【健康と病気と病因の違い】中医基礎理論

今回は中医学における健康と病気と病因の違いについて解説していきます。

中医学における「健康」「病気」「病因」の解説

1. 健康とは

中医学では、健康は単なる身体的な問題ではなく、自然と人体(心と体)の全体的な調和を重視します。この調和は、次の4つの要素が相互に影響を与えながら、適切に機能している状態を意味します:

  1. 陰陽

    • 万物の基本原理として、「陰」と「陽」の相互関係が人体の調和を保ちます。

    • 陰陽のバランスが保たれていることが、生命活動の基盤です。

  2. 気血津液

    • :生命活動のエネルギーであり、臓腑や経絡を動かします。

    • :全身を巡る栄養成分であり、心と密接に関係します。

    • 津液:体液全般を指し、潤いと代謝を担います。
      これらが十分かつ調和していることが、健康維持の鍵です。

  3. 臓腑

    • 五臓六腑(心、肝、脾、肺、腎、および対応する六腑)が正常に働いていることが必要です。

    • 臓腑は、気血津液を生成・運搬し、全身を調和させます。

  4. 経絡

    • 気血が全身を巡るための通路。

    • 経絡が滞らず通じている状態が健康の基盤です。

健康とは、これらの要素が調和し、心と体が自然界との相互作用の中で平衡を保つことです。
※つまり健康な人はほぼいません。

2. 病気とは

病気は、健康状態が崩れた結果として発生します。中医学的には以下の状況が病気を引き起こします:

  1. 自然とのバランスの乱れ
    自然界の影響(気候、食生活、感情など)が人体に悪影響を及ぼし、心と体の調和が乱れる。

  2. 内部の調和の乱れ

    • 陰陽、気血津液、臓腑、経絡のバランスが崩れると、生命活動に支障をきたします。

    • 例:陰陽失調、気滞(気の流れが滞る)、血瘀(血の流れが滞る)、津液不足など。

  3. 自然回復能力の限界

    • 軽微な不調(例:疲労や風邪など)は通常、休息や適切な食事で回復可能ですが、それが持続し慢性化する場合は病気とされます。

  4. 未病との違い

    • 未病:体内に軽微な不調がある状態。未病段階では、適切な調整を行えば回復可能。

    • 病気:調整しても自然回復が困難で、明らかな症状が持続する状態。

3. 病因とは

病因とは、人体に疾病を発生させる直接的・間接的な原因のことを指します。中医学では、病因を以下のカテゴリに分類します:

  1. 外因(外部環境による影響)

    • 六淫(風、寒、暑、湿、燥、火):外界の異常な気候条件が体に悪影響を及ぼします。

    • 例:寒邪による風邪、湿邪による関節炎。

  2. 内因(内部環境による影響)

    • 七情(喜、怒、憂、思、悲、恐、驚):感情の変化が五臓六腑の調和を乱します。

    • 例:怒りは肝に影響、悲しみは肺に影響。

  3. 不内外因(外因・内因以外の要因)

    • 過労、栄養不足、外傷、不適切な生活習慣など。

    • 例:長時間労働による腎精の消耗。

4. 未病の概念

中医学の特徴的な概念である「未病」は、次のように理解されます:

  • 病気と健康の間の状態で、軽微な不調が見られる。

  • 未病の段階で予防・調整を行うことが重要であり、これが中医学の治療と予防の核心です。

  • 例:不眠、倦怠感、軽い頭痛などが未病に該当。

5. 中医学における治療と予防の視点

  • 未病を治す:病気が本格化する前に、生活習慣や食事、感情の調整を行う。

  • 既病を防ぐ:既に病気が発生している場合、病因を取り除き、病気の進行を防ぐ。

  • 全体調和の回復:治療の目的は、体内外の調和を再構築することです。

中医学的思考のまとめ

中医学では、健康を維持し、病気を予防・治療するためには、「自然」「心」「体」の調和が最重要です。陰陽や気血津液などの概念を使い、病気の原因を探り、調和を回復することで全人的な健康を目指します。

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