フィーリングッド
「おかえりひろや」
ピンクたちは待っていてくれた。
春が湖畔で待っていてくれる。
なんて素晴らしいことだろう。(千波湖 5時半)
短編小説の書き出しはこうだ。
『帰郷』
「おかえり」
湖畔のチューリップに声をかけられた。
「少し遅かったね」
葉桜が残念そうに言う。
その時気づいたんだ。
日の出の位置がずれていることに
月の中にもう一つ月があることに
アートタワーが東に少し傾いていることに。
僕はどうやら別な時空に来てしまったようだ。
昨日のことがどうしても思い出せない。
僕は京都発の東海道新幹線に乗っていた。
名古屋をでて、30分くらいたったころ
ワゴンサービスにピーナッツはあるか?と聞いた瞬間
世界は暗転した。そこまでは思い出せた。
気づくと僕はノースフェイスのランニングウエアで
ニーナシモンを聞きながら、千波湖を歩いている。
フィーリンググッド
でも これは今までの千波湖ではない。
風景に不思議な違和感を感じていた。
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