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テレビドラマを楽しむ

このnoteで書いている"明清交代人物録"を読んでもらえば分かると思いますが、僕は歴史書を読むのが大好きです。日本でもトレンディードラマはほとんど見ず、NHKの大河ドラマを専ら見る。あとはドキュメンタリーやニュースしか見ていません。
この歴史ドラマフリークからすると、中国の"古裝戲"はほとんど宝の山です。ネットでも沢山の歴史ドラマは見れますが、中国や台湾でDVDのセットを買っても、日本国内のものと比べると格安です。
しかも一つ一つのドラマが長い。日本では長編歴史ドラマはNHKが大河ドラマとして一年に一本製作するくらいですが、中国では歴史好きな国民性と、ドラマにかかる費用が安いこと。さらにそれぞれの地方に異なる歴史観があり、歴史素材にも事欠かないことなどから、非常に膨大な歴史ドラマ群が供給されています。

また、台湾でも最近とても興味深い歴史ドラマが制作されています。中国と比べるとその量と長さも規模は小さいですが、そのオリジナリティー、素材の特徴、多言語に対するこだわりなどから、とても面白い作品が多いです。

沢山あるので、内容は玉石混交になりますが、ここでは僕が楽しく見ることのできた歴史ドラマを紹介します。

これらのドラマを字幕付きであってもちゃんと楽しむことができれば、中国語のヒアリング能力は格段に上がると思います。僕の場合、歴史への興味を満たせて、言葉の練習も共にできるので、一石二鳥の勉強の素材でした。

【中国】

康熙帝國

これは中国で大人気を博したドラマですね。子供のうちに皇帝となるところから最期まで、大河ドラマの様な作品です。この作品が人気があったのは、清の最も勢いがあった時代のことを扱っていたからなのだろうと思います。
4人の大臣の人間関係とか、台湾や新疆への遠征、三藩の乱など、帝位についている時間が長いので、題材になる歴史的事件も多いですね。

康熙帝國

大明王朝1566

これはとてもマイナーな素材を扱った作品です。嘉靖皇帝と海瑞。明朝中期の道教に耽溺したという評判の悪い皇帝と、彼を直言して諫めたという忠臣。どちらも日本人にはなじみが薄い人物です。ですが、この時代に東シナ海では倭寇が跋扈するという事態が起こっており、この背景となる中央政権の様子を知りたいと見てみました。

ドラマは、財務担当官たちが大勢でそろばんをはじくところから始まります。これは黃仁宇へのオマージュでしょうか。そのほかにも、宮廷から一歩も出ない嘉靖皇帝と地方の最前線から政治の行き先を憂う海瑞との描写。心理劇のような形で、この二人の直接対決に向かってドラマが進んでいきます。

僕の中では中国の時代劇No. 1ですね。

大明王朝1566

萬曆首輔張居正

萬曆帝の統治時代の初期に辣腕を振るった張居正を取り扱ったドラマです。首輔大學士という文官を取り扱っているので、表現が地味になりがちですが、様々な工夫をしてドラマ化しています。
明朝の再興を果たして、その後の萬曆帝の時代になるわけですが、この子供時代の萬曆帝との関わりがとりわけ興味深いです。

萬曆首輔張居正

大清風雲

これはホンタイジの妃で順治帝の母になる孝莊を中心に据えたドラマですね。そしてホンタイジとドルゴンが彼女をめぐって火花を散らせます。清朝初期の政治状況について全く理解がなかったのですが、このドラマをみて概要をつかめました。ドラマがどれだけ史実に忠実かは疑問がありますが、アウトラインを押さえるにはちょうど良いヒューマンドラマになっていたと思います。
この孝莊とドルゴンの関係というのは歴史家の間でも定説を見ていない難しい問題のようです。

大清風雲

施琅大將軍

これは台湾の鄭家王朝を最終的に滅ぼすことになる、施琅を主人公にしたドラマです。清朝の内部で鄭家軍から下った施琅がどのようにして清の海軍の将軍として活躍できるようになったのか。それを様々な人物を介して物語っていきます。
施琅が軍の総司令官であるのに対し、文官のトップである姚啟聖が癖のある人物として描かれています。中国のドラマでは、大体において武官は比較的単純、文官は少し腹黒い、何を考えているか分からない人物と描かれてますね。

施琅大將軍

走向共和

これは中華民国の成立、辛亥革命をテーマにしたドラマです。これは史実自体がとても複雑なんですね。孫文は世界を駆けずり回って革命のための理論を唱え、資金繰りをしますが、彼の指導する武力闘争自体は、失敗を続けます。そんな中、中国本土で上がった武漢での蜂起が、この革命を成功に導きます。しかし孫文が中華民国総統になっても前途多難。中国史の複雑さを実感できます。

走向共和

【台湾】

蘇卡羅

これは2021年台湾で放映され、とても話題になったドラマです。台湾の清朝末期に起こったローバー号事件という、台湾の原住民とアメリカ海軍の衝突した歴史事件を描いています。
この時代、原住民の土地は清朝は関知していなかったこと、そのためにアメリカとの交渉は直接原住民と行わなければならなかったこと。また、この事件を原住民の視点から見るとどうなるか、等々とても複雑な歴史を描いています。
この物語を紡ぐために、言葉は実に6種が使われています。閩南語、客家語、中国語、パイワン語(原住民)、英語、フランス語です。台湾の映画やドラマはこの多言語へのこだわりが強いのですが、ここまで多いのは珍しいです。
このドラマの主人公であるフランス系アメリカ人、ル・ジャンドルというのは、この事件の後明治政府に働きかけ、外交顧問として日本軍の台湾攻撃を強く主張していきます。この人物の前史としてみると、日本史と間接的に関連してもいます。

ここで表現された清朝末期の台湾は、台湾史を学ぶのに鮮烈なイメージを与えてくれました。

蘇卡羅

茶金

これも2021年に台湾で話題となった、お茶の産業という近代史をテーマにしたドラマです。日本軍が去って、中華民国の統治下にあるお茶産業の苦闘を描いています。物語には実際のお茶の企業のモデルがあり、舞台も新竹の北埔という実際にある街です。
台湾のお茶産業がそもそもは紅茶からスタートしていたこと、東方美人茶の由来など、現代につながるお茶の話題がとても新鮮でした。

また、このドラマでの主要言語は客家語です。台湾において客家の人々がどのように企業を運営していたのかその様子を見るのも興味深いです。
このドラマも多言語になっています。客家語、台湾語、中国語、日本語、英語が使われています。この言語の状況をきちんと表現しないと、ドラマが成立しないのですね。これは、翻訳してしまうと、全てのっぺらぼうに日本語になってしまうので、内容をきちんと理解できなくなってしまいます。難しい問題ですね。

茶金

Wikipediaの中国歴史ドラマリスト

中国の歴史ドラマのリストがありましたので、紹介しておきます。台湾ではとても安く中国ドラマのDVDが買えますので、僕はそうしていましたが、今はネットでこれらのドラマも見れるようです。興味があったら検索してみてください。


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