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伽草子を聴いた日 Vol.2

1973年。僕は毎週土曜日の夜だけが待ちどおしかった。その時間になると、心がそわそわして、ラジオのスイッチを入れた。
そしていつものテーマソングが始まる。

♪振り返ってみるのもいいさ~ 道草くうのもいいさ~
僕らの旅は果てしなく続く・・・

「気ままに歌を歌えたら、気ままに音楽を聴けたら、気ままな君の時間なのです。拓郎の気ままな世界、やってくれるのは、富士重工というところなのです!」

カセットのスイッチを入れてチューニングをノイズのないように会わせると僕は一つの音だって漏らさぬように、ラジオにかじりついてた。

「こんばんは!たくろうでーす。今日は伽草子というLPのデモテープをもってきました。」

音のおもちゃ箱みたいに、毎週、いろんな企画で飽きさせず、拓郎も本当に楽しそうだ。
そして、5月の半ば頃、金沢事件があって、急遽、番組は打ち切りになる。(不起訴になってもTBSは知らん顔だった!)僕らは貴重な情報源を失い、町をどこまでも彷徨い続け、日増しに目つきが悪くなり、ラジオをコンクリートの壁に叩き付け.....というのは少し、大げさだけど、とにかく伽草子のLPが発売されないのでは?という噂が流れ始め、気が気じゃなかった。
番組の中でも言ってたけれど、マスターテープが紛失して体調の悪い日に再度録りなおしたり、レコーディングメンバーに新六文銭のメンバーをクレジットしていたり、早く聴きたいのに~もお~ってな感じでね。
待ちくたびれて、いよいよ6月1日の発売日を迎える。授業を終えると、予約してあったレコード店にとんでいき、ポスターとレコードを大事に小脇に抱え、家まで、とんで帰る。
ジャケットを眺めながら、レコードに針を落とすと、1曲目の「からっ風のブルース」が流れ始めた。

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