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超簡単 Kindle個人出版 「おカネの教室」ができるまで⑫

友人・知人へのリサーチでKindleでの個人出版を決めた後、早速、Kindle Direct Publishing(KDP)について調べてみた私は、拍子抜けした。
あまりにも簡単なのだ。
基本的に、Amazonのアカウントを持っていれば、
①ロイヤリティー受け取り口座設定
②コンテンツのアップロード
これだけでKindleストアに参入できる。
①は初回の登録時のみなので、2冊目以降は、原稿さえあれば本当に「あっという間」に出てしまう。
しかも、有名作家だろうが、無名のアマチュアだろうが、同列にストアに並ぶのだ。あらためて、すごい時代になったもんだ、と思った。
私の所属する会社では、個人著作物を出版する際にアレコレと社内調整が必要で、これが実に面倒くさいのだが、特殊ケースなので割愛する。

原稿は知人にばらまく段階でWord形式で整えてあった。追加作業は目次を整えるぐらいだ。Wordの機能を拾ってKindle上のリンク形式の目次まで作ってくれる。あとは巻頭の「本作品はフィクションです」といったテンプレや巻末のプロフィルを足した程度で、テキストの準備は数時間で終わった

表紙が命

時間をかけたのは表紙である。
Kindleストアの個人出版作品をいくつか見て回り、「表紙が手抜きっぽいと、絶望的に読む気が起きない」という思いを強くした。当たり前だが、商業出版の表紙との出来の違いは、小さなサムネイルでも歴然としている。「おカネの教室」の場合、タイトルを変えるつもりはなかったので、表紙のデザインはそれなりに整えたかった。

ちなみに私は、かなりの本を「ジャケ買い」する。
もう少し細かく言うと、表紙を手掛かりに手に取り、「作り」を点検する。小説なら活字の組み方や内表紙、章立てのデザイン、ノンフィクションなら写真・図版の配置、そして何より索引・注記・引用文献の充実度を見る。文章はほとんど読まない
長年の経験で「作り手=作家と編集者が本気で『読ませたい』と思って作った本はお値段以上の価値がある」という強い確信がある。たとえそれが自分が全く興味のない分野でも、この方式で「当たり」を引く打率は体感で9割を超える。
例えば、このスティーブン・ピンカーの「暴力の人類史」は、作者の信頼性もさることながら、表紙、図版、下巻の索引まで文句なしの丁寧な作りで、即座に上下巻を抱えてレジに向かった。ジャケ買いのときは値段も見ないので、支払いが2冊で9000円を超えてちょっと驚いたのをよく覚えている。

(邦題だけいただけない。原題は The better angels of our nature でサブタイトルは Why violence has declined と印象が真逆。でも、お値段以上)

見た目が9割?

さて表紙である。自分なりのイメージはあった。まず最初に作ったものをみてもらおう。

(ちなみに表紙の作業はiPadのアプリibis Paintでやった)

最初のは、これの「帯無し」バージョンだった。この当初案は表紙のアートディレクターとなった長女から「平板で地味すぎ。読む気起きない」と完全なダメ出しをされた

そしてこれが長女の指導のもとでできたKDP版の最終バージョン。

(残念ながらKDP版は新規配信停止中です)

長女のご指導があったのは、

・もっと教室っぽい写真にする
・推薦文付きの帯をつける
・文字は少なめにする

といったあたりだった。
アドバイスを生かし、ネットで探して300円で写真を買った。長女がデザイン全般と色使い、私が文言と題字(iPadの黒板アプリで指書きした)を担当し、あれこれ試行錯誤して丸1日で仕上がった。
推薦文は出版を相談した知人2人にお願いした。

この表紙は、長女も私も「会心の出来」とかなり気にいっている。
たとえば「この世にお金を…」という2行の文は、のちの商業出版の際にもほぼそのまま帯で使っている。
リリース後にストアで並んでいるのを見ても、少なくとも「顔」は商業出版含めて偏差値50以上は取れていたと自負する。これはヒットにかなり貢献したのではないかと思う。投入費用は写真と黒板アプリ、あわせて500円ほどだったが

と気分よく書いてきたわけだが。
今、ふと気になって「野ブタ。をプロデュース」で画像検索したら、ものすごくそっくりな表紙が出てきて、ものすごく驚いている…
当時、これが記憶の底に引っかかっていて「教室の黒板にタイトル入れよう」と思いついたような気がするが、検索などはしなかった。無意識とはいえ、これは…。
タイトルだけじゃなく、表紙もパクっていたのかと、自分の脇の甘さの冷や汗をかいている…。みなさん、検索しないでください。

ともあれ、表紙を含めてコンテンツは整った。
ペンネームは本名から1文字変えて適当につけてしまった。
最後に残ったのは価格設定なのだが、このあたりは次回に譲る。

2017年3月5日のロンドン時間午前0時ごろ、すべての準備が整い、私はKDPの著者管理サイトの「発売する」をクリックした。
すると、
「審査後に販売されます。通常は24~48時間以内に審査は終わります」
といった趣旨のメッセージが出た。
「明日か明後日には出るってことね」
私は「ついに、やっちまったなー」と思いながら、ベッドに入った。

その晩、寝酒のせいか、私は夜中の3時前に小用に立った。
ふと寝ぼけ眼でスマホで検索してみると、Kindleストアにはもう「おカネの教室」がリリースされていた。

「おい、いくらなんでも、簡単すぎんだろ!」

笑いと驚きで目が覚めてしまった私は、階下に降りてエールの栓を空け、一人で乾杯した。

こうして家庭内連載の「変な本」は、ひっそりと世に出た。

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ご愛読ありがとうございます。
次回は、⑫サクラレビューの真実、です。

乞うご期待!


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高井宏章
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