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「もうひとつの戦場」とロシアの苦境(無料記事)

今日の気になったニュースはこちら。

利上げを続けるロシア中銀に対して、企業や政治家が「いい加減にしてくれ」と不満を溜めており、中銀の政策に政府がブレーキをかけられるようにしろ、という声が高まっている、というお話。
見出しに「タカ派のロシア中銀」とある通り、バンバン利上げしてます。こんな感じ。

グラフはchatGPT君に描いてもらいました。やればできる子。
なのですが、サムネはダメダメですね。「ウクライナ周辺の地図をシンプルな線画で」と指示したら、西部・北部がロシアとベラルーシもどきに割譲されている。まだまだできない子です。月20ドルだから手を抜かれてるのか?Proに誘導する作戦?

閑話休題。
この記事は地政学的視点からも、金融史的視点からも、メチャクチャ面白いわけです。
リアルな前線ではウクライナが押されてますけど、マーケットの前線ではロシアも青息吐息なのが分かる。ざっと解説します。出先からスマホで一筆書きなので乱文ご容赦(サムネもグラフもスマホアプリでお願いしてます)。

止まらぬルーブル下落

ロシア中銀が反感を買いながら利上げを続けているのは通過ルーブルの下落が止まらないからですね。

久しぶりに対ドルで100ルーブルの節目を突破してます。
ルーブル安のせいで輸入物価が跳ねて、インフレが止まらない。このツイートなんかが参考になるかと。

ロシア中銀のインフレ目標は4%なんですけど、現状は9%くらい。2桁超えそうです。そりゃ、利上げするだろう、と。
でも、金利が20%ってのはメチャクチャキツいわけです。記事中にはロシア企業の税引き前利益の24%が利払いに消えている、というデータが出てます。おそロシア。

これは経済的には詰んでます。
政財界の声を反映して中銀の中立性に傷をつければ、ルーブル下落は止まらず、もっとインフレが進む。ツケ払いを後に回すだけじゃなく、下手すると払い切れないツケになってしまうリスクがある。

ロシアは過去、1998年、2008年、2014年、2022年と通貨・財政危機に直面してます。直近2回と今回のは、ウクライナ問題の余波です。
問題は今回がどれほどヤバいか、です。
先ほどのルーブルのチャートと政策金利をもう一度見てください。ウクライナ侵攻着後のルーブル急落&急激な利上げと今は相似形ですね。ここから発散すると、1998年や2008年のような事態が起き得る。瀬戸際です。
私の目には、2022年よりはるかに状況は厳しいと映ります。
主要な稼ぎのエネルギー相場が当時より安い。貿易パートナーの中国などの景気が悪いし、欧州とは一段と縁が遠くなっている。国内は戦時経済シフトで需要はあるけど、壮大な無駄遣いなので自転車操業が止まればどうしようもない。八方塞がり。
そして、もし1998年や2008年ような事態になった場合、今回は誰も助けてくれない。西側はもちろん、中国にも余裕はないですからね。
大量の兵士を犠牲にして攻勢をかけて、北朝鮮まで巻き込んで、地上ではロシアの優勢が明らかです。でも、ウクライナ軍がすぐに崩壊することはない。
一方、ロシア経済は向こう半年とか、1年、2年くらいで完全にアウト、となるリスクをはらんでいる。

これだけヤバいと、トランプさん再登板を好機に、早いところ停戦しないと、という方向にロシアが傾くかもしれないですね。
あるいは、このリスクに気づいているウクライナやEU側が粘って、ロシア経済が一段と弱るのを待つという戦略に出るかもしれない。

これからはルーブル相場を「もうひとつの戦場」として見ておいた方が良い。

最後に「ルーブル下がって大変だな」と思って何気なく見てみたチャートを置いておきます。

ルーブル、対円だとあまり下がってないです。というか、ロシア並みに売られてる円って、大丈夫?

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