【台湾の面白い建築】壯圍沙丘旅遊服務園區
2019年、台北で知り合った宜蘭の友人が是非見せたい建物があるというので、宜蘭に行った際連れて行ってもらいました。それがこの建物、壯圍沙丘旅遊服務園區です。
宜蘭駅から海の方に向かうと壯圍郷になります。その先の海に面して砂丘があり、その土地の特徴を建物に表現しています。
この建物は、ツーリストセンターというだけではなく、蔡明亮さんという映画監督の作品のインスタレーションを展示するギャラリーともなっています。
設計者は田中央(Field office Architects)という設計事務所を主宰している黄聲遠建築師です。
これは、なかなか野心的な建物です。外観で特徴的なのは、大きく曲面を描くエントランスと、砂丘を表現する、屋上緑化と一体的にデザインされたコンクリートの大屋根、それを支える木で覆われている鉄骨柱、屋根に突き出したトップライトなどです。大屋根の下では、この日ちょうど音楽イベントをやっていました。
屋上緑化された屋根には、歩いて登ることができます。そこには植物の茎が立っているような手すり、様々な大きさのトップライトの箱があり、曲線の歩行ルートが設定されています。植栽もこの土地の様子を再現したような、変化に富んだものになっています。
外構にはアートがいくつも配置されており、床のパターンも亀の甲羅を模したような六角形のパターンを作っています。これは亀山島のメタファーでしょう。
建物を紹介する資料では、この外観の写真が載せられていることが多いのですが、僕は内部空間の方にも驚きました。全く水平垂直の線のない曲面の構成です。外部の曲線と内部のそれが一体となって全体となっています。それに加えて天井面のコンクリートも曲面です。まるでル・コルビュジエのロンシャンの教会の様です。
内部空間は、蔡さんの作品を紹介するインスタレーションになっていて、映画のシーンが放映されていたり、映画館のように椅子が飾ってあったりもします。ガラスに描かれている画像も、蔡監督によるものなのだそうです。床には砂丘を表現する砂が盛られています。
そして、この主要な展示スペースだけでなく、それをつなぐ廊下にも工夫があります。トップライトによる光と闇のコントラスト、床は壁面に向けて勾配がついています。これはどういう意図なのでしょう。やはり砂丘の表現なのでしょうか。
日本では、このような野心的なデザインの建物を公共建築で実現することが、ほぼ不可能になっています。それは時代の流れの中でそうなっているわけですが、同じような公共の建物をこのような形で実施できる国があるということは、肝に銘じておかなければいけないと思います。
外観デザイン
半屋外空間
内部空間
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?