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蕾の教育、花の教育、実の教育

蕾には蕾の、花には花の、実には実の教育があります。新緑には新緑の、真緑には真緑の、紅葉には紅葉の教育があるものです。蕾が実を真似てもうまくいきませんし、紅葉は様々に色づきますが、新緑時代の色だけは決してもち得ません。

若い頃、毎日昼休みに子どもたちとバスケットボールに興じていました。サッカーをすることもありました。いつの頃からでしたか、給食直後に運動をすると、脇腹が苦しくなってきました。こりゃ年だな……と感じ、昼休みは校舎内で過ごすようになりました。

その後も年齢を重ね、私は様々な教育技術を身につけ、生徒指導の勘所のようなものも心得るようになってきました。生徒たちに語る言葉も、学級や学年の運営も少しずつ洗練させていきました。

しかし、いまでも思うことがあります。あの頃、子どもたちとバスケットボールに興じながら、躰をぶつけ合いながら築いた人間関係、あの時代に得られた子どもたちとのつながりだけは、もう決して経験できる日はこないのだ……と。

ノスタルジーではありません。若いからこそ、体当たりだからこそできる教育というものが確かにあるのです。まさに「蕾の教育」であり、「新緑の教育」です。

しかし、大事なことがあります。蕾は蕾であることを、新緑は新緑であることを意識しながら仕事をしなければならない、ということです。蕾は自らが蕾であることを自覚し、いつか花咲かせよう、いつか実を結ぼうとの思いを抱くことは大切ですが、いまの自分が花や実の真似ができると思ってはなりません。

また、蕾はまだまだ新芽である子どもたちから見ればとても身近な存在に見えるものです。新芽にとって、花や実はまだまだ遠い存在ですが、蕾の段階はすぐそこにある、すぐそこまで来ていると感じています。それだけに留意すべきことも多いと言わざるを得ません。

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