【小児の疳に!】抑肝散(よくかんさん)と抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)は毎度おなじみ!

ここからは肝の漢方薬について解説していきます。

一発目は登録販売者でもおなじみの抑肝散と抑肝散加陳⽪半夏です。

1. 抑肝散(よくかんさん)

抑肝散は、主にストレスや精神的な緊張によって引き起こされる神経の高ぶりやイライラ、精神的な不安定さなどに対応する漢方処方です。特に、肝が興奮して気血の流れが滞りやすくなっているときに効果を発揮します。

構成生薬とその役割

  1. 釣藤鈎(ちょうとうこう)

    • 科名: アカネ科(Uncaria属)

    • 作用: 鎮静作用。神経の高ぶりを抑えることで、イライラや興奮を和らげます。

    • 特徴: 主に頭痛や精神的な過敏症状を和らげる働きがあり、肝を穏やかにする効果があります。
      ※生薬の勉強でもしたと思いますが、トゲです。

  2. 柴胡(さいこ)

    • 科名: セリ科(Bupleurum属)

    • 作用: 平肝作用。肝の気を調整し、ストレスによる緊張を緩和します。

    • 特徴: 体内の熱を冷まし、炎症を抑える効果があり、ストレスによるイライラや不安に対処します。

  3. 白朮(びゃくじゅつ)

    • 科名: キク科(Atractylodes属)

    • 作用: 健脾作用。胃腸の働きをサポートし、水分代謝を良くします。

    • 特徴: 消化機能を高め、余分な水分を体から排出することで、むくみや水滞を改善します。

  4. 茯苓(ぶくりょう)

    • 科名: サルノコシカケ科(Poria属)

    • 作用: 健脾利水作用。消化を助けながら余分な水分を排出し、全身のバランスを整えます。

    • 特徴: 気分の安定を促し、不安や緊張を和らげる効果があります。

  5. 甘草(かんぞう)

    • 科名: マメ科(Glycyrrhiza属)

    • 作用: 緩和作用。全体の調和を取り、他の生薬の効果を引き立てます。

    • 特徴: 炎症を抑える働きもあり、体全体の調和をサポートします。

  6. 当帰(とうき)

    • 科名: セリ科(Angelica属)

    • 作用: 補血作用。血の量を補い、血行を良くすることで体を温め、冷えを改善します。

    • 特徴: 女性の健康に良いとされ、月経不順などの改善にも効果があります。

  7. 川芎(せんきゅう)

    • 科名: セリ科(Ligusticum属)

    • 作用: 活血作用。血液循環を促進し、体の緊張を緩和します。

    • 特徴: 頭痛や肩こりの改善に効果があります。


抑肝散の働きと効果

  • 疏肝作用: 肝の働きを調整し、気血の流れをスムーズにする。これにより、精神的なストレスやイライラを緩和します。

  • 理気作用: 気の流れを整え、消化機能をサポート。特に胃腸の働きを助けることで、全身のバランスを取ります。

  • 健脾利水作用: 胃腸を元気にし、余分な水分を体から排出する。これにより、むくみや水分滞留による不快感を改善します。

  • 補血・活血作用: 血を補い、循環を改善することで、冷えや月経不順などの症状を改善します。


2. 抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)

この処方は、抑肝散に「陳皮」と「半夏」を加えて、気の流れをさらに強化し、胃腸の不調や吐き気を抑える作用を持たせたものです。気の滞りが強く現れている場合に使用します。

追加の生薬とその役割

  1. 陳皮(ちんぴ)

    • 科名: ミカン科(Citrus属)

    • 作用: 理気作用。胃腸の気の流れを良くし、消化を助けます。

    • 特徴: 消化促進と胃の不快感を和らげる効果があり、胃もたれや吐き気の改善に役立ちます。

  2. 半夏(はんげ)

    • 科名: サトイモ科(Pinellia属)

    • 作用: 制吐・去痰作用。吐き気を抑え、痰を取り除く効果があります。

    • 特徴: 胃の不快感やむかつきを改善し、痰が溜まったときに有効です。
      ※水滞・痰湿の項目で陳皮と半夏の効果について学んだと思いますが、肝でも応用できることが分かりますね。


抑肝散加陳皮半夏の働きと効果

  • 理気作用の強化: 抑肝散の効果に加えて、陳皮と半夏が胃腸の気を整え、消化をスムーズにする作用を持ちます。

  • 制吐作用: 半夏の働きで吐き気を抑え、消化不良や痰の滞りを改善します。

  • 適応例: ストレスや精神的な高ぶりに加えて、胃腸の不快感や吐き気を伴う場合に使用されます。特に、気の流れが滞っている人に効果的です。

具体的な症例や応用

  1. ストレスや緊張が原因の症状

    • ストレスが強く、神経が過敏になりやすい人に適しています。気血の流れを整え、心身をリラックスさせます。

  2. 認知症の患者

    • 抑肝散は、認知症の症状緩和に用いられることがあります。特に、攻撃的な態度や精神的な不安定さを和らげる効果がありますが、認知症そのものを治すわけではありません。腎の問題が絡む場合は、腎を補う生薬と併用することが効果的です(例: 杞菊地黄丸)。

  3. 水分代謝の改善

    • 気血の滞りが水分代謝に悪影響を与える場合、利水作用を持つ生薬が役立ちます。これにより、むくみや水滞の症状が軽減されます。

使用時の注意点

  • 気の滞りが強い場合: 抑肝散加陳皮半夏を選ぶことで、理気作用が強化され、より効果的な治療が期待できます。

  • 攻撃的な認知症の症状: 抑肝散だけで効果が不十分な場合は、腎を補う生薬と併用することで、全体的なバランスを整えることが推奨されます。

これらの処方は、心身のバランスを整え、特にストレスや神経の高ぶりに関連する症状を緩和することを目的としています。患者の体質や症状に合わせて、適切に使い分けることが重要です。

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