【疑問 気血津液・経絡系統・子午流注 】中医基礎理論
今回は気血津液・経絡系統・子午流注に関しての疑問についてまとめました。
五臓に宿る「神」とは?
中医学では「五臓神」という概念があり、五臓それぞれに特定の「神(しん)」が宿っていると考えられます。これは、五臓と精神・意識の働きを結びつける考え方です。
肝(かん):魂(こん)を宿すとされ、精神活動や情緒、特に怒りに関連します。肝が調和していると積極性が養われ、感情も安定しやすくなります。
心(しん):神(しん)を宿し、意識、知覚、精神活動全般を司ります。心が健全であると、安らぎや喜び、精神の明瞭さが保たれます。
脾(ひ):意(い)を宿し、思考や集中力を支えます。脾が弱ると、集中力や記憶力が低下しやすく、憂いが生じやすいとされます。
肺(はい):魄(はく)を宿し、本能や肉体の感覚に影響を与えます。肺の調和が崩れると悲しみが強まりやすく、呼吸や気の巡りが乱れることがあります。
腎(じん):志(し)を宿し、意志や記憶力、耐久力を支えます。腎が弱まると「志」が薄れ、意志力や記憶力が衰えるとされ、年齢を重ねるにつれて腎の気が減少し、記憶力や忍耐力の低下がみられやすくなると考えられます。
このように、五臓が「神」を宿すことで、心身における精神的な安定と肉体の健康が保たれるとされます。
経穴と十二経脈の関係
経穴(けいけつ、ツボ)は、十二経脈の上に並んで存在する重要なポイントで、気血の流れを調節したり、体内の臓腑や気血にアクセスするための「開口部」とも考えられます。経穴は人体に361か所以上あり、それぞれが特定の臓腑や経脈に関係し、痛みを緩和したり、気血の流れを促すための施術点として利用されます。
経穴の場所は体表にあるため、鍼や灸によって刺激することができ、各経穴を刺激することで特定の臓腑や経絡の働きを活性化させ、体内のバランスを整える効果があると考えられます。
経絡名に含まれる「陰陽」と三陰三陽の概念
「手の太陰肺経」や「足の少陰腎経」など、経絡には「陰」や「陽」の名が含まれますが、これは経絡にも陰陽の性質が備わっていることを示しています。また、陰陽の強弱は「三陰三陽」として分類され、以下のように定義されます。
陰の強さ:
太陰(たいいん):最も陰が強い
少陰(しょういん):中程度の陰
厥陰(けついん):最も陰が弱い
陽の強さ:
太陽(たいよう):最も陽が強い
陽明(ようめい):中程度の陽
少陽(しょうよう):最も陽が弱い
これらは人体の部位や経絡ごとのエネルギーの質や流れの特徴を示し、例えば「手の太陰肺経」は、手に位置し、陰の強さが最も高い経絡であることを表しています。この陰陽の分類により、各経絡が人体においてどのような役割を果たすかが理解しやすくなります。
子午流注が肺から始まる理由
子午流注は、経絡が1日に24時間を通じて順に活性化し、気血が巡るという考えに基づく時間のサイクルです。経脈の流れが肺経から始まる理由については、五行思想と関連しています。
五行と時刻の関係:子午流注では、1日の始まりを陰陽の「寅」の刻に置き、この時間に対応する経絡が「肺経」であるとされます。
肺の「宣発収斂」作用:肺は「気を巡らせる」臓器とされ、全身の気血の流れをスタートさせる臓腑であるため、肺経から始まることで気が体内に循環しやすくなります。
五行の「木」:1日の始まりを象徴する五行の「木」は、成長や発展のエネルギーを持ちます。肺経がスタートとなることで、1日の活力が始まるという意味を持つと解釈されます。
ただし、子午流注の流れには学説によって異なる解釈も存在し、必ずしも一律ではありません。例えば、一日の始まりを「子の刻」からとする見方もあります。
経絡に流れる「気血」と「津液」について
経絡に何が流れているかについては、「気血が流れる」と記述するものもあれば、「気血津液が流れる」とするものもあります。この違いは、中医学の文献や著者の解釈により異なります。
気血:多くの文献では、経絡を「気血」が流れているとされ、気血は体内のエネルギーや栄養を象徴します。
津液(しんえき):一部の解釈では、津液も経絡に含まれるとされます。津液は体液や栄養素の流れを示し、気血と同様に体内で重要な役割を果たします。
実際の解釈:経穴に針を刺しても出血しないため、「血」は経絡内に直接流れているわけではないという見方もありますが、血液のような働きはあると考えられます。経絡や絡脈、毛細血管などすべてを含めて解釈すると、気血津液が体内を流れているという考えも妥当とされます。
夜勤や昼夜逆転と子午流注のサイクル
子午流注のサイクルは自然のリズムに基づいているため、夜勤や昼夜逆転の生活をしている場合でも、子午流注のサイクル自体は変わりません。しかし、生活リズムが大きくずれると、身体の経絡の気血循環に影響を及ぼし、不調が生じやすくなる可能性があります。例えば、昼夜逆転の人は本来活動すべき時間帯に休むことになり、気血の流れが乱れることで、消化器系や免疫系に影響が出やすくなります。
子午流注の読み方について
「子午流注(しごりゅうちゅう)」と「子午流注(しごるちゅう)」はどちらの読み方も存在し、どちらも中医学では受け入れられています。「りゅう」は音読み、「る」は漢語読みであるため、「しごるちゅう」がより正確な読み方とされますが、特に使い分けについて厳密な区別はないため、一般にはどちらも使われています。
経絡の概念発見の経緯
古代中国では、医師たちが長年にわたり病人の観察を通じて経絡や気血の流れの存在を理解しました。当時は多くの患者の観察をもとに、治療効果を逐一確認し、その結果を集積していくことで、経絡に関する説が徐々に形成されました。実験や観察が繰り返された結果、身体の気血の流れを示す経絡の概念が生まれ、現代まで伝えられています。