【疑問】16時間断食は中医学的に意味があるのか? 中医養生学
昨今プチ断食というのが流行っているようです。それは16時間ほど食べ物を食べないと体調が良くなるという話です。
以下に中医学における「脾」の役割を解説した上で、16時間空腹(断食)についての考え方を分かりやすく説明します。
1. 中医学における「脾」の役割
中医学でいう「脾(ひ)」は、西洋医学の膵臓や一部の胃腸の働きを指し、体全体のエネルギー生成や栄養の循環において中心的な役割を果たします。具体的には以下のような特徴があります。
脾の主な役割
運化(うんか)を司る
運化とは、食べ物をエネルギー(気・血)や栄養に変え、それを全身に運ぶ働きのことです。
この運化が失調すると:
食べ物がうまく消化吸収されず、お腹が張る。
むくみや体が重い感じがする。
痰(体内の余分な湿気)が生じる。
昇清(しょうせい)を司る
脾には「清いもの(良いエネルギー)」を上に引き上げる働きがあります。
脾が弱ると:
エネルギー不足でふらふらする。
集中力が低下する。
めまいが起こりやすくなる。
統血(とうけつ)を司る
血液を管理し、漏れ出さないようにする働きです。
脾が弱ると:
出血しやすくなる(例:鼻血、歯茎からの出血)。
唇が青白くなるなど、気血の不足が現れます。
脾と胃の関係
胃が食べ物を受け入れて「消化」するのに対し、脾はそれを「運化」し、気・血に変えて全身に運びます。
胃と脾がどちらも働きすぎると疲れてしまうため、どちらかが適度に休む状態が理想的です。
2. 脾が弱ったときの症状と対策
症状
お腹が張る、食欲不振、体が重い。
むくみや痰が溜まる。
唇が青白い。
集中力が続かない、疲れやすい。
対策
食事の工夫
消化の良いものを食べる(例:粥やスープ)。
甘味があり、脾を補う食品(例:山芋、蓮の実、黒豆)を摂る。
薬膳や漢方
黄耆(おうぎ)や白朮(びゃくじゅつ)などを含む漢方薬は脾を強化し、気を引き上げる効果があります。
例:四君子湯(しくんしとう)は脾胃を補う代表的な漢方薬です。
生活習慣の改善
規則正しい食事時間を心がける。
冷たいものや脂っこいものを控える。
3. 16時間空腹(断食)の話
現代では「16時間の断食(インターミッテントファスティング)」が健康法として注目されていますが、中医学の観点では一律に良いとは限らず、「その人の体質や状態」によると考えます。
中医学の基本的な考え方
「空腹」が適切な場合
胃腸が弱っている場合、消化を休ませる時間が必要なので、適度な空腹時間は良いとされます。
胃が空っぽの状態を作ることで、脾胃の「運化」機能が整います。
「空腹」が適さない場合
気血が不足している場合、長時間の空腹はエネルギー不足を悪化させる可能性があります。
特に冷え性や慢性的な疲労がある人には、16時間も食事を摂らないのは負担が大きいです。
断食の適用
空腹時間は体質によります。例えば:
胃腸が強い人: 適度な空腹は消化機能のリセットに役立つ。
胃腸が弱い人: 空腹が長すぎると、脾胃がさらに弱り、逆効果になる。
4. 空腹時間をどう設定するべきか
中医学的アプローチ
胃腸を休ませる時間が重要
胃腸が常に働いていると負担がかかり、脾の運化機能が低下します。
「胃が空いている時間」と「腸が空いている時間」を意識するのが理想的。
時間の目安
一般的には、食事の間隔を5~6時間空けることで十分です。
長時間空腹にする必要があるかどうかは、その人の体質や症状次第です。
5. まとめ
脾の健康が全身の健康の鍵
脾が元気であれば、身体全体のエネルギー生成や気血の巡りがスムーズになります。
適切な食事と生活習慣で脾を支えることが重要です。
断食や空腹時間は人それぞれ
空腹が体に良いかどうかは、個々の体質や健康状態によります。
適度な空腹時間は胃腸の休息に役立ちますが、16時間の空腹が必ずしも全員に適しているわけではありません。
オーダーメイドが中医学の本質
中医学はその人の体質、年齢、生活環境に応じて「最適な方法」を選ぶオーダーメイドの医療です。
一般的な健康法でも、自分の体質に合ったものを見極めることが大切です。
※皆に当てはまるものはありません。それを一括してインフルエンサーと呼ばれる人たちが宣伝しているだけなのでしっかり調べて自分に会ったものを選択できるようにしましょう。
中医学の視点では、脾を健やかに保ちつつ、適切な空腹時間を取り入れることで、心身のバランスを整えることが可能です。