見出し画像

【現代詩】ナイフの作法

貴女は罪の告白をしなかった
小刻みに 肩は震えていたが
十分な復讐を果たせただろう
偽ハデスの隠れ家で落ち合い
多軟面体の船で冥界に旅立つ
溟海に溺れ死んだ子供の霊は
虚楽の小島に引き寄せられて
純白の水晶波が沖合で泡立つ
貴女は 陰獣に囚われたまま
ほら道化の心臓が捧げられて
イマージュの洞窟の闇果てて
幾千の鏡を岸壁に擦りつける
噴き出す瑠璃光の奔流より
真珠の壁が囲んだ手術室
ドラゴンは白昼に潜み 
ドーパミンの幻影を
定着させる北東の
ダゲレオタイプ
終わりが近い
反射体の
午後へ
流麗


追記

黄昏の群青は遠くからやってきて 君のナイフにキスをする 沈黙のちっ息 ただ雪の落ちる音だけを聞く
僕は 呟く ああ 待っていてくれたんだね そう わかる人にはわかる わからない人は、、、、、、、ロレツの回らぬ懸賞椅子 傷だらけの子猫にオレンジ色の光がさす 曇天がさっきから疼いて 儚さとは誰も知らぬこと 捨てた軍服に麝香を焚きしめて まどろみの凍結に涙した 涙した 涙した ヌーベルバーグのシネマのように 僕はつぶれた時計を首から垂らして 孤独な旅を続けるだろう(了)




いいなと思ったら応援しよう!