【発汗と気の関係】中医基礎理論

今回は発汗異常と気の関係について調べてみました。発汗異常は、肺の宣発機能と深く関連しており、それはさらに衛気(えいき)の働きとも密接に関係しています。以下に、その詳細を説明していきます。

1. 衛気と発汗の関係

(1) 衛気の役割

  • 衛気は、中医学で体の表面(皮膚や筋肉)を保護し、外邪(寒邪・風邪など)の侵入を防ぐ防衛機能を持つ「気」の一種です。

  • また、体温調節や汗腺の開閉を管理することで、発汗をコントロールする重要な役割も担っています。

  • 衛気がしっかりしている場合、体表を適切に守り、汗腺の開閉を調整して、適切な発汗を維持します。

(2) 肺と衛気の関係

  • 肺は「気を司る」臓腑であり、衛気の生成や運行を支える役割を持っています。

  • 脾胃が作る水穀の精微を基に、肺が衛気を生成・散布します。

    • 肺の宣発機能によって衛気は全身に広がり、皮膚を保護するとともに発汗を調節します。

  • 肺の気が不足すると、衛気の生成や運行が滞り、その結果、発汗の異常が生じる可能性があります。

2. 発汗異常のメカニズム

(1) 肺の宣発機能が不調 → 衛気が不足 → 発汗異常

  • 肺気不足:

    • 肺の気が足りないと、衛気を全身に行き渡らせる力が弱まります。

    • その結果、汗腺の開閉が不適切になり、発汗異常が起こります。

      1. 汗が出すぎる(自汗):

        • 衛気が不足し、汗腺の閉じる機能が弱くなるため、日中の軽い動作でも汗が止まらなくなる。

        • 衛気の不足が、特に体表での防御力を弱め、体のエネルギーが漏れるように感じられる。

      2. 汗が出ない(無汗):

        • 宣発機能が著しく低下し、汗腺を開ける力が不足すると、汗が出なくなります。これにより、体温調節がうまくできなくなる。

(2) 肺気不足以外の原因

  • 陰陽のバランス失調:

    • 体内の陰陽バランスが崩れると、発汗にも影響が出ます。

      • 陰虚 → 夜間の盗汗(寝汗)。

      • 陽虚 → 無汗(汗が出ない)。

  • 外邪の侵入:

    • 衛気が不足している場合、外邪が体表から侵入しやすくなり、発熱や悪寒とともに発汗異常が起こることがあります。

3. 具体例

(1) 肺気虚による自汗(じかん)

  • 症状:

    • 少し動いただけで汗が出る。

    • 疲れやすい、倦怠感、息切れを伴う。

  • 原因:

    • 肺の気が不足し、衛気が弱まり汗腺の閉じる機能が低下する。

  • 治療法:

    • 補肺益気(ほはいえっき):

      • 肺気を補い、衛気を強化する。

      • 漢方例: 玉屏風散(ぎょくへいふうさん)。

(2) 肺気不足による無汗

  • 症状:

    • 暑いのに汗が出ず、体温調節がうまくいかない。

    • 皮膚が乾燥し、熱がこもる感覚。

  • 原因:

    • 宣発機能の低下により、汗腺が開かず汗が出ない。

  • 治療法:

    • 宣肺解表(せんはいげひょう):

      • 肺の宣発機能を促進し、汗腺を開く。

      • 漢方例: 麻黄湯(まおうとう)。

(3) 衛気不足による盗汗

  • 症状:

    • 夜間に汗をかく(盗汗)。

    • 日中は問題がないが、寝汗で目が覚める。

  • 原因:

    • 衛気が不足し、夜間に体温調節がうまくいかなくなる。

  • 治療法:

    • 益気固表(えっきこひょう):

      • 気を補い、体表を強化して汗の漏れを防ぐ。

      • 漢方例: 牡蠣散(ぼれいさん)。

4. まとめ

肺の宣発機能と衛気は、発汗調節において密接に関係しています。

  • 肺の気が足りない → 衛気の生成・運行が弱まる → 発汗の異常(自汗・無汗・盗汗)。

  • 発汗異常がある場合、肺の機能だけでなく、衛気の状態や陰陽バランス、さらには外邪の影響も総合的に考える必要があります。

適切な治療には、肺気を補い、衛気を強化しつつ、発汗の調節を図る方法が効果的です。日常生活では、肺の健康を維持するために呼吸法や食養生(生姜や大根など肺を温める食材の摂取)を心がけるとよいでしょう。

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