本屋さんが「減っている」と実感した日
先日、駅前の本屋さんでお買い物をしていたら、大声でお電話をしているマダムに遭遇しました。静かな店内に声が響いていたので、「聞いちゃダメだ!」と思いつつ、だいぶ中身を理解してしまいました。ごめんなさい……。
どうやらマダムには、買いたい本があったようです。でも、どの本かわからないため、お友達に質問をしているらしい。欲しい本の情報が、どうにも漠然としているのか、あれやこれやと質問を投げ合っているご様子でした。
目的の品に辿り着けないもどかしさわかりますよー、とうなずきながら、わたしも自分のお買い物に集中しようと思ったそのとき——。
「本屋さんが減っちゃって近くになくて……」
む。むむむ??
耳にフタをしようとしたら、マダムから本屋さんが減って困っている風なワードがぽんぽんっと出てきました。もしやマダムは、本を買うためにわざわざ駅前まで出てきたの……?
わたしが暮らす街の駅前は、栄えているようで廃れているため、駐車が難しかったり、道が入り組んでいたりと絶妙にハードルの高い場所です。そのハードルを超えてでも、マダムが本を買いに来たのだとしたら、猛烈に応援したくなりました。
その後もいくつか会話を交わし、なんとかご友人と電話を終えたマダム。目的の本が買えますようにと願いながら、わたしはふたたびお買い物に戻ったのでした。
今住んでいる街は地元でもなく、長らく暮らしている場所でもありません。だからもともと本屋さんの少ない街なんだと、不便に感じながらも当たり前だと思っていました。そのおかげ(?)か、今までなじみの本屋さんの閉店を見たことがありませんでした。どこかの本屋さんが閉店するニュースを見るたび、悲しいなとは思いつつ、手の届かない世界のお話のように感じていたのかもしれません。でも、マダムの声を耳にして、急に体温のある現実的な話なのだと実感しました。本屋さんのない世界線が、じりじり迫ってる。怖い……。
そもそも、今なお増え続けているお店ってどんなものなんだろう?身近な街で考えると、フィットネスジムと葬儀場と介護施設が増えている印象で、パン屋さんや飲食店は少し減ったかなあ?と感じます。
本屋さんに限らず、減ってしまったお店ってたくさんあるんだなと、今さらながら気づきました。ネットでなんでも買える時代だけど、わたしはやっぱりお店に行って、あれこれ触って見て考えたい。ひきこもり気味のわたしだけれど、なるべくお外でお買い物をしようと、マダムの声をきっかけに、しみじみ思ったのでした。
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