で、日本人が“去”を発音すると“チュー”とか“チュイ”とかいう発音になります。ではこの“ü”という母音は正確にはどのように発音すればよいのでしょうか。

台湾で使われる注音符號では“ü”は“”と表現されます。一方“u”は“ㄨ”となり“”とは異なった文字で表現されます。台湾でこの二つの発音を学ぶと、“ㄨ”はことさらに口先を丸めて発音する“ウ”、 “”は“ウ”と“イ”の間の日本語にはない母音と聞き取れました。無理に表現すると“ユィ”でしょうか。なので、“去”を無理に日本語の感覚で表現すると“チュイ”が最も近いと思われます。しかし、この“”は厳密には“ユィ”ではないんですね。日本語にはない母音を発音するという理解が必要になります。

台湾で“”を発音する機会があるのは玉山ですね。これをきれいに発音するのはなかなか難しいです。

“餓”の発音

 もう一つの難しい母音に、“餓”があります。これは、羅馬拼音では“er”と書かれます。これを文字面のまま読むと“エー”とか “エール”になり、“餓”は“エー”という風に発音されがちです。一方、この発音“er”は注音符號では“ㄜ”と表現されます。これは注意深く聞くと、やはり日本語にない母音に聞こえます。強いて言うと“エ”と “オ”の間にある独自の母音だと感じられます。日本統治時代の台湾語辞典ではこの独自の母音を“ヲ”と表現していました。5つの母音以外の文字として無理やり使ったんですね。

母音が5つの表記システム

 日本語の母音は“ア” “イ” “ウ” “エ” “オ”と5つあります。これに対し、偶然ローマ字の母音も“a” “i” “u” “e” “o”と5つです。この様に、日本人の触れる言語環境ではこの5つの母音というのがデフォルトになっているので、母音が5つ以上あるということに関してなかなか感覚的に対応できないように思います。そして、日本語表記の中で中国語の母音の表現をするのには困難が伴います。

注音符號で表現される7つの母音

 これに比して僕の理解では、注音符號では基本的な母音を7つ定めています。“(a)” “(i)” “(u)” “(e)” “(o)” と、日本語にない“”と“” です。(この7つの母音という言い方は注音符號の教え方ではそのように言わないので注意が必要です。介音3つと単韻母4つという言い方をしています。)そして、中国語の発音をこの様に日本語で表現できるもの5つと、できないもの2つに分けて理解するということは、中国語を学習する際に、メタ認知として必要なことであろうと考えています。日本語にない母音を、日本語の表現の範疇で理解したり表現したりすること自体に無理があるからです。その点は羅馬拼音による表現でも同じです。母音の表現方法が同じように5つしかないからです。

それに比して注音符號では、単母音として7つあるということが視覚的に発音のシステムとして明示されています。これは僕が台湾で中国語を学んだ際に目からうろこが落ちた学びでした。

 

 

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