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「書けば、人生、パッ変わる」 『おカネの教室』刊行2周年 高井浩章 特別インタビュー

お久しぶりです。新聞記者の高井〇章です。
2018年の秋に、他人とは思えないほどよく似た方にインタビューした。
すっかり忘れていたのに過日、唐突に「また取材してほしい」と依頼があった。
『おカネの教室』という本が出て3月16日でちょうど2年なので、記念インタビューを、という提案だ。
本人にとっては記念の日かもしれないが、世間の皆さまにはどうでも良いことだし、もう1年以上重版もかかっていないようだ。
記事になるとは思えないが、「どうしても」としつこいので1年半ぶりに話を聞いてみた。
案の定、とても新聞掲載に足るような内容にはならなかった。
「せめてnoteに載せたい」と縋りつかれたので、仕方なく公開を許した。
以下、記者としてのプロ意識では「水準以下」だが、ご紹介する。

「作戦通りですわ!」

--お久しぶりです。本、売れてますか。
「ボチボチだね。Amazonのランキング、毎日チェックしてるけど、調子が良いと2000~3000位まで行くから」

--(チッ……随分、横柄だな……取材慣れしやがって……)調子が悪いと?
「え……んー、2万位、とか?」

--そりゃひどいですね。
「いやいや、それは素人の浅はかさだよ。出して2年で常時5000位前後キープとか、奇跡だから。驚異のロングセラー!」

ーーその割に9刷で止まってますね。
「……9刷目の時にいっぱい刷ったんだよ! それにね、この本、Kindleでメッチャ売れてるから。1万部とか行ってるよ。驚異のヒット作!」

ーー(ふーん…)で、著者としては現状をどのようにお考えで?
「作戦通り! 息の長いロングセラーになるといいなと思ってたから。『あわよくば』と思ってた漫画化プロジェクトも始まってるし。ま、思ったより大変で、かなり苦戦してるけどね、漫画化……

ーー続編はどうするんですか。
「それはもう、正月に宣言しちゃったから。noteで年内に連載開始します。夏か秋か。時期は未定だけどね」

ーーそれはちょっと楽しみですね。なぜnoteに?
「実験、実験。面白そうでしょ、よくわかんないけど。とにかく、この本は『名刺』で『おもちゃ』だから。高井浩章さんの」

「『個人名義』の出会いが増えたんだよ」

ーー「名刺」で「おもちゃ」ですか。何となく分かりますけど、「名刺」の方からご説明願えますか。
「新聞記者って『名刺』の威力がすごいでしょ。取材となれば、首相だって、ノーベル賞受賞者だって、アイドルだってアポが入る」

ーーまぁ、そうですね。口実作りと社内の調整は必要でしょうが。
「でも、それって大半のケース、メディアというか会社の看板であって、個人の力じゃないよね。よほど食い込んだ取材先じゃないと、例えばフリーになって同じ人にアポが入るかと言えば、厳しいかなって思わない?」

ーーでしょうね。
「でしょ? それがね、1冊出しただけでも、『高井浩章』って個人の名義で会ってくれる人が広がったんだよ。これが楽しい」
「特に、ああいう本だから若い人との交流が増えたのがほんと楽しい。文学YouTuberのベルさんとか、東大生ベストセラー作家の西岡壱誠さんとか、『コルク荘』の漫画家さんたちとか。この前も西岡さんが『スマホ学園』なんて面白い企画に呼んでくれて、杏仁豆腐までご馳走してくれて」

ーー(煙たがられてるんだろうなぁ……図々しい性格、羨ましい……)ほかにその「個人名義」っていうのはどんな方面に?

「出版社やウェブメディアの人たちから、本業と全然違う原稿の依頼や企画で声かけてもらえるのが、嬉しいね! 兼業だからキャパシティの問題もあって新潮社フォーサイトのマンガコラムと光文社の『本がすき。』の書評だけやってるけど、他にも『書いてみません?』ってありがたいお話はちらほらあって、有難いことです」
「単発だけど、『小説すばる』にエッセイ書かせてもらったのはメチャクチャ嬉しかったなー。マンガコラムと書評、バックナンバーはnoteに転載してあるから、読んでみてよ」

ーーなるほど。名刺の意味はわかりました。
「『名刺の大きさ』で言えばね、『高井浩章』って、Google検索すると4万件ぐらいヒットするのよ。ま、それはそれでショボいんだけど、本名だと400件だからね」

ーー100倍の差ですか。しかし、それだけ手広くやって、本業がおろそかになりませんか。
「それはないね」

ーー即答ですね。
「仕事と全然違うでしょ、テーマとかテイストが。もともと文章書くのがストレス発散になる人間だから、ちょうど良い感じ。むしろおろそかになってるのはプライベートだね

ーーお。家庭崩壊系の話ですか。
「いや、ビリヤードの腕が落ちてる。行けなくてねー、なかなか」

ーー(…どうでも良すぎる…)そんなに原稿書いてるんですか。
「noteにね。だって、もう60週以上、連続投稿してるんだよ? フォロワーも1万3000とか信じられないほど増えちゃって。ウッキウキですわ」

