【台湾の地質環境】東海岸とフィリピン海プレート
日本列島の上に、フィリピン海プレートに載っている土地があります。それは伊豆半島。マグナフォッサ地溝帯に、フィリピン海プレート上の島が衝突した部分が伊豆半島で、その地殻変動を原因として富士山の火山活動が起きています。
台湾島は、日本と比べるとこのフィリピン海プレートの影響がとても大きな土地です。台湾にも伊豆半島と同じようにフィリピン海プレート上に載っている土地があります。それは、日本と比べるととても規模が大きい。東海岸の花蓮から台東に渡って横たわる海岸山脈がそれです。
フィリピン海プレートの乗り上げる土地
以前述べたように、台湾島はユーラシア大陸の下にフィリピン海プレートが乗り上げたためにできた土地です。そのために、台湾の東海岸の地形は特に急峻になっており、海岸沿いに1,000mの断崖絶壁が立ちはだかるというような、とてもダイナミックな景観を生み出しています。
そして、そのために台湾の地震の巣は東海岸、宜蘭から花蓮、台東にかけての土地の海岸沿いと沿岸部に集中しています。
西海岸で起こる地震は、頻度では東海岸より少なくなりますが,その分エネルギーが溜まったマグニチュードの大きいものになるのだそうです。
上記の様なプレート活動の境界線にあたる土地ですので、地形や地質構造、岩石層などに非常に特徴があります。そのため、台湾の東海岸はとてもダイナミックな景観に溢れています。
清水斷崖
宜蘭から花蓮にかけて、断崖絶壁の連なる風景が続きます。高さ1000mもの岩の壁が、実に20キロ以上も続いています。そのために花蓮という地区は日本統治時代になるまでは中央政府のコントロールが効かなかったそうです。まずもって、船がないと軍隊がここまで辿り着かなかった。そういう歴史的な風景も生み出しています。
太魯閣峽谷
花蓮の郊外にある有名な景勝地太魯閣峽谷も、同じ様にフィリピン海プレートの潜り込みによって作り出された景観です。清水断崖よりは内陸部になりますが、こちらも岩の谷間をくり抜いたような、危険でダイナミックな風景の景勝地です。
龜山島
宜蘭の蘭陽平原の沖合に龜山島があります。この島の形状はとても特徴的で、大地が大きく斜めに傾いている様な状態です。これは,実際にフィリピン海プレートの褶曲によって大地が歪み、その片方が崩壊している状態です。
この様な大地が歪み、斜めに傾いている様な山の形は、新北市から宜蘭にかけての山の中にあちらこちらで見ることがあります。
金瓜石
九份の少し奥に金瓜石という鉱山跡があります。この土地では、様々な特殊な鉱石が採取されることが有名です。清朝末期にはここで金が採れることが分かり、一時ゴールドラッシュの様な状態になったともあります。
この様な多様な鉱石が採れるのは、この地で火山活動が盛んなため、地下深くから多様な岩石が噴出してくるからなのだそうです。これも,東海岸におけるプレートテクトニクスの作用が原因になっています。
海岸山脈
概論的には上記の様なことなのですが、詳細に台湾の地層を分析していくと、花蓮から台東にかけて東海岸にある海岸山脈が、フィリピン海プレート上に載っていることが分かるそうです。台湾鉄道で花蓮から台東に向かうと、この海岸山脈の西側、地峡になっている部分を南下していくことになります。地理的には、まさにこの部分がユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界線になっています。
この部分に池上断層があります。これが実にユーラシアプレートと、フィリピン海プレートの境界面にあたります。この断層では驚異的なスピード(一日で1cm)で地層のズレが進行している様な場所もあるそうです。
この断層には、利吉層と呼ばれるプレートの境界面に現れる特殊な岩石層があり、これを分析することから海岸山脈がフィリピン海プレートになっているものと判断できるのだそうです。
変化に富む海底地形
Google Earthで台湾の地形を見ると、西側にはずっと遠浅が続いていて,この部分は氷河期には陸地であったという様な議論もあります。
それと比べると,東海岸の海底地形は地上部と同じで急峻です。海岸線近くで1,000mの深さになる部分もあるし,30mの沿岸で実に深さ4,000mとなる様な深海もあるそうです。
宜蘭の漁港大溪でアンコウを食べたことがありますが、この様な深海に住む魚は東海岸でしか採れないわけです。
東に偏った分水嶺
このように台湾では西側のなだらかな地形と比較して、東側の急峻な地形が特徴的です。それは、宜蘭から基隆の方に抜ける草嶺古道を歩いた時に如実に感じました。
宜蘭県と新北市の県境はとても宜蘭に寄った場所にあります。そのため、宜蘭側の斜面はとても急です。息を切らせながら急斜面を登っていくことになります。しかし、新北市側ではその同じ高さを何倍もの距離を使って降りていきます。ほとんど平地を歩くのと変わらない傾斜度です。
このルートを歩くことで、あらためて台湾の地形のことを考えるきっかけになりました。台湾の東側には宜蘭県、花蓮県と台東県が細長く繋がっています。それに比して西側にはたくさんの県があります。これは台湾島の分水嶺が基本的にとても東側に偏っているからなんですね。そのために行政の区分をこの分水嶺で行うと、東側の県は細長くならざるをえない。そのために南北に長い3つの県となっているわけです。
このようにフィリピン海プレートの衝突によって出来上がった台湾島は、東海岸に特徴的な景観を形作っています。