【ストレスと水の代謝に!】柴苓湯(さいれいとう)は小柴胡湯+五苓散
柴苓湯(さいれいとう)は、小柴胡湯と五苓散を組み合わせた漢方薬で、特に婦人科や内科で使用されることが多い処方です。この処方は、肝臓と脾臓を調整し、体内の水分代謝を整えることで、むくみや下痢、胃腸の不調、肝臓や腎臓の炎症などに効果を発揮します。
柴苓湯の構成生薬とそれぞれの作用
小柴胡湯の成分
柴胡(さいこ) - セリ科
作用: 疏肝解鬱作用。肝の気を整え、気の流れを良くし、炎症を抑えます。ストレスや精神的な緊張を緩和し、情緒を安定させます。
黄芩(おうごん) - シソ科
作用: 清熱作用と疏肝解鬱作用。体の熱を冷まし、炎症を抑える働きがあります。特に肝にこもった熱を冷ます作用があります。
半夏(はんげ) - サトイモ科
作用: 健胃作用と制吐作用。胃の働きを調整し、吐き気を抑えます。痰を除去する働きもあります。
生姜(しょうきょう) - ショウガ科
作用: 温中散寒作用と制吐作用。胃を温めて調子を整え、吐き気を抑える効果があります。生姜は、スライスして口に含むことで吐き気を和らげる効果もあります。
人参(にんじん) - ウコギ科
作用: 補気作用。気を補って体力を回復させ、胃腸を強化します。特に気虚による体の疲れや倦怠感を改善します。
大棗(たいそう) - クロウメモドキ科
作用: 補中益気作用。脾を健やかにし、体の元気を保ちます。また、体を温める作用もあります。
甘草(かんぞう) - マメ科
作用: 緩和作用。さまざまな生薬を調和し、胃腸の働きを助けるとともに、炎症を抑える作用もあります。
五苓散の成分
沢瀉(たくしゃ) - オモダカ科
作用: 利水作用。体内の余分な水分を排出することで、むくみを改善します。
茯苓(ぶくりょう) - サルノコシカケ科
作用: 健脾利水作用。脾を強くし、体の水分代謝を助けます。精神安定作用もあり、不安を和らげます。
猪苓(ちょれい) - サルノコシカケ科
作用: 利水作用。体内の水分を排出し、むくみを軽減します。尿路系の不調を改善する作用もあります。
白朮(びゃくじゅつ) - キク科
作用: 健脾作用と利水作用。脾を強化し、体の余分な水分を取り除きます。胃腸の働きを良くする効果があります。
桂皮(けいひ) - クスノキ科
作用: 温陽化気作用。体を温めて血行を良くし、気の流れを整える働きがあります。冷えによる症状を改善します。
柴苓湯の総合的な作用
疏肝解鬱(そかんかいうつ)作用: 柴胡と黄芩が肝の気を整え、ストレスによる気の滞りを解消します。これにより、情緒の安定や炎症の抑制が期待できます。
健胃・制吐作用: 半夏と生姜が胃の働きを整え、吐き気を抑えることで、胃腸の不調を改善します。胃が弱っている人や、神経性の吐き気がある人に効果的です。
補気健脾作用: 人参、大棗、甘草が気を補い、脾の機能を高めることで、体力の回復と胃腸の健康をサポートします。
利水作用: 五苓散の生薬が体内の余分な水分を排出し、むくみや下痢を改善します。また、桂皮が体を温めることで、水分代謝をスムーズにします。
柴苓湯の適応症
むくみ・下痢: 体内に水分が滞ることで生じるむくみや下痢に効果があります。特に、ストレスや神経性の要因で症状が悪化する場合に適しています。
肝臓や腎臓の炎症: 肝臓や腎臓に炎症がある場合、柴苓湯は肝と腎の機能を調整し、炎症を抑えます。特に肝鬱脾虚証(肝が弱くて脾の機能が低下した状態)や水滞困脾証(体内に水分が滞り脾が弱った状態)に効果的です。
神経性のむくみ・吐き気: ストレスで自律神経が乱れ、むくみや吐き気が続く場合に有効です。特に、交感神経が過敏になり、水のような嘔吐が起こるタイプに効果があります。
柴苓湯が適するタイプ
ストレスによる肝機能の低下: ストレスで肝が弱り、胃腸の不調や水分代謝の乱れが生じる人に効果的です。
むくみや下痢が続く人: 水分代謝が滞っていることで、むくみや下痢が慢性的に続く人に適しています。
自律神経の乱れによる吐き気: 交感神経が過敏になり、水分の多い嘔吐が起きる人に効果があります。
柴苓湯は、肝と脾の調整を目的とし、水分代謝を改善する漢方薬です。ストレスによる体のバランスの乱れや、むくみ、下痢、吐き気などの症状がある場合に使用します。特に、自律神経が不安定で胃腸が弱い人に向いています。
※小柴胡湯が含まれておりますので、インターフェロン製剤との服用は絶対にNGです。
※似たような名前で柴朴湯というものがあります。
柴朴湯は小柴胡湯と半夏厚朴湯を組み合わせた漢方薬です。疏肝解鬱の作用に加えて、健胃作用と制吐作用を持つ処方です。
柴苓湯=小柴胡湯+五苓散
柴朴湯=小柴胡湯+半夏厚朴湯