【復習 陰陽五行・気血津液・病因病機】中医基礎理論
中医基礎理論についてさらに詳細に説明します。中医学は、人体を自然界の一部と捉え、自然界の変化やバランスが体にも影響を与えると考えます。この枠組みは以下の4つの主要な理論によって支えられています。
1. 古代哲学理論:陰陽学説と五行学説
陰陽学説
陰陽学説は、万物の二極性やバランスを重視する思想で、自然界には「陰」と「陽」という対立する力が常に存在し、絶え間なく変化しながら調和を保つとされます。陰陽の特徴には以下の4つがあります:
対立:陰と陽は互いに対立し、それぞれ異なる役割を持ちます(例:日と夜、寒と暖)。
依存:陰と陽はお互いに依存して存在し、一方だけでは成り立ちません(例:昼があるから夜が存在する)。
消長:陰と陽は増減し、変化し続けます(例:四季の移り変わり)。
転化:陰陽が極まると反対に転じ、相互に影響しあいます。
五行学説
五行(木、火、土、金、水)は陰陽学説の発展形で、自然界の全てのものがこの5つの要素に分類されるとされます。五行は互いに生成(相生)と抑制(相剋)する関係にあり、例えば「木は火を生み出し、火は土を生み出す」という相生の関係や、「水は火を抑え、火は金を溶かす」といった相剋の関係で説明されます。この理論を用いて、臓腑の健康や気血の調整などを行うのが中医学の特徴です。
2. 人体の生理:気血津液学説と蔵象学説
気血津液学説
人体を構成する重要な物質として「気・血・津液(じんえき)」があり、それぞれが以下の役割を担っています:
気:生命エネルギーであり、臓腑の働きを支える力です。さらに、元気、宗気、営気、衛気に分けられ、元気は臓腑を動かす根本、宗気は呼吸と心拍、営気は血液の形成と栄養供給、衛気は防衛作用と保温を司ります。
血:栄養供給と体の潤いを担当し、神経活動の基盤ともなります。
津液:体液として血液を補助し、全身を潤して生命活動を支えます。
これらが不足すると、人体に様々な不調が現れ、気虚(疲労や冷え)、血虚(乾燥やめまい)、津液不足(のどの渇きなど)といった症状が現れます。
蔵象学説
蔵象学説では、五臓六腑が体内で互いにどのように働き、関連しているかを理解するために用いられます。五臓六腑の働きは以下の通りです:
五臓:肝(血を貯蔵し、情緒を司る)、心(血を送り出し、精神を支える)、脾(消化吸収を司り、気血を生成する)、肺(呼吸と気を司り、全身に気を巡らせる)、腎(成長・発育を司り、精を貯蔵する)。
六腑:胃、小腸、大腸、胆、膀胱、三焦(体内の水分代謝を司る)など、飲食物の消化・吸収や排泄を担います。
この学説をもとに、臓腑のバランスが崩れた際の治療方針が決定されます。たとえば、脾が弱ると食欲不振が生じるといった具合です。
3. 病理:病因学説と病機学説
病因学説
病気の原因は、体内外の邪気の影響や生活習慣によるとされ、以下のように分類されます:
外因:風、寒、湿、暑、燥、火(六気)が体に入って引き起こす病気です。
内因:怒りや悲しみなどの情緒的な乱れが原因となります。
不内外因:飲食不節、過労、外傷、寄生虫などが病因となるものです。
病機学説
病機学説は、陰陽・気血・臓腑のバランスが崩れることで病気が進行する仕組みを解明します。たとえば、気血の流れが滞る「気滞」や、栄養が不足して血が足りない「血虚」などが該当します。これらを理解することで病気の本質を把握し、治療の方向性を見出します。
4. 予防と治療の原則:予防と治則
予防
中医学では、病気になる前に体のバランスを整え、外邪に対する防御を強化することが重要とされます。適切な生活習慣や季節に応じた養生法が推奨されます。
治則
治療は「補虚・瀉実(不足している部分は補い、過剰な部分は取り除く)」を基本に、陰陽のバランス、五行の調和を図ります。さらに、患者の体質や症状に応じた個別の治療法が組み合わせられます。たとえば、風邪による寒気には温める治療、熱がこもる症状には冷やす治療を行います。
まとめ
中医基礎理論は、自然哲学に基づき、人体を全体として捉える体系で、陰陽や五行の原則から臓腑の働き、病理、治療法までを統一的に解釈するものです。