【疑問まとめ】中医診断学の質問点
中医診断学における質問の詳細な説明を以下に示します。
1. アトピーで皮膚が赤くなるのは心や熱と関係があるか?
アトピーの赤みや腫れは心や熱の影響を受けると考えられています。中医学では「心は血を司る」とされ、心火(心の熱)が旺盛になると血分が影響を受け、皮膚に赤みとして現れます。また、血熱(血分にこもった熱)が皮膚に現れると、かゆみや赤みが顕著になるため、アトピーの炎症には心火や血熱の調整が重要です。
2. 白髪は何が不足しているか?
白髪は通常、腎虚や血虚と関連します。
腎虚:腎は髪の成長や健康を支えるとされ、腎精が不足すると髪が白くなることがあります。特に加齢や過度の疲労、ストレスが腎精を損ない、白髪が増える要因になります。
血虚:血は髪に栄養を与える重要な役割を果たし、血が不足すると髪に潤いや栄養が行き届かなくなり、白髪や乾燥を引き起こします。血虚は栄養不良や睡眠不足、月経過多などで起こることが多いです。
3. 赤ちゃんの髪の健康は本人の腎の状態か母親の状態が影響するか?
赤ちゃんの髪の健康状態には、本人の腎の状態が影響を及ぼします。中医学では腎は先天の精を司り、髪の成長に関係するため、腎精が充実しているほど髪の質も良好になります。加えて、妊娠中の母親の腎の状態も影響を与えるとされ、母親の腎精がしっかりしていると、赤ちゃんの健康にも良い影響を与えると考えられています。
4. 診察時に化粧が濃い方の顔色をどう判断するか?
診察で顔色を観察する際、化粧が濃い方は自然な皮膚の色が見えないため診断が難しい場合があります。顔色は健康状態の指標として重要で、顔の赤みやくすみ、潤いなどは病態把握に有用です。化粧が濃い場合、顔色以外の診断方法(舌診、脈診、問診)も重視し、総合的に判断する必要があります。
5. 「気機」とは?
「気機」は、気の運動や循環を表し、昇降出入(しょうこうしゅつにゅう)という概念で説明されます。
昇降出入:気は適切に体内で上下・内外に動くことで、体のバランスが保たれます。例えば、肺は気を下降させる働き、肝は気を上昇させる働きがあります。この運動が滞ると、気滞(気の停滞)や気虚(気の不足)が生じ、健康に悪影響を及ぼします。
6. 十門歌の解説
張景岳の「十門歌」は、診断時に確認すべき10の項目をまとめたものです。各項目は診断に重要な情報をもたらします。※診断学の基礎なので再び
項目一覧:
「一問寒熱、二問汗。三問頭身、四問便。五問飲食、六問胸。七聾、八渴俱當辨。九因脈色察陰陽、十從氣味章神見。」寒熱(体温や冷え・ほてりの有無)
汗(汗の状態や発汗の有無)
頭身(頭や体の痛みやだるさ)
便(排便の状態)
飲食(食欲や飲食の傾向)
胸(胸の張りや痛み)
聾(耳の聞こえや耳鳴り)
渴(口渇の有無や水分摂取の傾向)
旧病(昔なった病気)
⼗に因(病気になる原因)
9番目:「九因脈色察陰陽」と「旧病」
九因脈色察陰陽(原文):このフレーズは、「脈や顔色を見て陰陽(病気の性質)を判断する」という意味です。脈診や顔色の観察を通して、その人の陰陽のバランスを探り、病気の深さや体質を把握します。
旧病(日本語訳):日本語訳では、患者の既往歴や長期にわたる病状など、いわゆる「旧病」を確認することに焦点が置かれています。これには、以前の病歴を知ることが、今の病状の把握や治療方針に役立つという意図が込められています。
違いの理由:原文では「脈色から陰陽を観察する」という診断手法の一つを示しているのに対し、日本語訳では「旧病」、つまり過去の病歴を重視する視点が強調されており、診断対象の情報収集に重きを置いています。
10番目:「十從氣味章神見」と「因」
十從氣味章神見(原文):これは「気味(気や神の状態)から、その人の活力(神)を観察する」という意味で、気や神があるか(得神か失神か)を確認することを指します。生命力や精神状態を重視し、治療への見通しを得ます。
因(日本語訳):日本語訳では「因」と表現され、ここでは「気味」としての気の動きや精神面など、その症状の原因や背景にある要因を探ることが含まれています。
違いの理由:原文では「気味」や「神」による観察に注目していますが、日本語訳では「因」を通じて、病因や背景についてのより広範な診断を含めた解釈になっています。
まとめ
9番目:「陰陽を脈や顔色から観察する」 vs 「旧病(既往歴)」
原文は陰陽の観察、日本語訳は過去の病歴への焦点。
10番目:「気味や神から生命力を観察」 vs 「因(病因)」
原文は生命力の観察、日本語訳は病因や背景の探求に焦点が当てられています。
これらの項目をもとに、陰陽や神(生命力)を確認し、病態を把握します。
7. 久病は慢性病、実邪とは外邪である
久病(慢性病):長期間続く病で、慢性の消耗によって気血の不足や臓腑の機能低下を引き起こします。治療には根気が必要で、長期的なバランス調整が求められます。
実邪(外邪):外からの邪気で、湿邪や寒邪などがあります。たとえばプールでは湿邪が体に影響を与えることがあり、寒い環境下では寒邪が加わる場合もあります。外邪は急性症状を引き起こしやすく、急な冷えや湿気によってむくみや風邪のような症状を生じます。
8. 得神・失神とは?
得神(有神):体に活力や生命力がある状態で、元気や気力が満ちていることを指します。顔色や目に輝きがある場合、得神とされ、病気の回復が期待できます。
失神(無神):生命力が失われ、元気がない状態で、顔色がくすんだり、目に力がない場合です。回復には時間がかかることが多く、養生と長期的な治療が必要です。