【生理中に下痢になる理由(前後も)】中医婦人科学
月経前後や月経時に下痢を引き起こす要因と中医学的な対処法について解説します。通常、月経期における下痢は、単なる一時的な冷えや食事の影響によるものとは異なり、体内の「脾」や「腎」の機能が影響を受けやすくなるために生じます。このような月経時特有の下痢には、脾虚や腎陽虚などのタイプがあり、それぞれ異なる特徴と対策が求められます。
1. 月経期における下痢の原因と特徴
月経時の下痢は、一般的には体が「脾(ひ)」や「腎(じん)」の働きに弱さが生じることで発生しやすくなると考えられています。月経時は体内の血液やエネルギーの流れが下半身に集中し、脾や腎の機能が一時的に弱くなることで消化器系が影響を受けやすくなります。これは特に慢性的に脾や腎が弱い人に顕著で、月経期に下痢が頻繁に悪化することが特徴です。
中でも「脾虚(ひきょ)」と「腎陽虚(じんようきょ)」の区別が重要です。以下に、それぞれのタイプの特徴と、症状に応じた診断ポイント、対策について説明します。
脾虚による下痢
脾虚の人は、体内で十分にエネルギーを生成できず、消化吸収が滞りがちです。結果として消化不良が起きやすく、月経時には下痢が悪化することが多いです。脾虚タイプの下痢は、便がゆるく、しばしば水分を含んでおり、腹部の膨満感や違和感も伴うことが多いです。
症状の特徴:便が柔らかく、稀薄で腹部膨満感がある。
診断のポイント:慢性的な下痢傾向であり、特に月経時に悪化。冷えやすく、胃腸が弱く食欲が低下しがち。
対策:消化を助ける食材を摂り、冷えを避けるようにします。また、脾の働きを補う「四君子湯(しくんしとう)」や「理中丸(りちゅうがん)」などの漢方薬が適しています。
腎陽虚による下痢
腎陽虚のタイプは、特に腎の機能が低下し、体を温める力が不足しているために生じます。腎陽虚の下痢は、「五更泄瀉(ごこうせっしゃ)」と呼ばれ、夜明け前、特に朝方に近い時間帯に下痢を引き起こしやすいことが特徴です。腎陽虚の人は、全身が冷えやすく、特に手足が冷たいと感じることが多いです。お年寄りにも見られることが多く、寒さに敏感であるため、月経時の下痢が悪化しやすい傾向にあります。
症状の特徴:夜明け前の下痢、便が水のように非常に薄く、手足が冷える、寒がり。
診断のポイント:体全体が冷えやすく、特に月経期に下痢が悪化。頻繁に夜明け前にトイレに行くことがある。
対策:腎の働きを高め、体を温めることが必要です。「附子理中丸(ぶしりちゅうがん)」や「真武湯(しんぶとう)」など、体を温める効果のある漢方薬が適しています。また、温かい食事や飲み物を摂取し、冷えを避ける生活を心がけます。
2. 下痢に対する中医学的な治療法と生活習慣
下痢のタイプによって治療法も異なり、脾虚タイプには消化吸収を助け、胃腸を強化する対策を行い、腎陽虚タイプには体を温めることで腎の働きを補います。以下に、それぞれのタイプ別に推奨される漢方と、日常生活で取り入れやすい養生法を紹介します。
脾虚タイプの下痢対策
脾虚タイプの人は、まず消化しやすい温かい食べ物を摂り、冷たい飲み物や生野菜などの冷え性の食べ物を避けることが重要です。また、脾を強化し消化吸収を助ける漢方が効果的です。
推奨漢方:四君子湯(しくんしとう)、六君子湯(りっくんしとう)
推奨食材:温かいスープや消化に良い食材(米、お粥、スープ、温かい野菜料理など)
養生法:冷えを避け、足湯や温かい服装などで体を温める。特に腹部を冷やさないよう心がけます。
腎陽虚タイプの下痢対策
腎陽虚タイプの人には、体を温める食事が推奨されます。寒い環境を避け、特に足元を温めることが大切です。腎を補うために、温かいスープや、体を温める作用のある食材を摂りましょう。
推奨漢方:附子理中丸(ぶしりちゅうがん)、真武湯(しんぶとう)
推奨食材:生姜、ニンニク、山椒、羊肉などの体を温める食材
養生法:寒さから身を守り、暖かい服装や毛布を使用する。特に夜間の冷えに注意し、寝る前に足元を温めることが推奨されます。
月経期における下痢を防ぐための一般的なアドバイス
温かい食事を摂る:特に冷えやすい月経期には、温かいスープや鍋料理などが適しています。冷たい飲み物や冷え性の食べ物は控えることで、体を内側から温めましょう。
冷えを防ぐ工夫:足元や腹部を冷やさないよう、冬場には腹巻や厚手の靴下を使用すると良いでしょう。また、夜間の冷えに敏感な腎陽虚タイプの人は、寝具に湯たんぽや電気毛布を取り入れるのも効果的です。
生活習慣の見直し:食事のリズムを整え、規則正しい生活を心がけることで体内のバランスを保つことができます。また、下痢がひどいときは脂っこい食事やアルコール、過度な甘いものは避け、消化に優しい食事を心がけましょう。
漢方薬を活用:下痢の種類に応じた漢方薬を使用し、体のバランスを整えます。脾虚には胃腸を支える処方、腎陽虚には体を温める処方が有効です。
まとめ
月経期に生じる下痢は、単なる一過性のものではなく、体の基礎的な機能、特に「脾」や「腎」の状態と深く関連しています。脾虚や腎陽虚など、それぞれの体質や症状に応じた対策を取ることが重要です。