【子宮筋腫・子宮内膜症の原因】中医婦人科学

中医学的視点から見る子宮筋腫・子宮内膜症の原因と詳細解説

1. 子宮筋腫・子宮内膜症の形成要因

中医学では、子宮筋腫や子宮内膜症の形成は、気血の滞り体内の虚弱な状態と深く関連しています。これらは以下の3つの主要因が相互に作用して発生します。

1.1 気滞(きたい):気の流れの滞り

  • 原因

    • 七情内傷(感情の影響)

      • ストレス、怒り、憂鬱などの感情が肝の疏泄機能を損ない、気の流れが滞る(肝気鬱結)。

      • 長期間の気滞が血の流れを悪化させ瘀血(おけつ)を生む。

    • 環境要因

      • 長期間の緊張や不安による自律神経の乱れも影響。

  • 影響

    • 気滞により子宮周辺の気血の循環が悪化。

    • 瘀血や痰湿が生じ、子宮筋腫や内膜症の形成を助長。

  • 症状

    • 下腹部の張り感、月経不順。

    • 胸の苦しさやイライラ。
      ※悪化すると気滞瘀血 に

1.2 瘀血(おけつ):血の滞り

  • 原因

    1. 月経期や産後の余血(余った血)が体内に残留。

    2. 月経期や産後の性交渉により、外邪(風寒湿)が子宮に侵入。

    3. 寒邪の侵入

      • 月経中に冷たい飲食物を摂取、寒冷環境で過ごす。

      • 子宮が「開いている」時期(月経中や産後)は特に注意が必要。

  • 影響

    • 血流が悪化し、塊(癥)が形成される。

    • 子宮筋腫や内膜症の主因として瘀血が存在。

  • 症状

    • 瘀血の三大特徴:「痛む・しこる・黒ずむ」

      • 痛み:月経痛、下腹部痛。

      • しこり:子宮筋腫のような固まり。

      • 黒ずむ:月経血が暗赤色で血塊が多い。

1.3 痰湿(たんしつ):余分な水分の停滞

  • 原因

    • 脾腎陽虚(脾と腎の陽気の不足)

      • 脾の運化機能(消化吸収の役割)が低下し、水分代謝が悪化。

      • 体内に湿が蓄積し、痰湿が生成される。

    • 不適切な生活習慣

      • 冷たい飲食物、脂っこい食事の過剰摂取。

  • 影響

    • 痰湿が子宮周辺に滞留し、瘀血と結びついて癥瘕(ちょうか)を形成。

    • 子宮筋腫や内膜症の病変がさらに悪化。

  • 症状

    • 下腹部のだるさ、膨満感、肥満傾向。

    • 手足の冷え、むくみ。

2. 子宮筋腫・内膜症に影響する生活習慣と要因

2.1 月経期や産後の注意点

  • 月経期

    • 子宮が「開いている」状態のため、外邪(風寒湿)の侵入を防ぐ必要がある。

    • 冷たい飲食物や寒冷環境は瘀血や寒邪を助長。

  • 産後

    • 産後は気血が不足しがちで瘀血が形成されやすい。

    • 十分な休養を取り、体を温めることが重要。

2.2 七情(感情)の影響

  • ストレスや感情の抑圧が肝の気を滞らせ、気滞を引き起こす。

  • 肝気鬱結は気血の循環を阻害し、瘀血や痰湿を招く。

2.3 脾腎陽虚の影響

  • 脾胃が弱り、消化吸収が低下すると湿が蓄積。

  • 痰湿が瘀血と結びつき、子宮筋腫や内膜症の病態を悪化させる。

3. 治療の基本方針

中医学では、患者の体質や症状に応じて治療を行います。以下が主な方針です。

3.1 子宮筋腫の治療:活血消癥(かっけつしょうちょう)

  • 目的

    • 血流を改善し、瘀血を取り除き、塊(癥)を消散。

  • 処方例

    • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):血行を促進し瘀血を改善。

    • 田七人参(でんしちにんじん):出血を伴う場合に適応。

※中医学における「消癥」は、次のような意味を持っています:

1. 癥(ちょう)の定義

  • 癥(ちょう)は、体内にできた硬い塊や腫瘍を指します。

    • これは瘀血(おけつ)や痰湿(たんしつ)が長期間停滞することで形成される、固定性の塊を意味します。

    • 主に子宮筋腫や卵巣嚢腫、あるいは胃腸の腫瘍などが該当します。

特徴

  • 癥は「血」に由来するもので、固く、押しても移動しない性質があります。

  • 明確な物理的塊(腫瘍)を指し、病状としては比較的重いものに分類されます。

消癥の目的

  • 「消」は、溶解する、解消する、取り除くという意味。

  • 「癥」を取り除くことで、身体の正常な気血の流れを回復し、症状を改善することを目指します。

具体的な作用

  • 癥の原因である**瘀血(血の滞り)**を除去する。

  • 血流を改善し、塊を徐々に縮小させる。

  • 身体の気血の循環を整え、塊が形成されにくい体質に改善。

3.2 子宮内膜症の治療:補腎温陽(ほじんおんよう)+活血化瘀(かっけつかお)

  • 目的

    • 腎陽を補い体を温める。

    • 血流を改善し瘀血を取り除く。

  • 処方例

    • 温経湯(うんけいとう):冷えによる瘀血や月経異常に使用。

    • 清熱薬:痛みが強く灼熱感を伴う場合に併用。

4. 使用される生薬や補助療法

4.1 生薬

  1. 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):瘀血を改善し、子宮筋腫に有効。

  2. 田七人参(でんしちにんじん):血流を改善しつつ、不正出血を抑制。

  3. シベリア霊芝:痰湿を取り除き、水分代謝を促進。

4.2 補助療法

  • 爽月宝(そうげつほう)

    • 血流促進や抗酸化作用を持つサプリメント。

    • ピクノジェノール(ヨーロッパで医薬品としても使用)を含む。

5. 改善見込みと注意点

5.1 小さな子宮筋腫

  • 1~2cm程度の筋腫は漢方治療で改善しやすい。

5.2 注意点

  • 刺激を避ける

    • 鹿茸(ろくじょう)などの刺激が強い生薬は控える。

  • 体を温める

    • 冷えを防ぐことが治療効果を高める。

6. 生活習慣改善のポイント

  1. 冷えを防ぐ

    • 温かい飲食物を摂取し、冷房や薄着を避ける。

    • 月経期や産後は特に注意。

  2. ストレス管理

    • 瞑想やリラクゼーションを取り入れる。

  3. 適切な食事

    • 脾胃を養う食材(山薬、蓮子)を積極的に摂取。

  4. 適度な運動

    • 軽いウォーキングやヨガで血流を促進。

7. 結論

中医学的に見ると、気滞・瘀血・痰湿が子宮筋腫や内膜症の主な原因であり、個々の体質に応じた治療と生活改善が必要です。治療は漢方薬だけでなく、冷えやストレスの管理、適切な食事・運動が重要です。症状を和らげるだけでなく、体質を根本から改善することが中医学の目指すゴールです

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