〈HOW〉から〈WHY〉へと問い直す
「どうしたらあの子が立ち歩かなくなるのかしら…」
「どんな授業ならあの子が集中できるかなあ…」
「あの子が漢字を覚えられる何か良い方法はないだろうか…」
教師の悩みは尽きません。
一生懸命に考えて、いろんな方法を試してみたけれど、なかなか効果的な方法がありません。「あの子」は自分の手には負えないのではないか。ついついそんな愚痴をこぼしてしまいます。
でも、冒頭の三つの問いをもう一度見てみましょう。
どうしたら、どんな授業なら、何か良い方法は…。この三つの問いの共通点は何でしょう。
お気づきでしょうか。すべてが〈HOW〉の問いなのです。 〈HOW〉は方法を問う疑問詞です。「どうしたら良いか」の〈どうしたら〉は、決して子どもと結びついてはいません。自分の知っている方法、同僚に聞いた方法、本に書いてある方法、どんなに探してもその程度しか見つけられません。名人教師と呼ばれる人が成功したり、名著と呼ばれる本に書いてあったりした方法だとしても、その方法が自分の教室の「あの子」に適しているかはわからないのです。
では、どうしたら良いのでしょうか。それは〈HOW〉の問いを〈WHY〉の問いに変えてみるのです。
「どうしてあの子は立ち歩くのかしら…」
「なぜあの子は集中できないんだろう…」
「なぜあの子は漢字が覚えられないんだろう」
いかがでしょうか。
〈HOW〉を〈WHY〉に変えてみただけで、視点が「方法」から「その子ども自身」へと移るのがわかるはずです。「なぜ」と問うだけで、その子の外にある「教育方法」から、その子の内にあるその子特有の要因へと思考が向くようになるのです。
「なぜ」と問うだけで、その子を観察してみようと思えるはずです。「なぜ」と問うだけで、その子と話してみようと思えるはずです。「なぜ」と問うだけで、その子の保護者と話してみようと思えるはずです。
〈HOW〉から〈WHY〉へ。
教師の問いは〈WHY〉であるべきなのです。