【冷え】血が不足して冷える 血虚受寒(けっきょじゅかん)中医婦人科学
血虚受寒(けっきょじゅかん)について解説します。
1. 血虚受寒の成り立ち
血虚とは何か?
血虚は、血が不足している状態を指しますが、中医学的には「血の量だけでなく質も十分でない」ことを意味します。
血液そのものが不足している(量の問題)。
血液が栄養素を十分に含まず、各器官や組織を養えない(質の問題)。
血の役割:
身体を潤し、栄養を運ぶ。
精神を安定させ、活力を維持する。
体温を保ち、冷えを防ぐ。
血虚になると、これらの機能が低下し、特に手足や末端の冷えが顕著になります。
寒邪の影響
寒邪は「冷たい環境」が身体に与える悪影響を指します。
寒邪は「凝滞」を引き起こし、血や気の巡りを悪化させます。
血虚の状態では、寒邪の影響を受けやすくなり、さらに巡りが悪化する「悪循環」に陥ります。
2. 血虚受寒の症状を深掘り
血虚受寒の症状には、血虚によるものと寒邪の影響によるものが混在します。
血虚による症状
顔色が蒼白でツヤがない
血の不足により皮膚が潤わず、栄養が行き渡らない。
貧血に似た状態で、顔色が薄くなり、乾燥気味になります。
唇の色が淡い
血が不足しているため、唇に十分な赤みが生じない。
爪が割れやすい・弱い
血虚により、爪に十分な栄養が届かない。
生理不順・生理痛
血が不足しているため、月経に影響を及ぼします。経血が少ない、または暗く塊があることも特徴。
寒邪による症状
手足厥冷(てあしかんれい)
末端の血流が滞り、冷えを強く感じる。寒邪の影響で特に悪化。
舌質が淡または暗い・苔が白い
舌の色が淡い場合、血虚を示します。暗い場合は瘀血(血流の滞り)を伴う状態。
白苔は寒邪の影響を示す典型的なサインです。
3. 血虚受寒の詳しい治療法
血虚受寒では、養血・温経・散寒・化瘀が基本の治療方針となります。それぞれの目的と方法を詳しく説明します。
1. 養血(血を補う)
血虚の根本原因である「血の不足」を補います。
養血の具体的方法:
漢方薬:
婦宝当帰膠(ふほうとうきこう):
補血作用が非常に強く、血虚の改善に特化しています。四物湯(しもつとう):
養血の基本方剤で、血虚に伴う軽い冷えにも有効です。
食材:
鶏肉、ほうれん草、黒豆、なつめ、レバーなど。
赤ワイン: 補血と活血の作用があります。ホットワインにするとより効果的。
2. 温経(経絡を温める)
血流が滞らないように経絡を温め、巡りを改善します。
温経の具体的方法:
漢方薬:
温経湯(うんけいとう):
温めながら血を補うバランスの良い処方。
生活習慣:
温める作用のある食品(シナモン、生姜、八角など)を摂取。
足湯やカイロで体を温める。
3. 散寒(寒邪を取り除く)
冷えの直接的な原因である寒邪を追い出します。
散寒の具体的方法:
漢方薬:
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう):
散寒と補血の両方を兼ね備えた処方。寒邪が強い場合に特に有効。
養生法:
温かいスープや煮込み料理を摂取。
冷たい飲食物を避ける。
4. 化瘀(瘀血を解消する)
血流の滞り(瘀血)を解消し、血液循環を改善します。
化瘀の具体的方法:
漢方薬:
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん): 瘀血を解消し、血流を促進します。
食材:
イワシ、ラッキョウ、よもぎなどの活血作用を持つ食材。
4. 養生法の具体例
血虚受寒の養生は、日常の食事や生活習慣から改善できます。
食事の工夫
補血食材を積極的に摂取
例: 鶏肉と生姜のスープ、ほうれん草とレバーの炒め物、黒豆ご飯。
辛味を取り入れる
辛味は気血を巡らせる効果があります。シナモンや八角、唐辛子などを適量取り入れる。
ホットワイン
赤ワインを温め、シナモンやクローブを加えることで補血・散寒効果が高まります。
生活習慣
冷え対策
靴下や腹巻、湯たんぽを活用し、末端を温める。
夜は湯船に浸かり、体を芯から温める。
軽い運動
ヨガやウォーキングなど、血行を促進する運動を習慣化。
ストレスの管理
ストレスが気滞や血虚を悪化させるため、適度にリラックスする時間を確保。
5. 血虚受寒の予防と期待される効果
予防のポイント
血を補う食材や漢方を日常に取り入れる。
寒邪を防ぐため、衣類や住環境を整える。
規則正しい生活リズムを維持し、過労を避ける。
期待される効果
手足の冷えや蒼白な顔色の改善。
生理不順や生理痛の緩和。
全身の血流が良くなり、活力が増す。
結論
血虚受寒は、血虚と寒邪が重なることで起こる冷え性の一種です。この状態を改善するには、養血・温経・散寒・化瘀をバランスよく行うことが重要です。適切な漢方薬や食事、生活習慣の改善により、冷えを根本から治し、健康な体を取り戻すことができます。
中医学の知恵を活用し、体質に合った方法で血虚受寒をしっかりとケアしていきましょう!