--うーん。noteって、ピンとこないんですよ。なんか意味あるんですか。
「あー、分かってないね。何にも、分かってない

「noteから広がるんだよ、世界が」

ーー(なんだコイツ…)ごめんなさい、何が分かってないんですかね。
「例えばね、この2つのnote。これ、本になる予定なのよ

ーーへえ! こんな育ちの悪さ自慢みたいな露悪的なのが?
「なに言ってんのよ。これ読んで、元祖『ヒルビリーエレジー』の邦訳を担当した編集者さんが、『日本版、行きましょう!』って誘ってくださったのよ? ま、まだ酔った勢いで請け負っただけで1行も書いてないけど

ーー読解力がどうこうってのは、ちょっと気になりますね。
「こっちが先だね。某社の編集さんと具体的に詰めてるところ。その方、詳細は伏せるけど、つい最近、超メガヒット飛ばした敏腕編集者だから。大船に乗ったつもりで丸投げしようと思ってる

ーー(そんなのボツられるんじゃないか……)noteでなにか良いことって他にありましたか。
「最近だと、田中泰延さんと繋がったのが愉快な体験だったかな。『読みたいことを、書けばいい』を書いたツイッタランドのプリンスね」

ーーあの本は読みました。「書くこと」に向き合う姿勢が随分違いますよね、あなたと。
私は締め切りは絶対守るしね。四半世紀で破ったこと、一度もないから。それはともかく、田中さん、このnote読んでくださって、そのうち飯か酒でも、ということになってて。大阪は若い頃、4年住んだ街だから、タカりついでに遊びに行きたいなー

「書けば、人生なんて、パッ変わる」

ーー大阪、いい街ですよね。私、「天六」の「釜山屋」って韓国料理屋のチヂミが好きで。
「お! アナタ、そっちは分かってるね! あそこ、参鶏湯もいいよねぇ。ところで、『読みたいことを、書けばいい』は、読みました?」

ーーはい、立ち読みで。
「あのさ……ま、確かに立ち読みできちゃうよね、あの本。でもね、田中さんにも生活があるのよ? ま、いいや。あの中で、田辺聖子さんと親交があったって下りがあるじゃない?」

ーー確か飲み友達で親しくされてた、とかそんな話でしたよね。
「そうそう。そのエピソードでさ、田辺さんが『書けば、人生なんか、ある日、パッと変わるんや』といつも言ってたって書いてあるのね。で、実際、ウェブの映画評論から始まって、書くことで人生変わったワケじゃない、田中さん」

ーーそんな話でしたね。
「あれ、ホントだね。1冊書いたら、変わったもんね、人生。超真面目な原稿だけ書いてた新聞記者さんが、別人格のペンネームでアレコレ書いて、信じられないくらい多くの人に読んでもらって。人生、パッと変わった

ーーもう会社辞めちゃおう、とか思います?
「いや、それはない。食えないよ、物書きじゃ」

ーーそうなんですか?
「無理、無理。そこまで思い上がってないよ。そんな実力ないから、高井浩章さん。それに、これは『おもちゃ』だから面白いんだよ。生活かかっちゃったら、病みそう

ーーでは、今後も「公」と「私」を分けていくスタイルで行くおつもりですか。
「それ、ちょっと違うかな。『公』と『公・その2』と『私』の三分割だね。本業の記者は、いわば『やるべきことをやるプロ』なんだよね。お給料をいただく分、プロとして恥ずかしくない仕事をします」
「副業の物書きが『公・その2』だって言うのは、こちらもプロ意識をもって真剣にやってるから。でもね、こっちは楽しいことしかやらない。自分が面白いと思うことだけ、やる。真剣に遊ぶ『おもちゃ』だから」

ーーなるほど。ちょっとエエこと言ってる気になってますね?
「いや、実際、エエこと言うてるじゃない」

ーーでは、伺いますけど、「私」には何が残ってるんですか。
「それは……ビリヤード、かな」

ーー……最近のアベ、いくつ?
「え!? アベって……あ、内閣総理大臣の!?」

ーーとぼけてんじゃねーよ。ここ1カ月のベストスコアは?
「最高、17点、かな?……アベは500切ってる……400はキープしてると思うけど……」

ーー持ち点25だっけ?
なんでそんなことだけ覚えてんの?

ーー恥を知れよ。アベ400とか。
「いや、去年の夏にぎっくり腰やってさ、ブランクが……。でも、努力はしてるんだって! 今日だって、あの『世界の小林』の弟子で高井さんの師匠でもある某プロと、今の行きつけの店のオーナーの某プロ、高井さんの3人でおでん食べに行くんだよ!」

ーーふーん。プロとおでん食えば、球、当たるわけ?
「いや……イメージトレーニングって言うか、座学って言うか……」

ーーあのさ、スリークッションは遊びじゃねーんだよ。なめんなよ。
「……はい……」

ーーとりあえず、今週中に初球100本ノックな。
「え……。いや、ちょっと仕事が立て込んでて……」

ーーどうせnote書いてるだけだろうが。暇と欲望に任せて。
「………」

ここで高井浩章氏は逃げるように立ち去った。
そんな性根だから、万年25点選手なのだろう。

以上、ご覧のように、インタビューはコンテンツとして成立しなかった。
お詫びと言ってはナンだが、『おカネの教室』は現在、インプレスのサイト上で無料公開されているので、リンクを貼っておく。
「刊行2年を記念して」というのは口実で、どうやらnoteにあるように、一斉休校に便乗した売名行為のようだ。
まさに「名刺」をばらまいているわけだ。食えないオッサンだ。

再び高井浩章氏にインタビューする機会があるかは、分からない。
来年の今頃、「そろそろ3周年なんですよ!」とシレっと売り込みが来そうな気はするが。

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